背景
前回、陽性的中率・陰性的中率について解説しました。今回は “尤度比” について解説します。
尤度比って何?
尤度比(Likelihood Ratio, LR)とは、
ある疾患のなりやすさや起こりやすさ、つまり 尤(もっと)もらしさを表す指標
の一つです。
ちなみに陽性尤度比が高いと “検査をする価値が高い“ つまり検査した方が良いことになります。詳細については次回以降に解説します。
尤度比にも陽性と陰性がある?
確率である尤度(なりやすさ、起こりやすさ)は、比率として0~1で表されることが多いです。 検査結果が陽性の場合を
陽性尤度比(Positive Likelihood Ratio, +LR)、
陰性の場合を
陰性尤度比(Negative Likelihood Ratio, -LR)
と呼びます。
陽性尤度比は、 感度/(1-特異度)、
陰性尤度比は、 (1-感度)/特異度
で算出します。
つまり陽性尤度比は、”疾患ありの人が検査陽性となる確率” を “疾患のない人が検査陽性(偽陽性)となる確率” で割ったのものです。
一方、陰性尤度比は、”疾患ありの人が検査陰性(偽陰性)となる確率” を “疾患のない人が検査陰性となる確率” で割ったのものです。
それぞれの値を算出するために、前回同様に表1を使用します。
疾患あり | 疾患なし | 合計 | |
検査で陽性判定 | 105 | 45 | 150 |
検査で陰性判定 | 55 | 105 | 160 |
合計 | 160 | 150 | 310 |
表1. ある検査で陽性あるいは陰性と判定された人数
陽性尤度比 =(105/160)/(1-105/150)=2.1875
陰性尤度比 = (1-105/160)/(105/150)=0.49107…
まとめ
尤度比は、感度・特異度から算出しているため、疾患の頻度や有病率とは関係しない値。
そして、より臨床現場に近い診断を行うため尤度比を活用するためには、事前オッズ・事後オッズが必要となります。
簡単に説明すると、今、目の前の患者が仮にインフルエンザである確率はどのくらいなのか?という見立てが事前オッズです。そして事前オッズに尤度比を乗じることで事後オッズが算出できます。
次回はいよいよインフルエンザ検査の曖昧さについて明らかにしていきます。
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