アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)により発がんリスクは増えますか?(SR&MA; European Journal of Internal Medicine 2019)
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2019.05.13
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Systematic review and meta-analysis of randomised controlled clinical trial evidence refutes relationship between pharmacotherapy with angiotensin-receptor blockers and an increased risk of cancer
Datzmann T et al.
European Journal of Internal Medicine
【研究の目的】
発癌に対するアンギオテンシン受容体遮断薬(ARB)の潜在的な影響は、非常に議論されているトピックである。
観察的研究ならびにげっ歯類を用いた発がん性アッセイにおける前臨床研究の両方において、癌発生におけるレニン – アンジオテンシン – アルドステロン系(RAAS)の主要な役割を示唆している。
そのため、ARBおよび発がん性に関する入手可能な試験データを主な結果として系統的レビューおよびメタアナリシスを実施した。 副次的アウトカムは、腫瘍特異的死亡率および肺がん、乳がん、および前立腺がんに特に重点を置いた特定の腫瘍型の新規症例の頻度として定義された。
【方法】
系統的な文献調査がMEDLINE、EMBASE、Cochrane Library、およびTOXLINEで行われました。 MeSHの用語、キーワード、ARBの物質名の組み合わせを使用し、1950年から2016年の間に検索した。研究を含めるには、各研究群で少なくとも100人の参加者と1年間の最小追跡調査が必要であった。 オッズ比(OR)は変量効果モデルによって計算した。
【結果】
・合計8,818件の潜在的に適格な出版物が同定され、そのうち7つのランダム化比較試験、4つのケースコントロール研究、および1つのコホート研究が選択基準を満たしていた。
・重要な結果として、ARBの使用に関するランダム化対照試験では発がん性への影響は見られなかった。
OR =1.02, 95%CI 0.87〜1.19; p = 0.803
・観察研究と矛盾する結果は、不十分な報告および研究の質によって説明される可能性がある。
【結論】
高い証拠レベルと研究デザイン(RCT)のみに焦点を当てた我々のメタアナリシスの結果は、ARBによる薬物療法と一般的な癌のリスク増加との間のいかなる関係も明らかにしなかった。
【ハイライト】
•アンジオテンシン受容体拮抗薬と新たに発症したがん症例に関する系統的レビューとメタ分析。
•新しい癌の発生頻度の偏りのない評価。
•アンジオテンシン受容体拮抗薬と癌の発生との間に関係はなかった。
【コメント】
アブストのみ。
メタ解析にはランダム化比較試験が7件含まれており,これは全体の58.33%を占めている。
暴露による害の影響を検討する場合,症例対照研究や観察研究が適している。この理由としては観察期間やコスト、サンプルサイズ、稀な害の検出などが挙げられる。
一方、ランダム化比較試験は他の研究デザインと比較して観察期間が短いことが大半であるため、今回のように発症までに長期間を要す発がんリスクを検討するには、やや不向きであると考えられる。しかしだからといってランダム化比較試験を解析に含めるメリットがないわけではない。
一言に “がん(ここでの意味は悪性新生物や悪性腫瘍)” といっても、発症までには多因子が関係する。なかでも発がんイニシエーターや発がんプロモーターには、実に多くの可能性因子が報告されており、一つ一つを検討するのは些か困難である。
ランダム化比較試験の最大のメリットは “未知を含めた交絡因子の排除” である。この点を考慮すると本試験の解析は益があるのかもしれない。
さて、本検討結果ではARB使用と発がんリスクとの関連性は認められなかった。ARBに限らず降圧薬と発がんリスクの可能性については以前から報告がある。なかでも影響がないとする研究数は少ないように思われる(定量的ではなく定性的にです)。またリスク増加は個人的にそこまで大きくない印象。
続報を待ちたい。]]>
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