Risk of QT Interval Prolongation Associated With Use of Hydroxychloroquine With or Without Concomitant Azithromycin Among Hospitalized Patients Testing Positive for Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)
Nicholas J Mercuro et al.
JAMA Cardiol. 2020 May 1;e201834. doi: 10.1001/jamacardio.2020.1834. Online ahead of print.
PMID: 32356863
PMCID: PMC7195692
DOI: 10.1001/jamacardio.2020.1834
試験の重要性
コロナウイルス疾患2019(COVID-19)関連肺炎の治療のためのアジスロマイシンを併用または併用しない時のヒドロキシクロロキン投与は、補正されたQT(QTc)延長および心筋不整脈のリスク増加をもたらす。
目的
COVID-19患者における、アジスロマイシンを併用または併用しない時のヒドロキシクロロキン使用と関連したQT延長リスクと程度を特徴づけること。
試験デザイン、設定、参加者
本研究は、マサチューセッツ州ボストンの学術三次医療センターで実施されたコホート研究で、2020年3月1日から2020年4月7日までの間に、COVID-19鼻咽頭ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査の結果が少なくとも1回陽性で、肺炎と一致する臨床所見を有する入院患者であり、ヒドロキシクロロキンを少なくとも1日投与された患者を対象とした。
主要アウトカムと測定方法
アジスロマイシンの併用または非併用によるヒドロキシクロロキン投与後のQT間隔の変化、その他の潜在的な薬物有害事象の発生。
結果
・ヒドロキシクロロキンを投与された患者90例のうち、53例がアジスロマイシンを併用投与された。女性は44人(48.9%)で、平均(SD)体格指数は31.5(6.6)であった。
・高血圧(48人[53.3%])および糖尿病(26人[28.9%])が最も一般的な併存疾患であった。
・ベースラインQTcの全体中央値(四分位間範囲)は455(430~474)ミリ秒であった。
★ヒドロキシクロロキン:473[454~487]ミリ秒 vs. ヒドロキシクロロキン+アジスロマイシン併用 442[427~461]ミリ秒;P<0.001
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・アジスロマイシンの併用投与を受けた患者は、ヒドロキシクロロキン単独投与を受けた患者と比較して、QT間隔の中央値(四分位間距離)の変化が大きかった(23 [10〜40] ミリ秒);5.5 [-15.5~34.25] ミリ秒;P = 0.03)。
・ヒドロキシクロロキン単独療法を受けた患者 7 例(19%)では QTc が 500 ミリ秒以上延長し、3 例(3%)では QTc が 60 ミリ秒以上変化した。
・アジスロマイシンの併用投与を受けた患者のうち,53例中11例(21%)でQTcが500ミリ秒以上延長し、53例中7例(13%)でQTcに60ミリ秒以上の変化が認められた。
・QTc延長の可能性は、ループ利尿薬を併用している患者ほど高かった。
★調整オッズ比 =3.38[95%CI 1.03~11.08]
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・ベースラインのQTcが450ミリ秒以上の患者ほど高かった。
★調整オッズ比 =7.11[95%CI 1.75~28.87]
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・患者10人では、難治性の吐き気、低血糖、およびtorsades de pointesの1例を含む潜在的な薬物有害事象のために、ヒドロキシクロロキンの早期中止を余儀なくされた。
結論および関連性
本コホート研究では、COVID-19に関連する肺炎の治療のためにヒドロキシクロロキンを投与された患者はQTc延長のリスクが高く、アジスロマイシンとの同時投与はQTcの変化が大きくなることと関連していた。
臨床家は、ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンを検討する場合には、QTcのモニタリングと併用薬の使用を綿密に行い、リスクとベネフィットを慎重に検討すべきである。
コメント
ヒドロキシクロロキンによるQT延長については以前から注意喚起されています。さらに、副作用としてQT延長が報告されている薬剤(今回の場合はアジスロマイシン)との併用で、QT延長リスクが増大することも報告されています。
さて、今回の試験結果としては、以前に報告された結果と同様、ヒドロキシクロロキンによりQTが延長し、アジスロマイシンの併用によりさらに変化が大きくなりました。
COVID-19に対するヒドロキシクロロキン(アジスロマイシンの併用/非併用)の有効性は、これまでに示されていません。ベネフィットがなく、リスクが大きい薬剤を使用する危険性を再認識させられる研究結果であると考えます。
ただし、本試験結果は、単施設の後向き研究、かつサンプルサイズが小さい(90例)ので、あくまでも相関関係までです。しかし、重大な有害事象との関連性については、注意しすぎるぐらいの方が良いと考えます。
現状では、COVID-19に対してヒドロキシクロロキンを使用する意義は少ない(ほぼない)と考えます。
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