重症COVID-19患者におけるレムデシビルの効果はどのくらいですか?(DB-RCT; Lancet 2020)

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Remdesivir in adults with severe COVID-19: a randomised, double-blind, placebo-controlled, multicentre trial

Yeming Wang et al.

Lancet 2020

Published:April 29, 2020

DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31022-9

PMID:未

ClinicalTrials.govNCT04257656.

Funding:Chinese Academy of Medical Sciences Emergency Project of COVID-19, National Key Research and Development Program of China, the Beijing Science and Technology Project.

背景

重症コロナウイルス疾患2019(COVID-19)の治療に有効であることが証明されている特定の抗ウイルス薬はない。

ヌクレオシドアナログプロドラッグであるレムデシビル(GS-5734)は、in vitroで重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を含む病原性動物コロナウイルスおよびヒトコロナウイルスに対して阻害作用を示し、動物モデルでは中東呼吸器症候群(Middle East respiratory syndrome, MERS)コロナウイルス、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2の複製を阻害する。

方法

中国湖北省の病院10施設でランダム化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験を実施した。

対象としたのは、実験室でSARS-CoV-2感染が確認された成人(18歳以上)で、症状発症から登録までの期間が12日以内で、室内空気中の酸素飽和度が94%以下、または動脈酸素分圧が300mmHg以下で、放射線学的に肺炎が確認された入院患者とした。

患者は、レムデシビルの静脈内投与(1 日目に200 mg、2~10 日目に 100 mg を 1 日 1 回投与)、または 10 日間同量のプラセボを投与する群に 2:1 の割合でランダムに割り付けられた。

患者にはロピナビル・リトナビル、インターフェロン、副腎皮質ステロイドの併用が認められた。

一次エンドポイントは28日目までにおける臨床改善までの時間であり、ランダム化から臨床状態を6段階の順序尺度で2段階低下(1:退院 〜 6:死亡)するまでの時間(日数)、または生存したまま退院するまでの時間(日数)のいずれか早い方と定義した。

一次解析はintention-to-treat(ITT)集団で行い、安全性解析は割り付けられた治療を開始した全患者で行った。

所見

・2020年2月6日から2020年3月12日までの間に、237人の患者が登録され、治療群へランダムに割り付けられた(レムデシビル群:158人、プラセボ群:79人)。

・ランダム化後に辞退したプラセボ群の1人の患者はITT集団に含まれなかった。

・レムデシビル使用は臨床的改善までの時間の差とは関連していなかった。

★ハザード比 =1.23[95%CI 0.87〜1.75]

・症状の持続期間が10日以下の患者では、統計的に有意ではなかったが、レムデシビル群は、プラセボ群に比べて臨床的改善までの時間が数値的に早かった。

★ハザード比 =1.52[0.95〜2.43]

・有害事象は、レムデシビル投与群155例中102例(66%)で報告されたのに対し、プラセボ投与群78例中50例(64%)で報告された。

・有害事象のためにレムデシビルを早期に中止した患者は18例(12%)であったのに対し、プラセボを早期に中止した患者は4例(5%)であった。

解釈

重度のCOVID-19で入院した成人患者を対象とした本研究では、レムデシビルは統計学的に有意な臨床効果とは関連していなかった。

しかし、早期に治療を受けた患者における臨床的改善までの時間の数値的な短縮については、より大規模な研究で確認する必要がある。

コメント

COVID-19に対するレムデシビルの有効性や安全性を検証した小規模な臨床試験。

残念ながら、レムデシビルはプラセボより優れていませんでした。ただし、1つの小規模な試験の結果ですので、結論付けるのは時期尚早であると考えます。というのも、以前に報告された重症COVID-19患者では有効性が認められています(NEJM 2020)。どんな患者で、どんな薬剤が有効なのか、それを明らかにするためには、レムデシビルも含めて、まだ検証が必要な分野であると考えます。

したがって、この結果をもって、医薬品として承認するのは有り得ません。

また個人的には、アウトカムの設定に課題があるように思います。医療崩壊を防ぐために、症状緩和および退院までの “時間” が重要であることは理解できますが、患者にとっては症状が緩和するのかしないのか、重症化するのかしないのか、2次感染症が併発するのかしないのか、ウイルス排泄する時間が短縮するのかしないのか、死亡率は下がるのか等、他にも重要なアウトカムがあります。また症状が軽症化することで、ホテル等の療養(隔離)施設へ移動できます。

現在、レムデシビルを用いた臨床試験はいくつか走っており、その中でも6,000人を対象とした大規模な試験が走っているようです。

懸念点としては、レムデシビルも含めて、これまでの臨床試験では患者背景や副作用等の安全性情報がかなり少ないです。有効性ばかりが注目されているため、実臨床で薬剤を使用する患者が増えたときに、予想だにしない副作用(薬害含む)がみとめられるかもしれません。

医薬品は毒にも薬にもなることを忘れないでほしいところ。

✅まとめ✅ 重症COVID-19感染患者におけるレムデシビルは、プラセボと比べてアウトカムを改善できなかった

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