Ticagrelor With or Without Aspirin in High-Risk Patients With Diabetes Mellitus Undergoing Percutaneous Coronary Intervention
Dominick J Angiolillo et al.
J Am Coll Cardiol. 2020 May 19;75(19):2403-2413.
doi: 10.1016/j.jacc.2020.03.008. Epub 2020 Mar 30.
PMID: 32240760
DOI: 10.1016/j.jacc.2020.03.008
Clinicaltrials.gov.: NCT02270242
背景
短期間の抗血小板二重療法後にチカグレロルを用いたP2Y12阻害薬単剤療法は、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の虚血性障害を増加させることなく出血を減少させることができる。
糖尿病(DM)患者におけるこのアプローチの影響は不明のままである。
目的
本研究の目的は、PCIを受けるDM患者におけるチカグレロル単剤療法とチカグレロル+アスピリン療法の効果を検討することである。
方法
TWILIGHT(Ticagrelor With Aspirin or Alone in High-Risk Patients after Coronary Intervention)試験のDM患者コホートを対象に、事前に指定された解析を行った。
チカグレロル+アスピリンを3ヵ月間投与した後、患者はチカグレロルを維持し、1年間アスピリンまたはプラセボにランダム割り付けされた。
主要エンドポイントはBleeding Academic Research Consortium 2、3、5の出血であった。
複合虚血エンドポイントは全死亡、心筋梗塞、脳卒中であった。
結果
・DM患者はランダム化コホートの37%(n = 2,620)を占め、併存疾患の頻度が高く、多枝病変の有病率が高いことが特徴であった。
・出血学術研究コンソーシアム(BARC)2、3、5の出血の発生率は、チカグレロル+プラセボ群4.5%とチカグレロル+アスピリン群6.7%であった。
★ハザード比 =0.65、95%信頼区間 0.47~0.91;p=0.012
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・チカグレロル単剤療法は、チカグレロル+アスピリン併用療法と比較して虚血性イベントの増加とは関連しなかった(4.6% vs. 5.9%)。
★ハザード比 =0.77、95%信頼区間 0.55~1.09;p=0.14
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・試験全体の母集団において、主要な出血または虚血のエンドポイントについて、DMの状態と治療群との間に有意な相互作用は認められなかった。
結論
チカグレロル+アスピリンと比較して、チカグレロル単剤療法の臨床関連出血のリスクを軽減する効果は、PCIを受けるDMの有無にかかわらず、虚血性イベントの増加を伴わずに一貫していた。
コメント
TWILIGHT試験の事前指定解析。PCI後にDAPTを3ヶ月間行い、その後、SAPTあるいはDAPT継続に割り付けられた糖尿病患者を対象に再解析しています。
さて、結果としては、チカグレロル(ブリリンタ®️)単独療法の方が出血が有意に少なく、虚血性イベントの増加も認められなかった。むしろチカグレロル単独の方がイベントは減少傾向でした。
ただし、そもそもチカグレロルでなければならないケースが思い浮かびません。また両薬剤の比較試験は以前に急性脳卒中あるいはTIA患者を対象に行われています(SOCRATES trial)。
急性脳卒中あるいは一過性脳虚血発作患者における2次予防はブリリンタ®️とバイアスピリン®️どちらが優れていますか?(SOCRATES trial; NEJM2016) https://pharmacyebmrozero.com/2018/08/12/%e6%80%a5%e6%80%a7%e8%84%b3%e5%8d%92%e4%b8%ad%e3%81%82%e3%82%8b%e3%81%84%e3%81%af%e4%b8%80%e9%81%8e%e6%80%a7%e8%84%b3%e8%99%9a%e8%a1%80%e7%99%ba%e4%bd%9c%e6%82%a3%e8%80%85%e3%81%ab%e3%81%8a%e3%81%91/
その結果、1時アウトカムである脳卒中、心筋梗塞、または90日以内の死亡発生までの時間において、両群に差は認められませんでした。PCI後の心臓においても同様の結果が得られるのかは不明ですが、少なくともコストの高いチカグレロルを優先して使用する必要はないと考えます。
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