Secular Trends in the Incidence, Risk Factors, and Prognosis of Transient Ischemic Attack in Japan: The Hisayama Study
Yoshihiko Furuta et al.
Atherosclerosis. Jun 2018
PMID: 29702429
DOI:10.1016/j.atherosclerosis.2018.04.010
背景と目的
一般的な日本人集団における一過性脳虚血発作(TIA)の発生率、危険因子、予後の長期的傾向を調査することを目指した。
方法
1961年(n = 1,621)および1988(n = 2,646)に40歳以上の脳卒中のない日本人からなる2つのコホートを24年間追跡した。
潜在的な危険因子とTIA発症との関連は、コックス比例ハザードモデルによって推定された。
TIAがその後10年間の総脳卒中リスクに及ぼす影響を、TIA被験者のサブコホートと、各コホートの年齢および性別が一致した対照被験者との間で比較した。
結果
・フォローアップ中、1961年コホートの被験者28人と1988年コホートの被験者34人がTIAを経験した。
・TIAの年齢標準化発生率は、1988年コホートでは1961年コホートよりも有意に低かった(0.66/1,000人年 vs. 1.01/1,000人年、p = 0.02)。
・収縮期血圧の上昇は両コホートでTIAリスクと有意に関連していたが、耐糖能異常およびより高値の血清コレステロールレベルは1,988年のコホートでのみTIAリスクと関連していた。
・TIAを経験している被験者は、1961年および1988年サブコホートの両方で、TIAを持たない対応する対照被験者と比較して、10年間の総脳卒中および虚血性脳卒中リスクが約7〜8倍高く、サブコホート間で相対リスクに有意差は認められなかった。
結論
本研究結果は、TIA発生率は過去半世紀の間に減少したことを示唆しているが、これはおそらく一般的な日本人集団における降圧治療の普及によるものである。
コメント
アブストのみ。
やや古いデータですが、日本人コホートである久山町研究において、一過性脳虚血発作(TIA)の発生率が減っていたとのこと。
歴史的にみると、1945年の第2次世界大戦の終戦、1986年から1991年までの高度成長期、バブル経済の崩壊、食の欧米化などがありました。これに伴い食塩の摂取割合は減り、糖質や脂質の摂取割合が増加したと考えられます。久山町研究の1988年コホートで収縮期血圧、耐糖能異常、血清コレステロール高値がTIA発生に寄与しているのも頷けます。
TIA発生率について、今日(こんにち)ではもっと少なくなっているかもしれませんね。引き続き追っていきたい研究テーマです。しかし久山町の住民の特徴が、日本人の平均的な特徴と異なっていることが指摘されはじめています。したがって久山町研究で得られた結果をそのまま外挿できないかもしれません。
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