Association Between Dipeptidyl peptidase-4 Inhibitor and Aspiration Pneumonia: Disproportionality Analysis Using the Spontaneous Reporting System in Japan
Yoshihiro Noguchi et al.
Eur J Clin Pharmacol.2019
PMID: 31822955
DOI: 10.1007/s00228-019-02794-y
【目的】
糖尿病治療薬の一種であるジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤(DPP-4-Is)は、嚥下障害の発生を抑制するサブスタンスPの分解を防ぐと考えられている。一方、DPP-4阻害剤は免疫系に作用することも知られている。本
研究では、自発的報告システムを使用して、DPP-4-Iによる嚥下障害と誤嚥性肺炎のシグナルを評価した。
【方法】
不適合性分析として報告オッズ比(ROR)と情報係数(IC)を計算し、日本の有害薬物イベントレポート(JADER)データベースを使用して、DPP-4-Iによる嚥下障害と誤嚥性肺炎を評価した。
【結果】
・DPP-4-Iクラス使用の場合、嚥下障害のシグナルは検出されなかったが、ROR =1.67(95%信頼区間[95%CI]:1.20〜2.34)およびIC =0.70(95%CI:0.21〜1.19)で誤嚥性肺炎のシグナルが検出された。
・誤嚥性肺炎の場合、トレラグリプチンはDPP-4-Iの中でRORおよびICシグナルの両方が検出された唯一の薬物だった(ROR =9.99、95%CI:4.10〜24.36; IC =1.98、95%CI:0.78〜3.18)。
・リナグリプチン(ROR =2.66、95%CI:1.19〜5.94; IC =1.09、95%CI:-0.004〜2.19)およびシタグリプチン(ROR =1.84、95%CI:1.04〜3.25 ; IC =0.78、95%CI:-0.03〜1.58)で、ICシグナルではなくRORシグナルが検出された。
【結論】
DPP-4阻害剤は嚥下反射に関与するサブスタンスPの分解を防ぐため、DPP-4阻害剤は嚥下障害と誤嚥性肺炎を防ぐことが期待されていた。 しかし本研究では、DPP-4阻害剤が誤嚥性肺炎を予防するというよりも発症と強く関連していることを明らかにした。
本結果は、DPP-4阻害剤が誤嚥性肺炎の発症に関連する免疫機能に影響を及ぼす可能性があることを示唆している。さらに、臨床的に使用されるDPP-4-Iの用量は、誤嚥性肺炎を防ぐために十分な量のサブスタンスP量を増やすことができない可能性がある。
【コメント】
アブストのみ。
DPP-4阻害薬の薬理作用から、サブスタンスPを増加させ、誤嚥性肺炎を予防できることが推測されるため検証した研究。
JADERを用いているところが面白いと思いました。しかし、結論としてはやや考察が甘いように感じます。
そもそもJADERでは相関関係までしかわからない点、そしてノイズを含んでいる可能性がある点、患者背景までは検証できていない点、なぜDPP-4阻害薬のなかでもトレラグリプチンでリスク増加の可能性が示唆されたのかについて丁寧に考察した方が良いと考えられます。
端的に言えば因果の逆転です。そもそもDPP-4阻害薬のなかでもトレラグリプチンは週一回製剤ですので、高齢の在宅患者で使用量が多い可能性は容易に想像できます。
この点をまず明らかにした方が、より説得力のある結果になると考えられます。
ちょっと真似して解析してみようかな。
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