Risk of Ischemic Stroke in Patients With Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) vs Patients With Influenza
Alexander E Merkler et al.
JAMA Neurol. 2020 Jul 2. doi: 10.1001/jamaneurol.2020.2730. Online ahead of print.
PMID: 32614385
DOI: 10.1001/jamaneurol.2020.2730
試験の重要性
コロナウイルス疾患2019(COVID-19)がウイルス性呼吸器感染症から予想されるよりも高い虚血性脳卒中リスクと関連しているかどうかは不明である。
目的
COVID-19患者と、以前に脳卒中と関連していた呼吸器ウイルス性疾患であるインフルエンザ患者との虚血性脳卒中の発症率を比較する。
試験デザイン、設定、参加者
このレトロスペクティブコホート研究は、ニューヨーク市の2つの学術病院で実施され、2020年3月4日から2020年5月2日までの間にCOVID-19で救急科受診または入院した成人患者を対象とした。
比較コホートには、2016年1月1日から2018年5月31日まで(中等度および重度のインフルエンザシーズンにまたがる)にインフルエンザA/Bによる救急部門受診または入院した成人が含まれた。
曝露
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による鼻咽頭における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)2の証拠により確認されたCOVID-19感染、および実験室で確認されたインフルエンザA/B。
主要アウトカムおよび測定法
急性虚血性脳卒中の主要アウトカムとその臨床的特徴、機序、アウトカムを神経内科医のパネルで判断した。ロジスティック回帰を用いて、COVID-19で虚血性脳卒中を発症した患者の割合とインフルエンザ患者の割合を比較した。
結果
・COVID-19で救急部を受診または入院した患者1,916例のうち、31例(1.6%、95%CI 1.1%〜2.3%)が急性虚血性脳卒中を発症した。
・脳卒中患者の年齢中央値は69歳(四分位範囲 66~78歳)、男性18例(58%)であった。病院に来院した理由が脳卒中であったのは8例(26%)だった。一方、インフルエンザ患者1,486例中3例(0.2%、95%CI 0.0%~0.6%)が急性虚血性脳卒中を発症していた。
・年齢、性、および人種で調整した後では、COVID-19感染の方がインフルエンザ感染よりも脳卒中の可能性が高かった(オッズ比 =7.6、95%CI 2.3〜25.2)。この関連は、血管リスク因子、ウイルス性症状、集中治療室入院を調整した感度解析においても持続した。
結論と関連性
ニューヨーク市の2つの学術病院で行われたこのレトロスペクティブコホート研究では、救急外来を受診したCOVID-19成人の約1.6%が虚血性脳卒中を経験しており、インフルエンザ患者のコホートと比較して脳卒中の発生率が高かった。
これらの所見を確認し、COVID-19と関連した血栓症メカニズムの可能性を調べるためには、さらなる研究が必要である。
コメント
COVID-19における虚血性脳卒中リスク増加の可能性が報告されています。しかし、実際にリスクが増加しているのか否かについては依然として不明でした。今回の後向き研究では、インフルエンザ感染者コホートと比較することで、COVID-19における虚血性脳卒中の発生リスクを捉えようと試みています。
さて、本試験結果によれば、インフルエンザ患者コホートと比較して、COVID-19患者コホートにおいて、脳卒中の可能性が高かったようです(オッズ比 =7.6、95%CI 2.3〜25.2)。ただし、本研究は米国の病院2施設における後向き研究であるため、内的・外的妥当性が低いかもしれません。
さらに、インフルエンザ集団と比較することが、そもそも試験デザインとして適正であったのか不明です。インフルエンザについては、これまでの感染流行のデータが蓄積されており、脳卒中発生リスクはある程度予測できます。一方、COVID-19については流行が始まったばかりであり、今後の流行状況は不明です。したがってCOVID-19患者における脳卒中イベントの発生率も同様に変動するため、データの収束が待たれるところです。
因果の逆転もあるかもしれませんね。続報を待ちたい。
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