Association of Isolated Diastolic Hypertension Based on the Cutoff Value in the 2017 American College of Cardiology/American Heart Association Blood Pressure Guidelines With Subsequent Cardiovascular Events in the General Population
Hidehiro Kaneko et al.
J Am Heart Assoc. 2020 Sep 30;e017963. doi: 10.1161/JAHA.120.017963. Online ahead of print.
PMID: 32993440
Keywords: cardiovascular disease; epidemiology; isolated diastolic hypertension; prevention.
背景
2017年のAmerican College of Cardiology(ACC)/American Heart Association(AHA)ガイドラインでは、高血圧の血圧(BP)の閾値が130/80mmHgに引き下げられた。しかし、2017年ACC/AHAガイドラインのカットオフ値に従った孤立性拡張期高血圧症(IDH)の臨床的意義は不明であった。
方法
日本医療データセンターの保険金請求データベース(全国疫学データベース)を解析した。
結果
・年齢が20歳未満、収縮期高血圧症、降圧薬服用中、心血管疾患有病者を除外し、1,746,493例(平均年齢 42.9±10.7歳、男性 961,097例[55.0%])を対象とした。
・平均観察期間は1,107±855日であった。
・拡張期血圧80~89mmHgと定義されるステージ1のIDHおよび拡張期血圧90mmHg以上と定義されるステージ2のIDHは、それぞれ230,513例(13.2%)および16,159例(0.9%)に認められた。
・拡張期血圧が正常な人と比較して、ステージ1およびステージ2のIDHを有する人は、高齢であり、男性である可能性が高かった。
・古典的危険因子の有病率はIDH患者で高かった。
・Kaplan-Meier曲線から、ステージ1およびステージ2のIDHは心筋梗塞、狭心症、脳卒中と定義される心血管系イベントの発生率が高いことが示された。
多変量解析では、ステージ1(ハザード比[HR] 1.17)およびステージ2(HR 1.28)のIDHは独立して心血管イベントの発生率の増加と関連していた。
サブグループ解析では、IDHと心血管イベントとの関連は、年齢や性別に関係なく認められた。
結論
全国の疫学データベースを解析した結果、2017年ACC/AHA BPガイドラインのカットオフ値に基づくIDHは、その後の心血管イベントのリスク上昇と関連していることが示された。
コメント
孤立性高血圧症における心血管イベントのリスク増加については、結論が得られていません。特に日本においてはリスク評価の報告が少ないと考えます。
さて、日本医療データセンターの保険金請求データベース(全国疫学データベース)を利用した本研究結果によれば、孤立性拡張期血圧(IDH)は、正常血圧と比較して、心血管イベントのリスク増加が認められました。
- 拡張期血圧80~89mmHgと定義されるステージ1 IDH:1.17(1.13〜1.20)
- 拡張期血圧90mmHg以上と定義されるステージ2 IDH:1.28(1.17〜1.41)
- ウエスト径が高い :1.14(1.10〜1.18)
- 糖尿病 :1.45(1.38〜1.53)
- 脂質異常症 :1.19(1.16〜1.22)
日本人データベースによる研究結果であり、外的妥当性が高いと考えられます。しかし、あくまでも相関関係の結果であり、また孤立性拡張期血圧による心血管イベントのリスク増加の程度は低いように思われます。心血管リスク因子としてのIDHが降圧治療を考慮する一因になるかもしれません。
続報に期待。
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