Comparison of Cardiovascular and Safety Outcomes of Chlorthalidone vs Hydrochlorothiazide to Treat Hypertension
George Hripcsak et al.
JAMA Intern Med. Published online February 17, 2020.
doi:10.1001/jamainternmed.2019.7454
PMID:未
臨床疑問
クロルタリドンとヒドロクロロチアジドの相対的な有効性と安全性はどのくらいですか?
調査結果
複数の大規模データベースの730,255人を対象とした比較コホート研究。
両薬剤の有効性に関連する違いはみられなかったが、クロルタリドンの安全性プロファイルが著しく悪化した。
ヒドロクロロチアジドよりもクロルタリドンを好むという意味での推奨事項は、実際の証拠によって裏付けられていない。
概要
高血圧を治療するための好ましいチアジド系利尿薬としてクロルタリドンの重要性が推奨されているが、リスクとベネフィットを直接比較した試験はない。
目的
現実の診療における高血圧の第一選択療法としてのクロルタリドンとヒドロクロロチアジドの有効性と安全性を比較する。
試験設計、設定、参加者
本研究は、2001年1月から2018年12月のデータベースに関する大規模な傾向スコアの階層化とネガティブコントロールおよび合成ポジティブコントロールキャリブレーションを使用した。
データベースネットワーク(LEGEND)観察比較コホート研究における大規模な証拠の生成と評価を実施した?
行政請求データベース2件と電子医療記録1件に基づいた、米国での降圧単独療法の初回の外来患者と入院患者のケアエピソードを分析した。分析は2018年6月から実施した?
曝露
クロルタリドンとヒドロクロロチアジド。
主要アウトカムと測定
主要評価項目は、急性心筋梗塞、心不全、虚血性または出血性脳卒中による入院、およびこれら3つのアウトカムと心突然死を含む複合心血管疾患アウトカムだった。
51件の安全性アウトカムも測定された。
結果
・730,225人(平均[SD]年齢 51.5 [13.3]歳; 450,100女性[61.6%])のうち、36,918がクロルタリドンを調剤または処方され、複合転帰イベント149件が発生し、ハイドロクロロチアジドを処方された693,337人のうち、複合アウトカムイベント3,089件が発生した。
・心筋梗塞、心不全による入院、または脳卒中の関連リスクに有意差は認められず、ヒドロクロロチアジドと比較したクロルタリドンの複合心血管アウトカムの調整ハザード比は1.00でした(95%CI 0.85-1.17)。
・クロルタリドンは、低カリウム血症(ハザード比[HR] =2.72、95%CI 2.38-3.12)、低ナトリウム血症(HR =1.31、95%CI 1.16-1.47)、急性腎不全(HR =1.37; 95%CI 1.15-1.63)、慢性腎疾患(HR =1.24; 95%CI 1.09-1.42)、および2型糖尿病(HR =1.21; 95%CI 1.12-1.30)。
・クロルタリドンは、異常な体重増加と診断されるリスクが有意に低かった(HR =0.73; 95%CI 0.61-0.86)。
結論と関連性
本研究は、クロルタリドンの使用はヒドロクロロチアジドと比較した場合、有意な心血管の利点と関連していなかったが、その使用は腎および電解質異常のより大きなリスクと関連していた。
これらの知見は、高血圧治療の初回処方において、ヒドロクロロチアジドよりもクロルタリドンを選択するという現在の推奨事項を裏付けていない。
高度な方法、感度分析、および診断を使用したが、残留交絡の可能性と観測期間の長さが限られているため、さらなる研究が必要である。
コメント
長年、利尿薬のなかでもチアジド類似薬であるクロルタリドンが優れていると信じられてきました。これは過去の臨床試験において、クロルタリドンの有益な結果が示されているためです。
私も低用量利尿薬ならクロルタリドン(本邦では販売中止)だと考えていました。
さて、今回の大規模コホート研究により、クロルタリドンはヒドロクロロチアジドと比較して、有効性に差は認められなかった。しかし、副作用(安全性の面)において、クロルタリドン使用群で有意にリスク増加が認められた。
安全性アウトカムの内訳をみていくと、過用量に関連するアウトカムにおいて、リスク増加が大きいと感じましたが、用量についてもきちんと調整して解析していました。クロルタリドンは12.5mg、ヒドロクロロチアジドは25mg、日本での適応用量の範囲内ですが、どちらの薬剤も日本人への使用用量よりもやや多い印象です。一部の患者を除いて、こと高血圧へ利尿薬を使用する場合、基本的には低用量で使用しなければ利益を最大化できません。
後向き研究とはいえ、ベネフィットが同等で、リスクが高まるのはいただけない結果ですね。クロルタリドンを盲信しないよう注視していこうと思います。続報に期待。
コメント
[…] […]