生物学的DMARDsに抵抗性を示す関節リウマチ患者に対するアバタセプトとウパダシチニブ、どちらが優れていますか?(RCT; SELECT-CHOICE; NEJM 2020)

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Trial of Upadacitinib or Abatacept in Rheumatoid Arthritis

Andrea Rubbert-Roth et al.

N Engl J Med. 2020 Oct 15;383(16):1511-1521. doi: 10.1056/NEJMoa2008250.

PMID: 33053283

DOI: 10.1056/NEJMoa2008250

Funded by AbbVie

Clinicaltrials.gov number, NCT03086343.

背景

ウパダシチニブは、経口選択的なヤヌスキナーゼ阻害剤であり、関節リウマチの治療薬である。

生物学的疾患修飾抗リウマチ薬(DMARDs)に抵抗性のある関節リウマチ患者を対象とした場合、T細胞賦活調節薬であるアバタセプト(オレンシア®️)と比較した場合のウパダシチニブ(リンヴォック®️)の有効性と安全性は明らかになっていない。

方法

この24週間の第3相二重盲検対照試験では、患者を1:1の割合でランダム割り付けし、ウパダシチニブ(15mgを1日1回経口)またはアバタセプト(静注)を投与し、それぞれ安定した合成DMARDsとの併用を行った。

主要エンドポイントは、C反応性蛋白質レベルに基づく28関節の複合疾患活動度スコア(DAS28-CRP:スコア範囲 0~9.4、スコアが高いほど疾患活動度が高いことを示す)のベースラインからの変化であり、非劣性を評価した。

12週目の主要な副次評価項目は、DAS28-CRPのベースラインからの変化、およびDAS28-CRPが2.6未満の患者さんの臨床的寛解の割合で、アバタセプトに対するウパダシチニブの優越性であった。

結果

・合計303例にウパダシチニブが投与され、309例にアバタセプトが投与された。

・ベースラインのDAS28-CRP値はウパダシチニブ群で5.70、アバタセプト群で5.88であったのに対し、12週目の平均変化量はそれぞれ-2.52、-2.00であった。

★群間差 -0.52ポイント、95%信頼区間[CI] -0.69~ -0.35、非劣性P<0.001、優越性P<0.001

・寛解した患者の割合は、ウパダシチニブで30.0%、アバタセプトで13.3%であった。

★群間差 16.8ポイント(原文のまま)、95%信頼区間[CI] 10.4~23.2;優越性P<0.001

NNTB 6(ブログ筆者算出)

・治療期間中、ウパダシチニブ群では死亡1例非致死性脳卒中1例静脈血栓塞栓症2例が発生した。また、ウパダシチニブ群ではアバタセプト群よりも多くの患者で肝アミノトランスフェラーゼ値が上昇していた。

結論

生物学的DMARDsに抵抗性の関節リウマチ患者において、ウパダシチニブはアバタセプトよりもDAS28-CRPのベースラインからの変化と12週目の寛解の達成において優れていたが、より重篤な有害事象と関連していた。

関節リウマチ患者におけるウパダシチニブの効果と安全性を判断するためには、より長期かつ大規模な試験が必要である。

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ウパダシチニブ:本邦で4番目に承認されたJAK阻害薬

JAK阻害薬は国内で5製剤が承認されています。その中でもウパダシチニブは4剤目の製品です。本邦で承認されているJAK阻害薬は以下の通り;

  1. トファシチニブ(ゼルヤンツ ®️):2013年発売
  2. バリシチニブ(オルミエント®️):2017年発売
  3. ペフィシチニブ(スマイラフ®️):2019年発売
  4. ウパダシチニブ(リンヴォック®️):2020年発売
  5. フィルゴチニブ(ジセレカ®️):2020年発売

アダパセプト:T細胞賦活調節薬

アバタセプトは抗原提示細胞表面のCD80/CD86に結合することでCD28を介した共刺激シグナルを阻害し、関節リウマチの発症に関与するT細胞の活性化及びサイトカイン産生を抑制します。さらに他の免疫細胞の活性化あるいは関節中の結合組織細胞の活性化によるマトリックスメタロプロテアーゼ、炎症性メディエーターの産生を抑制すると考えられています。

この研究で明らかになったことは?

生物学的DMARDsに抵抗性の関節リウマチ患者を対象としたSELECT-CHOICE試験。本試験結果によれば、ウパダシチニブはアバタセプトよりもDAS28-CRPのベースラインからの変化と12週目の寛解の達成において非劣性だけでなく、優越性が認められました。寛解についてはNNTB 6と有効性の高さが伺えます。

一見するとアバタセプトよりもウパダシチニブの方が良さそうですが、安全性において、ウパダシチニブ群では死亡1例、非致死性脳卒中1例、静脈血栓塞栓症2例が認められています。いずれも重大なイベントであることから、安易にウパダシチニブを推奨できないと考えます。肝アミノトランスフェラーゼ値の上昇については以前から報告があるため、継続的にモニタリングした方が良い項目であると考えます。

ウパダシチニブについては、多くの臨床試験(SELECTという名前がついている試験シリーズです)が実施されていますので、他の試験結果についても検証した方が良いでしょう。

✅まとめ✅ 生物学的DMARDsに抵抗性を示す関節リウマチ患者において、ウパダシチニブはアバタセプトよりもDAS28-CRPのベースラインからの変化と12週目の寛解の達成において優越性が認められたが、ウパダシチニブ投与群では死亡1例、非致死性脳卒中1例、静脈血栓塞栓症2例が報告された

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