Spironolactone in Atrial Fibrillation With Preserved Cardiac Fraction: The IMPRESS-AF Trial
Eduard Shantsila et al.
J Am Heart Assoc. 2020.
PMID: 32909497
Registration UTL: https://www.clinicaltrial.gov; Unique identifier: NCT02673463. EudraCT number 2014-003702-33.
Keywords: atrial fibrillation; heart failure; preserved ejection fraction; randomized clinical trial; spironolactone.
背景
永続性心房細動患者は、最適な抗凝固療法を行っても予後、運動能力、QOLが不良である。
我々は、機械学的および観察データに基づいて、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬スピロノラクトンが、永続性心房細動で駆出率が温存されている患者の運動能力、E/e’比、QOLを改善するかどうかを試験した。
方法
IMPRESS-AF(Improved Exercise Tolerance in Heart Failure With Preserved Ejection Fraction by Spironolactone on Myocardial Fibrosis in Atrial Fibrillillation)試験(NCT02673463)は、心房細動が永続的で左室駆出率が温存され安定した患者250例をスピロノラクトン25 mg/日またはプラセボにランダム割り付けした。
患者は2年間追跡調査された。
主要評価項目は2年後の心肺運動負荷試験におけるピーク酸素消費量であった。
副次的エンドポイントは6分歩行距離、E/e’比、QOL、入院であった。
結果
・スピロノラクトン療法は、プラセボと比較して2年後のピーク酸素消費量を改善しなかった(14.5[5.1]、調整後治療効果 -0.28;95%CI -1.27~0.71]、P=0.58)。
・この所見はすべての感度解析において一貫していた。
・6分歩行距離(調整後治療効果 -8.47m、-31.9~14.9、P=0.48)、E/e’比(調整後治療効果 -0.68、-1.52~0.17、P=0.12)、QOL(EuroQol-5 Dimensions、5レベル版QOL質問票、P=0.74、Minnesota Living with Heart Failure、P=0.84)には差はなかった。
・少なくとも1回の入院はスピロノラクトン群で15%、プラセボ群で23%の患者で発生した(P=0.15)。
・推定糸球体濾過率は、スピロノラクトン群で6mL/min減少し、対照群では1単位未満減少した(P<0.001)。
・収縮期血圧は、スピロノラクトン群でプラセボ群と比較して7.2mmHg(95%CI、2.2~12.3)低下した(P=0.005)。
結論
スピロノラクトン治療は、慢性心房細動で駆出率が温存されている患者において、運動能力、E/e’比、QOLの改善には至らなかった。
コメント
心房細動患者における治療は、基本的に抗凝固療法、レートコントロール、リズムコントロール、アップストリーム治療が行われます。診療ガイドラインによる治療の推奨フローも、この順番です。ただし、2020年に発表された臨床研究により、早期のリズムコントロールの有用性が明らかとなっていますので、今後、推奨が変わる可能性は充分にあります。そもそもレートコントロールとリズムコントロールは、予後に大きな差はないことが報告されており、より簡便に行えるレートコントロールの方が推奨されているに過ぎません。また心房細動の自覚症状が強い患者に対しては、レートコントロールよりもリズムコントロールの方が推奨されています。
心房細動には3種類のタイプがあり、中でも永続性心房細動患者では、最適な抗凝固療法を行っても予後、運動能力、QOLが不良であることが示されています。
さて、本試験結果によれば、永続性心房細動患者に対するスピロノラクトン使用は、プラセボと比較して、2年後のピーク酸素消費量を改善しませんでした。他のアウトカムについても差は認められませんでしたが、入院頻度が減少傾向、eGFRおよび収縮期血圧の有意な減少が認められました。
心不全の合併がなければ、スピロノラクトンを追加する意義はないのかもしれません。
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