Rosenstock J et al.
JAMA. 2019 Sep 19.
doi: 10.1001/jama.2019.13772. [Epub ahead of print]
TRIAL REGISTRATION:ClinicalTrials.gov Identifier: NCT01243424.
PMID: 31536101
【試験の重要性】
2型糖尿病は心血管リスクの増加と関連している。プラセボ対照の心血管安全性試験では、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤(dipeptidyl peptidase-4 inhibitor, DPP-4i)リナグリプチンは非劣性を示したが、有効な比較試験は行われていない。
【目的】
本試験では、比較的早期の2型糖尿病患者およびアテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスク因子を有す、あるいは既往患者におけるリナグリプチンとグリメピリド(sulfonylurea, SU)の心血管転帰を評価した。
【試験設計、設定、参加者】
2010年11月から2012年12月までの参加者スクリーニングを伴うランダム化二重盲検実薬対照非劣性試験は、6,042人の参加者を含む43ヶ国、病院およびプライマリーケア607施設で実施された。
組み入れ対象は、2型糖尿病、糖化ヘモグロビン6.5%〜8.5%、そして心血管リスクの高い成人だった。心血管リスクの上昇は、アテローム性動脈硬化性心疾患、複数の心血管リスク因子、70歳以上、および微小血管合併症の証拠として定義された。フォローアップは2018年8月に終了した。
【介入】
患者は、通常のケアに加えて、リナグリプチン5 mgを1日1回投与(n = 3,023)またはグリメピリド1〜4 mgを1日1回投与(n = 3,010)するようランダムに割り付けられた。臨床的必要性に応じて主にメトホルミン(メトグルコ®️)、α-グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、またはインスリンを追加または調整することにより、血糖治療を強化することが奨励された。
【主なアウトカムと測定】
グリメピリドに対するリナグリプチンの非劣性を確立することが本試験の目的であり、主要な評価項目は、ハザード比(HR)の95.47%CIの上限1.3未満によって定義される、心血管死、非致死性心筋梗塞、または非致死性脳卒中の最初の発生までの時間だった。
【結果】
・ランダム化された6,042人の参加者のうち、6,033人が分析された。
★平均年齢:64.0歳
★女性:2,414人[39.9%]
★平均糖化ヘモグロビン:7.2%
★糖尿病の罹患期間:6.3年(中央値)
★大血管疾患の既往:42%
★メトホルミン単独療法:59%
★追跡期間の中央値は6.3年
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・主要アウトカムは、リナグリプチン群3,023人中356人(11.8%)、グリメピリド群3,010人中362人(12.0%)であった。
★HR =0.98 [95.47%CI 0.84〜1.14]; 非劣性の場合 P <0.001
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・非劣性基準を満たしたが、優位性は満たしていなかった(P = 0.76)。
・有害事象はリナグリプチン群で2,822人(93.4%)、グリメピリド群で2,856(94.9%)発生し、急性膵炎においてはリナグリプチン群で15人(0.5%)、グリメピリド群で16人(0.5%)だった。
・有害事象としての少なくとも1回の低血糖エピソードは、リナグリプチン群で320(10.6%)、グリメピリド群で1,132(37.7%)で発生した。
★HR =0.23 [95%CI 0.21〜0.26]
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【結果と関連性】
比較的早期の2型糖尿病かつ心血管リスクが高い成人では、中央値6.3年にわたってリナグリプチンを使用すると、グリメピリドと比較して、複合心血管アウトカムの非劣性リスクが生じた。
【コメント】
アブストのみ。
グリメピリドをはじめとするSU薬は、用量依存的に低血糖リスクおよび心血管リスクを増加させることが過去に示唆されている。したがって、プラセボではなくグリメピリドとの非劣性を証明する意義はあまりない(先に発表されたCARMELINAはプラセボ対照試験)。
また近年、SU薬は低用量で用いられることが多く、本試験のように4mgまで使用するケースは少ない。さらにSU薬のクラス内比較において、あくまで仮説生成ではあるが、グリクラジド(グリミクロン®️)が最も低血糖リスクおよび死亡リスクが低かった。
つまり心血管イベントあるいは死亡リスクを増やしているかもしれない治療との非劣性試験。
正直、謎の試験である。
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