Active Smoking Is Not Associated With Severity of Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)
Giuseppe Lippi et al.
Eur J Intern Med. 2020
PMID: 32192856
PMCID: PMC7118593
DOI: 10.1016/j.ejim.2020.03.014
背景
現在進行中のコロナウイルス疾患2019(COVID-19)パンデミックでは、いくつかのユニークな臨床的特徴が報告されている。
中国からの44,672例の報告では、男性の症例死亡率が2.8%であるのに対し、女性は1.7%にとどまっていた。
これは男性の併存疾患、特に喫煙率が高く、中国では男性で52.1%、女性で2.7%と報告されていることが原因ではないかと推測されている。しかし、COVID-19(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2;SARS-CoV-2)の原因ウイルスの宿主受容体として報告されているアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)のレベルが喫煙者では低下していることが観察されている。
目的
本論文では、積極的な喫煙とCOVID-19疾患の重症度との関連を調べることを目的とした。
方法
Medline(PubMedインターフェース)、Scopus、Web of Scienceで、2019年から現在(2020年3月9日)までの間に、「喫煙」OR「たばこ」AND「coronavirus 2019」OR「COVID-19」OR「2019-nCoV」OR「SARS-CoV-2」のキーワードを用いて、言語制限なしで電子検索を行った。
これらの検索基準で捕捉されたすべての文献のタイトル、抄録、全文を精査し、臨床的に検証された重症度の定義を持つCOVID-19患者における積極的な喫煙者の割合を報告しているものを、このメタ解析に含めた。
特定された研究の参照リストは、他の選択基準を満たす可能性のある論文を検出するために分析された(前方引用および後方引用の追跡)。
その後、COVID-19の重症化した患者または重症化していない患者におけるオッズ比(OR)と95%信頼区間(95%CI)を推定してメタアナリシスを実施した。
統計解析はMetaXL、ソフトウェアバージョン5.3(EpiGear International Pty Ltd.、Sunrise Beach、オーストラリア)を使用して実施した。
研究はヘルシンキ宣言および現地の法律の条項に従って実施された。
結果
・我々の検索基準と参考文献リストに基づいて全部で27文献が最初に同定されたが、そのうちの22文献は、レビュー論文(n=4)、解説またはその他の編集資料(n=2)、COVID-19疾患を扱っていない(n=11)、または重度の疾患を持つ患者と持たない患者の活動的喫煙者の割合を提供していない(n=5)ため、タイトル、アブストラクト、または全文を読んだ後に除外された。そのため、最終的に5研究をメタアナリシスに含めることができ、合計1,399人のCOVID-19患者、288人(20.6%)の重症患者を対象とした。
・研究5報の本質的な特徴を表1に示し、重症COVID-19を予測するための喫煙の個々のORとプールされたORを図1に示す。全体的には、1つの研究では喫煙がCOVID-19重症度の有意な予測因子であることが明らかとなったが、他の4つの研究では関連性は統計的には有意ではなかった。
Table 1. 採択された研究の特徴
Figure 1. 喫煙とCOVID-19重症化との関連性
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/core/lw/2.0/html/tileshop_pmc/tileshop_pmc_inline.html?title=Click%20on%20image%20to%20zoom&p=PMC3&id=7118593_gr1_lrg.jpg
・リスクが高い傾向が認められたにもかかわらず、個々の研究のデータをプールした場合、喫煙とCOVID-19の重症度との間に有意な関連は認められなかった。
★OR =1.69;95%CI 0.41-6.92;p=0.254
—-
Guanらによる大規模研究(全サンプルサイズの89.5%)を統計解析から除外しても、有意な関連は認められなかった。
★OR =4.35;95% 0.86-21.86;p=0.129;I2 =29%、p=0.24
結論
中国人患者を対象とした予備的な本メタアナリシスの結果では、COVID-19の重症化への進行リスクの増加と積極的な喫煙は明らかに有意に関連していないように思われることを示唆している。
コメント
喫煙とCOVID-19重症化との関連性についてはcontroversial な結果が報告されており、結論を出すには至っていません。
さて、今回のメタ解析では、採択基準を満たした研究は5件だけでした。今後、結果が変わる可能性は大いにありますが、現状ではCOVID-19罹患時の喫煙と疾患の重症化との関連性は示されていません。ただし、有意差がないといっても効果推定値は増加傾向です。
また下気道感染のリスク増加は喫煙との関連性があり、これは疑う余地のない事実です。やめられるならば喫煙はやめた方が良さそうですが、あくまでも仮説生成的な考察ですので、断定はできません(研究結果で明らかになったのは、喫煙者ではCOVID-19重症化の可能性があることまでしか示せず、禁煙したら重症化しないかは検証しないと分からないため)。
個人的には喫煙してても感染伝播させるわけではないので、個人の自由だと思うのですが、それでも、もしCOVID-19罹患により重症化した場合、医療従事者や治療コストも含め医療資源の消費が増大しますので、やっぱり禁煙した方が良いなと、現段階では思っています。
個人の自由を謳う場合は、受け手(今回の場合は医療機関や医療資源)のことを意識しないと医療崩壊が起きると考えます。これを機に優しさって何か再定義したいところですが、それはまた別のお話ですね。
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