【批判的吟味】アジア人におけるザイロリック®️とフェブリク®️療法に関連する過敏症と心血管リスク(タイワン人口ベース コホート研究およびメタ解析; Clin Pharmacol Ther. 2019)

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Hypersensitivity and Cardiovascular Risks Related to Allopurinol and Febuxostat Therapy in Asians: A Population-Based Cohort Study and Meta-Analysis.

Chen CH et al.

Clin Pharmacol Ther. 2019 Aug;106(2):391-401.

doi: 10.1002/cpt.1377. Epub 2019 Mar 20.

PMID: 30690722

【コメント】

メタ解析の結果では、アロプリノール使用群に比べて、フェブキソスタット使用群で心血管イベントのリスク増加は認められなかった。しかし心血管死については、ハザード比 =1.84、95%CI 0.57〜5.95(2件の統合、I2 =42%)と、フェブキソスタット群において、CVDリスクの増加傾向が示された。さらに実施されたメタ解析の質は低いと考えられる。

コホート研究の結果では、CVDイベントに有意な群間差は認められず、この結果はカプラン・マイヤー曲線およびログランクテストにおいても同様であった。また薬剤関連の有害な皮膚疾患については、フェブキソスタット群に比べて、アロプリノール群においてリスク増加が認められた(フェブキソスタット 0.2 vs. アロプリノール 2.7 /1,000新規ユーザー、P<0.001)。ただし発生率がかなり低いため、個人的には、CKD患者やB * 58:01リスクアレルを有している患者ではフェブキソスタットを使用し、他の患者にはアロプリノールを第一に使えば良いと考えている。

本論文の結果のみでは判断できないが、尿酸高値患者あるいは痛風患者において、とりあえずフェブキソスタット使用という判断にはならないと考えられる。

【抄録】

アロプリノールと比較した新しいキサンチンオキシダーゼ阻害剤フェブキソスタットの安全性は不明のままである。

アジア人におけるアロプリノール過敏症とフェブキソスタット過敏症および心血管疾患(CVD)のリスクを比較するために、2012年から2016年にかけて台湾全土のデータベースChang Gung Memorial Hospital Health Systemからアロプリノールまたはフェブキソスタットを投与された患者を登録した人口ベースのコホート研究を実施し、さらに最近の2つの研究を組み込んだメタ分析を実施した。

61,539人のユーザーのうち、対応する12,007人と5,680人の患者が新規ユーザーとして識別された。フェブキソスタット過敏症の全体的な発生率は、アロプリノール過敏症よりも有意に低かった(新規ユーザー1,000人あたり0.2 vs. 2.7、P <0.001)。

アロプリノール使用群では、過敏症反応33ケース(重度の皮膚有害薬物反応18ケースを含む)があり、フェブキソスタット使用群で黄斑丘疹性皮疹を発症した患者は1人のみだった。

さらにフェブキソスタットは、アロプリノールと比較して、CVD(ハザード比(HR) =1.16; P = 0.152)および関連する死亡(HR =1.49; P = 0.496)リスクを統計的に増加しなかった。メタ分析の結果も一貫した結果を示した。

結論として、フェブキソスタット過敏症の発生率と重症度はアロプリノールの場合よりも低くなる。フェブキソスタットは、CVDおよび関連する死亡のリスク増加を示さなかった。


【PICOTS】

P:痛風患者(コホート研究:61,539例、メタ解析:薬剤使用1年以上の研究、RCT1件、コホート研究2件)

(①過去3年間以内にフェブキソスタットあるいはアロプリノールの処方を受けておらず、新規にどちらかの処方を受けた患者、②18歳以上、③アロプリノールまたはフェブキソスタットを有害な過敏症なしに少なくとも2ヶ月連続して摂取したか、皮膚反応のために治療を途中で中止)

I :フェブキソスタット投与(コホート研究:10,034例、そのうち新規処方は5,680例)

C:アロプリノール投与(コホート研究:51,505例、そのうち新規処方は12,007例)

O:薬剤関連の有害な過敏症(コホート研究)、心血管イベント、血行再建術を必要とする不安定狭心症、心筋梗塞、脳卒中、およびこれら4アウトカムの複合(メタ解析)

T:タイワン人口ベース コホート研究、メタ解析

S:2012年1月〜2016年2月(コホート研究:台湾)、データベース運用開始から2018年6月5日まで検索(メタ解析:Cochrane Central Register of Controlled Trials、MEDLINE、およびEmbase)


【批判的吟味:メタ解析】

・コクランレビューか?:❌

・GREADアプローチか?:❌

・検索データベースは?:Cochrane Central Register of Controlled Trials、MEDLINE、およびEmbase

・検索語は?:https://ascpt.onlinelibrary.wiley.com/action/downloadSupplement?doi=10.1002%2Fcpt.1377&file=cpt1377-sup-0005-TableS5.pdf

https://ascpt.onlinelibrary.wiley.com/action/downloadSupplement?doi=10.1002%2Fcpt.1377&file=cpt1377-sup-0006-TableS6.pdf

・研究の種類は?:RCTおよびコホート研究

・参考文献まで検索したか?:❌ 本文には記載がないが、Appendixより、検索していないと考えられる。https://ascpt.onlinelibrary.wiley.com/action/downloadSupplement?doi=10.1002%2Fcpt.1377&file=cpt1377-sup-0008-FigS2.pdf

・研究者や専門家に連絡を取ったか?:❌ 本文には記載がないが、Appendixより、検索していないと考えられる。https://ascpt.onlinelibrary.wiley.com/action/downloadSupplement?doi=10.1002%2Fcpt.1377&file=cpt1377-sup-0008-FigS2.pdf

・出版されていない研究も探したか?:❌ 本文には記載がないが、Appendixより、検索していないと考えられる。https://ascpt.onlinelibrary.wiley.com/action/downloadSupplement?doi=10.1002%2Fcpt.1377&file=cpt1377-sup-0008-FigS2.pdf

・英語以外の研究も検索したか?:⭕️ 言語制限なし

・出版バイアスの検討は?:該当なし。解析に組み入れられた研究が10件未満のため。

・評価者は複数か?:不明

・バイアスリスクの評価は?:不明

【結果】

○コホート研究

・薬剤関連の有害な過敏反応

アロプリノール群:3.6/1,000新規ユーザー(2012年)、3.0/1,000新規ユーザー(2015年)

フェブキソスタット群:1.0/1,000新規ユーザー

★全体的な発生率:フェブキソスタット 0.2 vs. アロプリノール 2.7 /1,000新規ユーザー、P<0.001

・SCAR全体的な発生率

SCAR* =SJS/TENおよびDRESS

アロプリノール群:1.3/1,000新規ユーザー

フェブキソスタット群:0.0/1,000新規ユーザー

(P=0.003)

アロプリノール:計33ケース(SJS/TEN:10ケース、DRESS:8ケース、MPE:15ケース)

フェブキソスタット:計1ケース(MPE)

*SCAR:severe cutaneous adverse reactions、重度の皮膚有害反応

*SJS:Stevens- Johnson syndrome 、スティーブンス・ジョンソン症候群

*TEM:toxic epidermal necrolysis、毒性表皮壊死症

*DRESS:drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms、好酸球増加と全身症状を伴う薬物反応

*MPE:maculopapular exanthema、黄斑丘疹

・CKD患者における発生率

アロプリノール関連SJS / TENおよびDRESSの患者の90%(9/10)および63%(5/8)が、過敏症の重大な管理のために入院した。

急性腎障害は、アロプリノール関連のSJS / TENおよびDRESS患者のそれぞれ60%と50%でみつかった。

SJS/TEN症例の20%およびDRESS症例の13%で、アロプリノール関連SCARエピソードに沿って、またはエピソード後に眼の合併症が発生した。

注目すべきは、4人の患者がSJS/TENで死亡したことである。

フェブキソスタット関連MPEの患者では、合併症や死亡は報告されていない。

他の尿酸低下薬に対するアロプリノール関連過敏症患者の忍容性アロプリノール関連過敏症患者33人のうち、フェブキソスタット(n = 14)、ベンズブロマロン(n = 2)、sulfinpyrazone(n = 1:アンツーラン®️は2001年3月31日に販売中止)を含む17人の患者に代替尿酸低下薬が処方された。17人の患者全員が、代替尿酸低下薬に忍容性を示した。

注目すべきことに、SJSが2例、TENが1例、DRESSが4例、MPEが7例を含むアロプリノール関連過敏症反応の患者14人は、CKD(n = 9)およびHLAキャリア(B * 58:01リスクアレル、n = 7)の患者でさえ、代替フェブキソスタット療法を十分に許容した。

・CVDイベント発生率(カプラン・マイヤー生存曲線の結果のみ抜粋)

Kaplan–Meier曲線とログランクテストを使用して、これら2群間のCVイベントのリスクをさらに評価した。解析結果では、サンプル全体またはプロペンシティ・マッチングサンプルにおける2群間のCVD累積自由発生率にも有意な差がないことを示した。

★全体のサンプル:ログランクテストP = 0.152; PSMサンプル:ログランクテストP = 0.470


○メタ解析

・複合アウトカム

ハザード比 =1.02、95%CI 0.96〜1.08(3件の統合、I2 =0%)

・心筋梗塞あるいは不安定狭心症による血行再建術

ハザード比 =0.95、95%CI 0.87〜1.03(2件の統合、I2 =0%)

・心筋梗塞

ハザード比 =1.02、95%CI 0.93〜1.11(2件の統合、I2 =0%)

・脳卒中

ハザード比 =1.00、95%CI 0.90〜1.10(3件の統合、I2 =0%)

・心血管死

ハザード比 =1.84、95%CI 0.57〜5.95(2件の統合、I2 =42%)


【Funding】

This study was supported by grants from the Ministry of Science and Technology, Taiwan (MOST-104-2314-B-182A-148-MY3, MOST-104-2325- B-182A-006, MOST-105-2325-B-182A-007-, MOST-106-2314-B-182A- 037-MY3, MOST-106-2622-B-182A-003-CC2, MOST-107-2622-B-182A- 001-CC2 to WH Chung); Chang Gung Memorial Hospital, Linkou, Taiwan (CIRPD1D0031, CIRPD1D0032 to CJ Chang; CLRPG2E0053, CMRPG3D0363, CORPG3F0042~3, OMRPG3E0041 to WH Chung); Chang Gung Memorial Hospital, Keelung, Taiwan (CMRPG2H0081 to CB Chen) and Astellas Pharma Taiwan. The funding organization had no role in the design and conduct of the study; the collection, management, analysis, and interpretation of the data; the preparation, review, or approval of the manuscript; or the decision to submit the manuscript for publication. In addition, we thank the Research Services Center for Health Information, Chang Gung University, Taoyuan, and Whole-Genome Research Core Laboratory of Human Diseases, Chang Gung Memorial Hospital, Keelung, Taiwan, for their analytic support in this study.

【CONFLICT OF INTEREST】

The authors declared no competing interests for this work.

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