Association between statin use and outcomes in patients with coronavirus disease 2019 (COVID-19): a nationwide cohort study
Jawad Haider Butt et al.
BMJ Open. 2020 Dec 4;10(12):e044421. doi: 10.1136/bmjopen-2020-044421.
PMID: 33277291
PMCID: PMC7722358
DOI: 10.1136/bmjopen-2020-044421
Keywords: COVID-19; cardiology; epidemiology.
目的
デンマークのCOVID-19患者における最近のスタチン曝露と重症COVID-19感染のリスクおよび全死亡率との関連を調査すること。
試験デザインおよび設定
デンマーク全国登録のデータを用いた観察的コホート研究。
参加者
2020年2月22日から2020年5月17日までにCOVID-19と診断された患者を、診断日から目的のアウトカムである死亡、または2020年5月17日まで追跡調査した。
介入
スタチンの使用(COVID-19と診断される前の6ヵ月間に処方された薬剤が償還されたものと定義)。
一次および二次アウトカム指標
全死亡率、重症COVID-19感染症、およびそれらの複合。
結果
・試験集団はCOVID-19患者 4,842例(年齢中央値 54歳:25~75パーセンタイル 40~72歳)、男性 47.1%)であり、そのうち843例(17.4%)がスタチン製剤の処方を受けた。スタチン投与を受けた患者は男性が多く、併存疾患の有病率が高かった。
・追跡期間の中央値は44日であった。年齢、性、民族、社会経済状態、併存疾患を調整した後、スタチン曝露は死亡リスクに有意差はなかった。
死亡リスク
ハザード比(HR) :0.96、95%CI 0.78~1.18
30日標準化絶対リスク(SAR):9.8%(8.7~11.0%) vs. 9.5%(8.2~10.8%)
SAR差 :-0.4%、-1.9%~1.2%
重度のCOVID-19感染症
HR :1.16、95%CI 0.95~1.41
30日SAR:13.0%、11.8%~14.2% vs. 14.9%、12.8%~17.1%
SAR差 :1.9%、-0.7%~4.5%
全死亡または重度COVID-19感染の複合転アウトカム
HR :1.05、95%CI 0.89~1.23
30日SAR:17.6%、16.4%~18.8% vs. 18.2%、16.4%~20.1%
SAR差 :0.6%、-1.6%~2.9%
・この結果は、年齢、性別、および推定されるスタチン治療の適応のサブグループ間で一貫していた。スタチン曝露を受けている患者では、アウトカムに関してスタチン薬と治療強度の間に差はなかった。
結論
COVID-19感染症患者における最近のスタチン曝露は、全死亡または重症感染リスクの増加または減少とは関連しなかった。
コメント
COVID-19に対して、特定の薬剤使用が疾患の重症度や死亡リスクに影響する可能性が報告されています。例えば、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬/アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の使用は、ACE2に作用することでSARS-CoV-2への易感染性やCOVID-19疾患重症度に影響する可能性が示唆されていました。しかし、いくつかの研究結果により、ACE阻害薬/ARBの使用は、COVID-19へ影響しない可能性が高いとされています。
現在まで、循環器疾患、生活習慣病に対し頻繁に使用されているスタチン系薬剤によるCOVID-19への影響については明らかにされていません。
さて、デンマークで実施された全国コホート研究によれば、スタチンの使用は、重症COVID-19感染のリスクおよび全死亡率に影響を与えないようでした。区間推定値をみても、ほぼ影響はないと考えます。
他の地域や人種により影響が異なる可能性、またこれらも含め未知の行楽因子の可能性は排除しきれませんが、現状では、COVID-19患者へのスタチン使用を推奨も非推奨もできません。今後の研究結果が待たれます。
✅まとめ✅
COVID-19感染症患者における最近のスタチン曝露は、全死亡または重症感染リスクへの影響は認められなかった。
関連記事
【COVID-19入院患者におけるロピナビル/リトナビルの効果はどのくらいですか?】
【COVID-19入院患者におけるファモチジンの影響はどのくらいですか?】
コメント