Effect of No Prehydration vs Sodium Bicarbonate Prehydration Prior to Contrast-Enhanced Computed Tomography in the Prevention of Postcontrast Acute Kidney Injury in Adults With Chronic Kidney Disease: The Kompas Randomized Clinical Trial
Rohit J Timal et al.
JAMA Intern Med. 2020 Feb 17;180(4):533-541. doi: 10.1001/jamainternmed.2019.7428. Online ahead of print.
PMID: 32065601
PMCID: PMC7042862 (available on 2021-02-17)
DOI: 10.1001/jamainternmed.2019.7428
試験の重要性
ステージ3の慢性腎臓病(CKD)患者における造影後の急性腎障害を予防するために、プレハイドレーションを行うことは何年にもわたって標準的なケアとなっている。しかし、この患者群におけるプレハイドレーションの必要性についてエビデンスは限られている。
目的
ステージ3の慢性腎臓病(CKD)患者において、ヨードベースの造影剤投与前に予防的なプレハイドレーションを省略することの腎安全性を評価すること。
試験デザイン、設定、参加者
Kompas試験は、オランダの病院6施設で実施された多施設非劣性ランダム化臨床試験で、ステージ3のCKD患者523例を対象に、2013年4月から2016年9月までの間に、選択的(緊急性がないために手術するかどうかを本人が選択できる)造影CT検査を受ける前に1時間の輸液で1.4%の重炭酸ナトリウム250mLを投与し、予防的な水分補給を行わない場合と行わない場合に1:1の割合でランダム割り付けした。
最終フォローアップは2017年9月に終了した。データ解析は2018年1月から2019年6月まで実施した。
介入
・合計262例の患者がプレハイドレーション無し群に割り付けられ、261例がプレハイドレーションを受ける群に割り付けられた。
主要エンドポイントに関する解析は、患者505例(96.6%)で行った。
主要アウトカムおよび測定法
主要エンドポイントは、造影剤投与2~5日後の血清クレアチニン値のベースラインと比較した平均相対上昇率(血清クレアチニン値の上昇率10%未満の非劣性マージン)であった。
副次的アウトカムとして、造影剤投与2~5日後の急性腎障害の発生率、造影剤投与7~14日後のクレアチニン値の平均相対上昇率、透析を必要とする急性心不全および腎不全の発生率、医療費が含まれていた。
結果
・ランダム化された患者554例のうち、523例がintention-to-treat解析に含まれた。
・年齢中央値(四分位間距離)は74歳(67~79歳)で、男性336例(64.2%)、女性187例(35.8%)だった。
・造影剤投与2~5日後のクレアチニン値のベースラインと比較した平均(SD)相対上昇率は、プレハイドレーション無し群3.0%(10.5) vs. プレハイドレーション群3.5%(10.3)であった。
★平均差 =0.5、95%CI -1.3~2.3;非劣性 P<0.001
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・造影後の急性腎障害は11例(2.1%)に発生したが、その中にはプレハイドレーション無し群262例中7例(2.7%)、プレハイドレーション群261例中4例(1.5%)が含まれ、相対リスクは1.7(95%CI 0.5~5.9;P=0.36)であった。
・透析を必要とした患者や急性心不全を発症した患者はいなかった。
・サブグループ解析では、治療群に対し事前に定義されたサブグループ間の統計的相互作用の証拠は示されなかった。
・平均水分補給費用は、プレハイドレーション群では患者1人当たり119ユーロ(143.94USドル)であったのに対し、プレハイドレーション無し群では0ユーロ(0USドル)であった(P < 0.001)。その他の医療費も同様であった。
結論と関連性
ステージ3のCKD患者で造影検査を受けている患者では、プレハイドレーションを控えても患者の安全性は損なわれなかった。本研究の結果は、安全で費用対効果の高い方法として水分補給を行わないという選択肢を支持するものである。
コメント
CKD患者における造影CT検査前のプレハイドレーション実施は、疑うことなく実施されています。今回の研究では、このプレハイドレーションの効果について、実施しない場合のリスクを検証しています
さて、本試験結果によれば、プレハイドレーションを実施しない場合、プレハイドレーションを実施する場合と比較して、造影剤投与2~5日後のクレアチニン値のベースラインと比較した平均相対上昇率に差は認められませんでした(平均差 =0.5、95%CI -1.3~2.3)。また副次評価項目ではありますが、造影後の急性腎障害の相対リスクは1.7(95%CI 0.5~5.9)でした。
この試験のみで、プレハイドレーションが不要であると結論づけられませんが、今後の研究結果により、プレハイドレーションが不要になるかもしれませんね。
今後の研究に期待。
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