認知症に対する抗糖尿病薬の影響はどのくらいですか?(NMAあるいはメタ解析; Metabolism. 2020)

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Impact of Antidiabetic Agents on Dementia Risk: A Bayesian Network Meta-Analysis

Jian-Bo Zhou et al.

Metabolism. 2020 May 22;109:154265. doi: 10.1016/j.metabol.2020.154265. Online ahead of print.

PMID: 32446679

DOI: 10.1016/j.metabol.2020.154265

Keywords: Antidiabetic agents; Dementia; Network meta-analysis.

背景

2型糖尿病患者では認知症の発症率が高いが、抗糖尿病薬がこの関連に及ぼす影響についてはほとんど知られていない。

目的

本研究では、様々な抗糖尿病薬が認知症のリスクに及ぼす影響を検討した。本研究では、2型糖尿病患者の認知症リスクに対する各種抗糖尿病薬の影響を評価した。

方法

PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、ClinicalTrials.gov データベースから関連研究を検索した。9種類の抗糖尿病薬を検索対象とした。データはネットワークメタアナリシスおよびメタアナリシスを介してプールされた。

結果

・530,355例を対象としたネットワークメタアナリシスでは9研究、1,258,879例を対象としたメタアナリシスでは17研究が選択された。

・解析では、関連データがないため、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)アナログおよびナトリウム依存性グルコーストランスポーター2(SGLT-2)阻害薬を除外した。ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬、メトホルミン、チアゾリジンジオン(TZD)、スルホニルウレア(SU)薬の使用は、抗糖尿病薬を使用しない場合と比較して認知症リスクの低下と関連していた。

  • DPP-4阻害薬:ハザード比[HR] =0.54、95%信頼区間[CI] 0.38〜0.74
  • メトホルミン:HR =0.75、95%CI 0.63〜0.86
  • SU薬    :HR =0.85、95%CI 0.73〜0.98
  • TZD    :HR =0.70、95%CI 0.55〜0.89

・しかし、ノード分割解析では、SU薬は直接推定値と間接推定値の不一致が認められた(P=0.042)。

・DPP-4阻害薬、メトホルミン、TZD、SU薬は、インスリンと比較して糖尿病患者の認知症リスクに有意な影響を示した。

  • DPP-4阻害薬:ハザード比[HR] =0.35、95%信頼区間[CI] 0.20〜0.59
  • メトホルミン:HR =0.48、95%CI 0.30〜0.77
  • SU薬    :HR =0.45、95%CI 0.29〜0.73
  • TZD    :HR =0.55、95%CI 0.34〜0.88

・また、DPP-4阻害薬は、抗糖尿病薬による治療を行わなかった場合と比較して、アルツハイマー型認知症のリスクを保護する効果を示した(HR =0.48、95%CI 0.25〜0.92)。

・メタ解析では、メトホルミンとDPP-4阻害薬の使用による認知症リスクの保護効果が示された。

  • メトホルミン:HR =0.86、95%CI 0.74~1.00
  • DPP-4阻害薬:HR =0.65、95%CI 0.55~0.76

・さらに解析を進めると、インスリンはアルツハイマー型認知症のリスク増加と関連していた(HR =1.60、95%CI 1.13〜2.26)。

・GLP-1アナログとSGLT-2阻害薬について言及した症例対照研究は2件のみであり、プールされたORは認知症との関連性を示さなかった。

  • GLP-1アナログ:HR =0.71、95%CI 0.46〜1.10
  • SGLT-2阻害薬 :HR =0.74、95%CI 0.47〜1.15

結論

今回の解析では、DPP-4阻害薬で治療中の2型糖尿病患者は認知症リスクが最も低く、次いでメトホルミンとチアゾリジンジオンで治療された患者のリスクが低く、インスリンで治療された患者が最も高いリスクと関連していることが示された。

認知症予防効果への注目が高まる中、GLP-1アナログとSGLT-2阻害薬の認知症リスクへの影響を評価するためには、さらなる具体的な臨床試験が必要である。

コメント

糖尿病患者は、健常人と比較して認知症の発症リスクが高い可能性が報告されています。また糖尿病治療に伴う低血糖が認知症リスク増加に関与する可能性についても報告されています。

さて、本試験結果によれば、インスリン使用者において、他の抗糖尿病薬と比較して認知症リスクが最も高かったようです。一方、リスク低下が認められたのは、DPP-4阻害薬、メトホルミン、チアゾリジンジオンでした。またインスリン使用者と比較すると、前述の3剤に加えて、SU薬使用者でもリスク低下が認められました。

ただし、本試験は、因果の逆転の可能性を排除しきれないと考えます。つまりインスリンを使用している患者では、そもそも血糖コントロールが上手くいっていないかも知れません。同様に、インスリンによる血糖の急激な下降、これに続く血糖の上昇により、認知症リスクが上昇した可能性もあります。

認知症と抗糖尿病薬については、まだまだ研究が必要であると考えます。続報を待ちたい。

✅まとめ✅ 2型糖尿病患者において、DPP-4阻害薬の使用患者で認知症リスクが最も低く、次いでメトホルミン、チアゾリジンジオンが低かった。一方、インスリン使用患者で認知症リスクが最も高かった

✅まとめ✅ ただし、GLP-1アナログとSGLT-2阻害薬については関連データが少ないためデータの集積が待たれる

コメント

  1. […] […]

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