Association of Daily Step Count and Step Intensity With Mortality Among US Adults
Pedro F. Saint-Maurice et al.
JAMA. 2020;323(12):1151-1160.
doi:10.1001/jama.2020.1382
PMID: 未
臨床疑問
米国の成人における 1 日の歩数、歩数強度と死亡率との関連はどのくらいか。
知見
4,840人の参加者を含むこの観察研究では、1日の歩数が多いほど全死亡率が低いことと有意な関連があった(8,000歩/日 vs. 4,000歩/日の調整済みハザード比 =0.49)。
1日の総歩数で調整しても、歩数の強さと全死亡率との間に有意な関連は認められなかった。
試験の意義
1日あたりの歩数が多いほど,全死亡のリスクが低かった。
試験の重要性
1 日あたりの歩数と歩数の強度が死亡率の低下と関連しているかどうかは不明である。
試験の目的
1日の歩数および歩数強度と死亡率との間の用量反応関係を検証する。
試験デザイン、設定、参加者
国民健康・栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey)に参加した40歳以上の米国成人の代表標本で、期間内に加速度計を7日間まで装着していた成人が対象となった(2003年~2006年)。
死亡率は2015年12月まで把握された。
暴露
加速度計は、1日あたりのステップ数と3つのステップ強度測定(拡張バウトケイデンス、ピーク30分ケイデンス、およびピーク1分ケイデンス[ステップ/分])を測定した。
加速度計のデータは、ベースライン時の7日間の測定値に基づいている。
主要アウトカムと測定方法
主要アウトカムは全死亡であった。副次的アウトカムは心血管疾患(CVD)およびがん死亡率であった。
ハザード比(HR)、死亡率および95%CIは、年齢、性別、人種/民族、教育、食事、喫煙状況、肥満度指数、自己申告健康状態、移動制限、糖尿病、脳卒中、心疾患、心不全、がん、慢性気管支炎、肺気腫の診断を調整した3次スプライン(区分多項式)および四分位分類を用いて推定された。
結果
・合計4,840人の参加者(平均年齢56.8歳、女性2,435人[54%]、肥満者1,732人[36%])が加速度計を1日平均14.4時間、平均5.7日間装着した。
・1日あたりの平均歩数は9,124歩であった。追跡期間中の平均10.1年間の死亡は1,165件(24.1%)で、そのうちCVD死亡は406件、がん死亡は283件であった。
・全死亡の未調整発生密度は、1日の歩数と関連していた。
4,000歩未満/日の655人:76.7/1,000人・年(死亡数419人)
4,000~7,999歩/日の1,727人:21.4/1,000人・年(死亡数488人)
8,000歩〜11,999歩/日の1,539人:6.9/1,000人・年(死亡数176人)
1日12,000歩以上の919人:4.8/1,000人・年(死亡数82人)
—-
・歩数が4,000歩/日の群と比較して、8,000歩の群では、1日12,000歩の群と同様に、全死亡率が有意に低かった。
★8,000歩 vs. 4,000歩:HR =0.49、95%CI 0.44〜0.55
★12,000歩 vs. 4,000歩:HR =0.35、95%CI 0.28〜0.45
・ピーク30ケイデンス別の全死亡の未調整発生密度は、1分間に18.5~56.0歩の1,080人では32.9/1,000人・年(死亡数406人)、1分間に56.1~69.2歩の1,153人では12.6/1,000人・年(死亡数207人)であった。
・1分間に69.3~82.8歩の1,074人では6.8/1000人・年(死亡124人)、1分間に82.9~149.5歩の1,037人では5.3/1,000人・年(死亡108人)であった。
・1日の総歩数(例えば、ピーク30ケイデンスの最高四分位と最低四分位の差)で調整した後、歩数強度の高さと死亡率低下との間に有意な関連はなかった。
★HR =0.90、95%CI 0.65〜1.27、傾向のP値=0.34
—-
結論と関連性
米国成人の代表的な集団データに基づいて、毎日の歩数が多いほど、全死亡率の低下と有意に関連がみられた。
1日あたりの総歩数を調整しても、歩数の強さと死亡率との間に有意な関連は認められなかった。
コメント
米国におけるNational Health and Nutrition Examination Surveyを基にした研究。
研究結果により、1日の歩数が多いほど死亡リスクの低下が認められた。ただし、そもそも長時間歩けるヒトで死亡リスクが低い可能性もある。またBMIでの調整だけでは筋肉と脂肪との割合までは調整できない。おそらくこれらの交絡を調整するためにも歩行強度を調べたのだと推測している。ただし、それでも交絡因子が残存しているのではないかと考えられる。
個人的には本研究結果を、トレーニングの目標設定に当てると良いのではないかと考えている。つまり1日1万歩まではいかなくとも、8,000歩ぐらいは歩行できるような食事、運動を心がけることが肝要だと考える(あくまでも4,000歩/日の群との比較ではある)。
コメント