Efficacy of Face Mask in Preventing Respiratory Virus Transmission: A Systematic Review and Meta-Analysis
Mingming Liang et al.
Travel Med Infect Dis. 2020 May 28;101751. doi: 10.1016/j.tmaid.2020.101751. Online ahead of print.
PMID: 32473312
PMCID: PMC7253999
DOI: 10.1016/j.tmaid.2020.101751
Keywords: Facemask; Influenza; Prevention; Respiratory virus; SARS-CoV; SARS-CoV-2.
背景
マスクが呼吸器ウイルスの蔓延に対する保護効果があるかどうかについては、相反する勧告が存在する。
方法
このシステマティックレビューの報告には、PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analysis)を参考にした。
関連論文は、PubMed, Web of Science, ScienceDirect, Cochrane Library, Chinese National Knowledge Infrastructure(CNKI)VIP(中国語)データベースから検索した。
結果
・合計21件の研究が我々の包含基準を満たした。
・メタアナリシスでは、マスクの使用が有意な保護効果をもたらしたことが示唆された(OR =0.35、95%CI 0.24〜0.51)。
・医療従事者(HCW)と非医療従事者(非HCW)によるマスクの使用は、呼吸器ウイルス感染のリスクを80%(OR =0.20、95%CI 0.11~0.37)、47%(OR =0.53、95%CI 0.36~0.79)減少させることができる。
・アジアにおけるマスク着用の保護効果(OR =0.31)は、欧米諸国(OR =0.45)よりも高いようであった。
・マスクはインフルエンザウイルス(OR =0.55)、SARS(OR =0.26)、SARS-CoV-2(OR =0.04)に対する保護効果があった。
・異なる研究デザインに基づくサブグループでは、クラスター・ランダム化試験と観察研究でマスク着用の保護効果が有意であった。
結論
本研究ではマスクの保護効果が向上したことを示す追加の証拠が得られたが、COVID-19発生に関してはマスクの使用が補助的な方法として役立つことを強調した。
コメント
呼吸器感染症に対するマスクの有用性については議論が分かれるところです。
さて、本試験結果によれば、マスク使用は、呼吸器ウイルス感染症に対して有意な保護効果を示しました。またアジアにおけるマスク着用の保護効果(OR =0.31)は、欧米諸国(OR =0.45)よりも高い可能性も示されています。ただし、この差を検証するのは不可能に近いと考えられます。
そもそもハグや握手など、物理的な接触が多いと考えられる文化を有する欧米諸国の方が、日本と比べてベースラインの感染リスクが高いためです。いくらマスクを使用していようと、感染源への接触や不充分な手洗い、消毒などの不徹底があるとすれば、マスクによる保護効果は下がります。
メタ解析の欠点は、患者背景がごちゃ混ぜになるところです。つまり考察を深めるためには、組み入れられた個々の研究を追う必要があると考えます。事実、今回組み入れられた研究21件の中に、SARS-CoV-2に関する研究は1件しか含まれていません。
生活環境の消毒(アルコールや次亜塩素酸など)、物理的・社会的距離、手洗いだけでなく、マスクにはある程度の効果が期待できます。現時点において、これらは間違いなさそうですが、COVID-19感染については追試が必要であると考えます。
続報に期待。
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