2型糖尿患者に対するSGLT2阻害薬使用による糖尿病性ケトアシドーシスのリスクはどのくらいですか?(RCTのSR&MA; Diabetes Obes Metab. 2020)

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Sodium-glucose co-transporter-2 Inhibitors and the Risk of Diabetic Ketoacidosis in Patients With Type 2 Diabetes: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials

Jiali Liu et al.

Diabetes Obes Metab. 2020 May 4. doi: 10.1111/dom.14075. Online ahead of print.

PMID: 32364674

DOI: 10.1111/dom.14075

Keywords: SGLT2 inhibitor, type 2 diabetes, diabetic ketoacidosis, systematic review, meta-analysis.

目的

2型糖尿病患者における糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)に対するナトリウム-グルコ-トランスポーター-2(SGLT2)阻害薬の効果を評価する。

方法

PubMed、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、ClinicalTrials.govで、2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬とコントロールを比較したランダム化比較試験(RCT)を開始から2019年6月13日までに検索した。

2人のレビュアーが独立して引用文献をスクリーニングし、バイアスのリスクを評価し、データを抽出した。

DKAに対するSGLT2阻害薬の効果をプールするための主要なアプローチとしてPetoの方法を用いた。

代替効果尺度(リスク比)またはプーリング法(Mantel-Haenszel)、ゼロイベント試験に対する0.5の連続性補正の使用、または一般化線形混合モデルを用いた感度解析を行った。

異質性を探索するために、あらかじめ計画された6つのサブグループ分析を実施した。

エビデンスの質の評価には、grading of recommendations assessment, development and evaluation(GRADE)アプローチを用いた。

結果

・合計39件のRCTが含まれ、患者60,580例とDKAイベント85件が含まれていた。

・SGLT2阻害薬は対照群と比較してDKAのリスク増加と統計的に関連していた。

★SGLT2阻害薬:62/34,961例(0.18%) vs. 対照群:23/25,211例(0.09%)

★Petoオッズ比[OR]=2.13、95%信頼区間[CI]1.38~3.27、I2 = 8%

★RDは5年間で1000人当たり1.7件増、95%CI 0.6~3.4件増;質の高いエビデンス

・感度解析でも同様の結果が得られた。

・平均年齢(交互作用P = 0.02)および追跡期間(交互作用P = 0.03)によるサブグループ解析では、高齢者(60歳以上)およびSGLT2阻害薬の使用期間が長い患者(52週以上)でより大きな相対効果が示された。

結論

質の高いエビデンスは、SGLT2阻害薬が2型糖尿病患者におけるDKAのリスクを増加させる可能性を示唆している。年齢や追跡期間の異なる患者間で治療効果に明らかな差があることから、SGLT2阻害薬を長期使用している患者や高齢の患者では注意が必要であることが示唆された。

コメント

以前からSGLT2阻害薬の使用とケトアシドーシスのリスク増加の可能性が示されていました。ただし、これまで検討された臨床試験で、ケトアシドーシスは安全性の一指標にとどまり、その発生頻度と試験規模から、より正確な発生率の把握が困難でした。また、SGLT2阻害薬の作用機序が直接、ケトアシドーシスの発生と関連しているのかについては未だ不明です。推定されている機序は以下の通り;

  1. SGLT2阻害薬により尿中に糖が強制排泄される
  2. 糖に代わる栄養源として脂質の分解が促進する
  3. 血中ケトン体の増加によるケトアシドーシス

また、ケトアシドーシスの症状は以下の通り;

  • 悪心・嘔吐
  • 食欲減退
  • 腹痛
  • 過度な口渇
  • 倦怠感
  • 呼吸困難
  • 意識障害 等

また今回の研究は、2型糖尿病患者を対象としていますが、1型糖尿病患者においては、SGLT2阻害薬の使用により、ケトアシドーシスの発生リスクが更に高まることから、より注意が必要です。

さて、本試験結果によれば、やはりSGLT2阻害薬の使用によりケトアシドーシスのリスクが増加しました。このリスクは、SGLT2阻害薬を5年間使用した場合、1.7件/1,000人の増加ですので、1年間の使用ですと、3.4件/10,000人のリスク増加です。

個人的には、そこまで大きなリスクではないと考えますが、リスク増加は、プラセボと比較して約2倍です。

SGLT2阻害薬を使用する患者を選定する上で、ケトアシドーシスの発生リスクは、1つの要因となる可能性があると考えます。

✅まとめ✅ 2型糖尿病患者に対するSGT2阻害薬の使用はケトアシドーシスのリスクを増加させる

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