変形性膝関節症における理学療法とグルココルチコイド関節内注射はどちらが優れていますか?(RCT; NEJM 2020)

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Physical Therapy Versus Glucocorticoid Injection for Osteoarthritis of the Knee

Gail D Deyle et al.

N Engl J Med. 2020 Apr 9;382(15):1420-1429.

doi: 10.1056/NEJMoa1905877.

PMID: 32268027

DOI: 10.1056/NEJMoa1905877

ClinicalTrials.gov number, NCT01427153.

背景

理学療法とグルココルチコイドの関節内注射の両方が、変形性膝関節症に関して臨床的に有益であることが示されている。

これら2つの治療法間で、痛みの緩和や身体機能の改善に対する短期的・長期的な効果が異なるかどうかは不明である。

方法

我々は、米軍医療システムのプライマリーケアにおいて、物理療法とグルココルチコイド注射を比較するランダム化試験を実施した。

片膝または両膝に変形性膝関節症を有する患者を、グルココルチコイド注射を受けるか、理学療法を受けるかに1:1の割合でランダムに割り付けた。

主要アウトカムは、1年後のWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index (WOMAC)の総スコアであった(スコアの範囲は0~240であり、スコアが高いほど痛み、機能、硬直が悪化していることを示す)。

副次的転帰は、1年後に評価されたオルタネイト・ステップ・テストの完了に要した時間、Timed Up and Goテストの完了に要した時間、Global Rating of Changeスケールのスコアであった。

結果

・平均年齢56歳の患者156人が登録され、それぞれ78人が各群に割り付けられた。

・疼痛の重症度および障害の程度を含むベースラインの特徴は、両群で同程度であった。ベースラインのWOMACスコアの平均(±SD)は、グルココルチコイド注射群で108.8±47.1、理学療法群で107.1±42.4であった。

・1年後の平均スコアはそれぞれ55.8±53.8および37.0±30.7であり(グループ間の平均差は18.8ポイント、95%信頼区間 5.0~32.6)、理学療法に有利な結果であった。

・副次的転帰の変化は、主要転帰の変化と同じ方向であった。

・1人の患者がグルココルチコイド注射中に失神した。

結論

理学療法を受けた変形性膝関節症(Knee OA)患者は、関節内グルココルチコイド注射を受けた患者よりも1年後の痛みと機能障害が少なかった。

コメント

過去の報告では、理学療法、関節内グルココルチコイド注射ともにKnee OA患者に対し有用であることが示されています。

主要評価項目に設定されたWOMAC scoreについてですが、これは疼痛や機能障害を可視化するための評価尺度(スケール)です。しばしば問題となるのが、WOMAC scoreと臨床学的な有益性との関連性です。つまり、WOMAC scoreが何点減れば、臨床的に有益なのか?という疑問です。

過去の報告によれば、WOMAC総スコアが、ベースラインから10、群間差では17変化することで、臨床的に有益であるとされています。

さて、今回のランダム化比較試験により、関節内グルココルチコイド注射よりも理学療法の方が優れていることが示されました。1年後の平均スコアは、グルココルチコイド注射群で55.8±53.8、理学療法群で37.0±30.7で、グループ間の平均差 =18.8ポイント(95%信頼区間 5.0~32.6)でした。ベースラインのスコアは100を超えていますので、両治療法ともにかなりの効果がありそうです。また群間差は18.8ポイントと、こちらについても臨床的に有益な差であると考えられます。1年間継続できるのであれば理学療法の方が良さそうですね。

試験の限界としては、主要評価項目がスケールであることでしょうか。臨床試験に参加することによるバイアス、治療をしているというバイアスが入り込みやすいと考えられます。それぐらいスケールでの評価には困難が付きまといます。実臨床での効果は少し割り引いた方が良いと考えます。

✅まとめ✅ Knee OA患者の疼痛および機能障害における理学療法と関節内グルココルチコイド注射では、理学療法の方が優っていた

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