Lower Versus Standard INR Targets in Atrial Fibrillation: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
Arjun K Pandey et al.
Thromb Haemost. 2020
PMID: 31940677
背景
欧米のガイドラインでは、心房細動(AF)の脳卒中予防にワルファリンを使用する場合、2〜3の国際標準化比(INR)範囲を推奨しているが、東アジアではより低いINR範囲が頻繁に使用される。
血栓塞栓症、大出血、死亡率に対する標準的なINRターゲットの効果を比較するAF患者を対象に、ランダム化比較試験(RCT)の系統的レビューとメタ分析を実施した。
方法
Cochrane CENTRAL、Medline、Embaseを含む西部のデータベースと、SinoMed、CNKI、Wanfang Dataを含む中国のデータベースを検索した。
変量効果モデルを使用して、リスク比(RR)をプールした。 INRターゲットを次の2つの方法でグループ化した。
(1)任意の研究固有の低ターゲットと標準ターゲット
(2)INR範囲約1.5〜2 vs. 2〜3。
結果
・RCT 79件(n = 12,928)が適格基準を満たした:東アジアから74件(n = 11,322)、西部諸国から5件(n = 1,606)。
・標準ターゲットと比較して、INR範囲が低いほど血栓塞栓症の発生率が高くなった。
★血栓塞栓症リスク:RCT 76件の統合、n = 12,577、7.1% vs. 4.4%、RR = 1.50、95%信頼区間[CI] 1.29-1.74、I 2 = 0%
★低出血率:RCT 61件、n = 10,815、2.2% vs. 4.4%、RR = 0.54、95%CI 0.44-0.67、I 2 = 0%
★死亡率:RCT 32件、n = 7,327、4.8 % vs. 5.2%、RR = 1.00、95%CI 0.85-1.19、I 2 = 0%
・約1.5〜2 vs. 2〜3のターゲット範囲を比較すると、結果は同様であった。
結論
質が中程度のエビデンスでは、より低いINRターゲットが出血を減らすが、AFの血栓塞栓症を増加させることを示唆している。
データは東アジアの研究によって占められているため、一般化可能性について西洋人に対しては限定されている。
より高品質のデータがそうでないことを証明するまで、AFの血栓塞栓予防のための2〜3のINR範囲が標準のままである。
コメント
予想通りの結果。
INRの目標値が低ければ出血イベントは増えないが、血栓塞栓症リスクが高まるとのこと。死亡率は変わらないのでどうしたら良いものか。
低すぎず高すぎずコントロールするということでしょうか。ここはトレードオフなので当然と言われれば当然ですね。ただしINRのコントロール範囲による差はないみたいなので、出血リスクが高い患者ではINR 1.5-2でも良いよね、と感じました。
いずれにせよ、薬剤使用時は過度に副作用を恐れて用量を低くする益は少なそうですね。
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