急性心不全患者におけるエプレレノン治療の早期開始の有効性と安全性はどのくらいですか?(RCT; EARLIER trial; EHJ-CP2020)

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Efficacy and Safety of Early Initiation of Eplerenone Treatment in Patients with Acute Heart Failure (EARLIER trial): a multicentre, randomized, double-blind, placebo-controlled trial 

Masanori Asakura et al.

European Heart Journal – Cardiovascular Pharmacotherapy, pvaa132, https://doi.org/10.1093/ehjcvp/pvaa132 Published: 11 November 2020

Keywords: Mineralocorticoid receptor antagonistAcute heart failureEplerenone

目的

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(mineralocorticoid receptor antagonist, MRA)は慢性心不全患者に有効であるが、急性心不全患者(acute heart failure, AHF)におけるMRAの早期投与の効果は明らかにされていない。

方法

本多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験では、日本の27施設のAHF患者300例(エプレレノン群 149例、プラセボ群 151例)を対象に、選択的MRAであるエプレレノンによる治療の安全性と有効性に焦点を当てた。

主要組入基準は、(i)20歳以上の患者、(ii)左室駆出率が40%以下の患者であった。

主要アウトカムは、6ヵ月以内の心臓死または心血管疾患による初回再入院の複合とした。

結果

・参加者の平均年齢は66.8歳、女性が27.3%、脳内ナトリウム利尿ペプチドの中央値は376.0pg/mLであった。

・一次アウトカムの発現率は、エプレレノン群で19.5%、プラセボ群で17.2%であった。

★ハザード比(HR)=1.09、95%信頼区間(CI) 0.642~1.855

・事前に指定された副次的アウトカムでは、複合エンドポイントである心血管死、または6ヵ月以内の心不全による初回再入院のHRは0.55(95%CI:0.213~1.434)であった。

・エプレレノンの安全性プロファイルは予想通りであった。

結論

AHF患者へのエプレレノンの早期開始は安全に活用できる可能性がある。

エプレレノンによる心血管疾患死亡または心血管疾患の初回再入院の複合発生率の低下は、パワー不足のため結論が出ていない。

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背景

本試験は、日本のAHF患者を対象としたエプレレノンの適応*拡大承認取得を目的としたものです。

日本の規制当局(PMDA)との協議の結果、PMDAからEPHESUS試験との整合性を示すように要請されたようです。

整合性とは、プラセボに対するエプレレノンのハザード比(HR)の点推定値がEPHESUS試験と同様に1.0未満であることを意味しています。つまり、区間推定値が1を跨いでいても良いことになります。

*エプレレノンの効能・効果(2021年1月時点)
・高血圧症
・慢性心不全

本試験のサンプルサイズ

本試験はパワー不足と結論づけられていますが、これは本当なのでしょうか?サンプルサイズを確認してみました。

以下のサンプルサイズの計算によれば、組み入れられた患者数はギリギリ達成されているようです。海外で実施されたEPHESUS試験との整合性(一貫性)を達成する確率については、100%ではないため、例数が不足している可能性は否めません。ただし、区間推定値をみてみると、日本人の急性心不全患者を対象とした場合、今回設定されたアウトカムのイベント数を達成することは困難であると考えます。

以下、本文の方法部分より抜粋;

EARLIER試験のサンプルサイズは、主に実現可能性を考慮して300とされたようです。EARLIER試験は、日本人の急性心不全患者集団に対するエプレレノンの有効性を、EPHESUS試験との整合性を確認することを目的とし実行されました。

EARLIER試験の有効性は、EPHESUS試験を参考にして以下の設定で確認されました。HR=0.87では、整合性を達成する確率が300例で72.6%、AMI後120例で64.9%であり、HR=0.78では、患者300例で85.2%、AMI後患者120例で74.8%の確率と算出されました。

複合主要アウトカムの構成要素は?

複合主要アウトカムの構成要素における各群のイベント発生数(%)は以下の通りでした。総死亡については、エプレレノン群で2例(1.3%)、プラセボ群で0例(0.0%)でした。個人的には、エプレレノン群で冠動脈疾患の発生数が多い点が気になります。 

エプレレノン群プラセボ群
心不全6例(4.0%)11例(7.3%)
STEMI0例(0.0%)1例(0.7%)
弁膜症1例(0.7%)1例(0.7%)
脳卒中2例(1.3%)2例(1.3%)
心室性不整脈2例(1.3%)1例(0.7%)
心房細動2例(1.3%)0例(0.0%)
左室血栓0例(0.0%)1例(0.7%)
冠動脈疾患16例(10.7%) 9例(6.0%)
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✅まとめ✅

日本人の急性心不全患者に対するエプレレノン使用は、プラセボと比較して、6ヵ月以内の心臓死または心血管疾患による初回再入院を減らせなかった

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