Association of Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitor or Angiotensin Receptor Blocker Use With COVID-19 Diagnosis and Mortality
Emil L Fosbøl et al.
JAMA. 2020 Jun 19;e2011301. doi: 10.1001/jama.2020.11301. Online ahead of print.
PMID: 32558877
PMCID: PMC7305566 (available on 2020-12-19)
試験の重要性
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)/アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は、ウイルスの機能的受容体であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)2のアップレギュレーションを介して、患者をコロナウイルス疾患2019(COVID-19)に罹患しやすくし、転帰を悪化させる可能性があるという仮説が立てられている。
目的
ACEI/ARBの使用がCOVID-19患者におけるCOVID-19診断および転帰の悪化と関連しているかどうかを検討すること。
試験デザイン、設定、参加者
COVID-19患者の転帰を調べるために、デンマークの全国行政登録のデータを用いたレトロスペクティブなコホート研究を実施した。
2月22日から2020年5月4日までのCOVID-19患者をICD-10コードを用いて同定し、診断日から転帰または試験期間終了日(2020年5月4日)まで追跡調査した。
COVID-19に対する感受性を調べるために、コホート内症例対照の枠組みを用いたCox回帰モデルを用いて、2020年2月1日から5月4日までの高血圧患者のコホートにおけるACEI/ARBsと他の降圧薬の使用とCOVID-19診断の発生率との関連を調べた。
曝露
ACEI/ARBの使用は、指標日の6ヵ月前の処方箋充填と定義した。
主要評価項目および測定法
レトロスペクティブコホート研究では、主要転帰は死亡とし、副次的アウトカムは死亡または重度のCOVID-19の複合転帰とした。
コホート内症例対照感受性解析では、アウトカムはCOVID-19の診断であった。
結果
・レトロスペクティブコホート研究には、COVID-19患者4,480例が含まれていた(年齢中央値 54.7歳[中間値幅 40.9~72.0];男性 47.9%)。ACEI/ARB使用者は895例(20.0%)、非使用者は3,585例(80.0%)であった。
・ACEI/ARB群では、30日以内に18.1%が死亡したのに対し、非使用者群では7.3%であったが、この関連は年齢、性、病歴を調整しても有意ではなかった。
★調整後ハザード比[HR] =0.83、95%CI 0.67~1.03
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・死亡または重度のCOVID-19は、30日までにACEI/ARB使用者の31.9%、非使用者の14.2%で発生した。
★調整後ハザード比[HR] =1.04、95%CI 0.89~1.23
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・COVID-19感受性のコホート内症例対照分析では、COVID-19を有し、高血圧歴のある患者571例(年齢中央値 73.9歳、男性 54.3%)を、高血圧歴はあるがCOVID-19を有していない年齢および性別をマッチさせた対照群 5,710例と比較した。
・COVID-19患者において、ACEI/ARB使用は86.5%であったのに対し、対照群では85.4%であった。他の降圧薬と比較したACEI/ARB使用は、COVID-19発症率の増加と有意な関連はなかった。
★調整後HR =1.05、95%CI 0.80〜1.36
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結論と関連性
ACEI/ARBの先行使用は、高血圧患者におけるCOVID-19の診断、またはCOVID-19を有すると診断された患者における死亡率または重症度と有意に関連していなかった。
これらの所見は、COVID-19パンデミックの文脈で臨床的に指示されているACEI/ARB薬の中止を支持するものではない。
コメント
デンマークのコホート研究。以前からACE阻害薬/ARB使用とCOVID-19重症度との関連性が注目されています。
さて、試験結果によれば、発生率に差があるものの、ハザード比に差はありませんでした。コホート研究およびコホート内症例対照研究の結果は一致していそうです。
個人的には、発生率の差が大きい点について、かなり気になります。これまで報告された他の研究と比較して、かなりの差があります。そろそろアンギオテンシンとCOVID-19との研究については、追わなくて良いとも思っていましたが、少し考えが揺らいでいます。
引き続き報告を追っていきます。
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