ST上昇型心筋梗塞患者に対する完全多枝経皮的冠動脈インターベンションと原因枝のみのインターベンション、どちらが優れていますか?(メタ解析; Am J Cardiol 2020)

white and blue abstract painting ST上昇型心筋梗塞 ST-segment elevation myocardial infarction STEMI
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Meta-Analysis Comparing Culprit-Only Versus Complete Multivessel Percutaneous Coronary Intervention in Patients With ST-Elevation Myocardial Infarction

Waqas Ullah et al.

Am J Cardiol. 2020 Oct 13;S0002-9149(20)31075-4. doi: 10.1016/j.amjcard.2020.10.009. Online ahead of print.

PMID: 33058810

DOI: 10.1016/j.amjcard.2020.10.009

背景

多枝冠動脈疾患を合併している患者のST上昇型心筋梗塞(ST-segment elevation myocardial infarction, STEMI)は予後不良と関連している。

我々は、経皮的冠動脈インターベンションにおいて、多枝血行再建術(multivessel revascularization, MVR)アプローチと比較して、責任病変のみの血行再建術(culprit-only revascularization, COR)のメリットを明らかにしようとした。

方法

関連論文を特定するために複数のデータベースを検索した。ランダム効果モデルを用いてデータを解析し、未調整オッズ比(OR)と相対リスクを算出した。

結果

・COR群 18,377例、MVR群 8,515例の計28件の研究(26,892例)が含まれていた。患者の平均年齢は63歳で、男性患者が72%を占めた。2つの治療群のベースライン特性は同等であった。

・追跡期間 1年(中央値)において、STEMIに対するCORは、MVRを受けた患者と比較して、各イベントのオッズ比は以下の通りであった;

  1. 主要有害心血管イベント(MACE):OR 1.36、95%信頼区間[CI] 1.10~1.70、p=0.005
  2. 狭心症:OR 2.28、95%CI 1.83~2.85、p≦0.00001
  3. 再灌流:OR 1.76、95%CI 1.22~2.54、p=0.002
  4. 全死亡率:OR 1.18、95%CI 0.91~1.53、p=0.22
  5. 心血管死亡率:OR 1.30、95%CI 0.98~1.72、p=0.07
  6. 心不全発生率:OR 1.17、95%CI 0.86~1.59、p=0.31
  7. 冠動脈バイパスグラフト(CABG)の必要性:OR 1.47、95%CI 0.82~2.64、p=0.19
  8. 心筋梗塞(MI)イベントの再発:OR 1.23、95%CI 0.93~1.64、p=0.15
  9. 脳卒中リスク:OR 1.27、95%CI 0.68~2.34、p=0.45)

・追跡期間と研究デザインに基づくサブグループ解析では、MIイベントの再発リスクがRCT全体において、MVR群で有意に低かったことを除いては、ほぼプール解析の結果に従っていた(OR 1.46、95%CI 1.10~1.94、p = 0.009)。

結論

責任病変のみのアプローチとは対照的に、STEMI患者におけるMVRは、MACE、狭心症、再灌流の必要性を有意に減少させることと関連している。

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狭心症に対する血行再建術としてPCIとCABG、どちらが良いのか?

労作性狭心症に対する血行再建術には経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)があります。歴史的に冠動脈3枝病変や左冠動脈主幹部病変を有する患者に対してはCABGが優先されるとされてきましたが、高齢の虚血性心疾患患者は多枝病変を有していることが多い反面、併存疾患の存在など手術に伴うリスクも増加するため、その治療方針の決定には慎重を要します。

多枝病変や左主幹部病変を有していてもPCIが適用される場合とは?

冠動脈3枝病変および左主幹部病変を有する患者を対象として、薬剤溶出性冠動脈ステント(DES)を使用したPCIとCABGの治療成績を比較したランダム化試験であるSYNTAX試験では、治療5年後のフォローアップにおいて主要心臓・脳血管事象(MACCE)の発生はCABG群で有意に少なく、全体的にCABG群で良好のようでした。しかし、冠動脈病変の重症度を数値化したSYNTAXスコアで層別化すると、より複雑な冠動脈病変を有する群(SYNTAXスコアが高い群)では依然としてMACCEの発生はCABG群で有意に少なかったが、SYNTAXスコアが低い群ではPCI群とCABG群でMACCEの発生に差はみられませんでした。

したがって、多枝病変や左主幹部病変を有していても、SYNTAXスコアが低い冠動脈病変の場合はPCIが選択肢となりえます。

多枝冠動脈疾患を合併している患者におけるST上昇型心筋梗塞(ST-segment elevation myocardial infarction, STEMI)

多枝冠動脈疾患を合併している患者におけるST上昇型心筋梗塞(ST-segment elevation myocardial infarction, STEMI)は予後不良と関連していることが報告されています。

今回の研究結果からわかることは?

追跡期間 1年(中央値)において、STEMIに対する責任病変のみのPCIは、多枝血行再建術を受けた患者と比較して、主要有害心血管イベント(MACE)、狭心症、再灌流のオッズ比が有意に増加していました。ただし、効果推定値はオッズ比ですので、リスク増加の程度については、更なる研究が必要であると考えます。

✅まとめ✅ STEMI患者における多枝血行再建術(multivessel revascularization, MVR)アプローチと比較して、責任病変のみの血行再建術(culprit-only revascularization, COR)は、MACE、狭心症、再灌流の必要性の有意な増加と関連していた

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