その司令は突然に,,,
今回は罰ゲームないらしい。
安心したところで早速、書籍を紹介していきます!
1冊目:高齢者のための高血圧診療
名郷直樹 先生と岩田健太郎 先生がタッグを組んで生み出された名著。個人的には今までで一番の名著です。
タイトルからは一見「高齢者の高血圧診療」という限られた範囲のテーマであるように思われますが、中身はより広範囲に応用できる “考え方” をテーマとしています。
特に印象的なのが17章 対談(世の中編)です。論文をはじめとする “情報に潜むバイアス”、解釈の注意点、そして、これらは各個人が持つルサンチマン*により多様化していることに言及しています。
エビデンスが提示しているのは事実にすぎません。その事実をどのように解釈し、目の前の患者に適用していくのか、その解釈に潜む自身の抱えるルサンチマンや恣意性を自覚することが肝要なのではないでしょうか。
本書を読むことで改めて自身と向き合えるのではないかと思います。
*ルサンチマン(ressentiment):広義には弱者が強者に対して抱く「恨み」や「嫉妬心」のこと。狭義では強者に対し仕返しの念を抱き “うっけつ” してしまう弱者の心。
2冊目:世界は贈与でできている
本書は “お金で買えないもの及びその移動” = “贈与“をテーマに、世界の成り立ちを再考しています。
ヒトはついつい「仕事のやりがい」や「生きる意味」、「生まれてきた意味」を考えがちです。そうした “意味を持たせたい世界” の構造を贈与で読み解いています。
どうすれば我々は幸福を得られるのか?もしかしたら、すでに幸福なのではないか?
本書を読むことで普段、如何に我々が意識せずに受け取っている “モノ” が多いのかに気がつけると思います。そして、それらのモノは誰かから意図せず受け取ったものであることを認識できます。そうすることで、「仕事のやりがい」、「生きる意味」、「生まれてきた意味」について捉えられると思います。
3冊目:1日1論文、30日で、薬剤師としてレベルアップ! 医学論文の活かし方
何となくとっつきづらい英語論文を、本書は日本語で紹介しています。また1つの論文に対して、複数の解釈を記載しています。
論文だけに限った話ではありませんが、情報は(真偽の程は定かではないにせよ)1つの事実を示しています。しかし、その事実の解釈は多種多様であり、はたして自身の解釈が合っているのか、概ね正しいのかなど、自信を持てないときがあると思います。また、そもそも論文をどう読んで、どう解釈すれば良いのかわからない場合もあると思います。
本書を読むことで、論文の読み解き方を理解できるようになると思います。何より論文だけでなく情報解釈の仕方の参考になるのではないかと思います。そして正解は1つではない、正解なんてない、ことが少しでも伝われば良いなと願っています。
コロナ禍でオンラインミーティング、オンライン学会の開催がますます推進されていますが、個人的には、論文抄読会であれ学会であれ、会場のあの “独特な雰囲気” が好きです。同じように思う方はある程度いるのではないでしょうか。つまり、オンライン抄読会よりもリアルワールド抄読会の方が好きということです。
とはいえ、やはりコロナ禍でリアルワールド抄読会を実施することは困難です。
では、なぜオンライン抄読会よりもリアルワールド抄読会を好むのでしょうか?これはオンライン抄読会が、相手の顔は見えても相手の思考は読めない(リアルワールドより読み取りづらい)と感じるためではないかと個人的に考察しています。
そして思考が読めない、読み取りづらいのは、オンラインに言語化の制限がかけられているためではないかと考えています。
本書がその言語化の制限を取り払い、オンライン抄読会への招待状になれば良いなと思っています。
まとめ
今回の3冊はいかがだったでしょうか。
個人的には、これら3冊がニュータイプ、ニューノーマルと呼ばれる多様性に富んだ世代の “薬剤師像” を形作る一助になるのではないかと期待しています。
多様性(ダイバーシティ)という言葉は、ここ10年ほど使われているように思いますが、みんな違って、みんな良い、という世界を意味していないように思います。どこかでルサンチマンや分かり合えないことへの諦めが潜んでいるように思います。
そして、多様性について議論しているとき、最早そこには多様性が失われています。ではどうすれば多様性が多様性たりえるのか、そのはじめの一歩として、個々人が有するルサンチマン、嗜好などといったことを捉えるための自己分析を行うことが、本当の意味で思考するための入り口になるのではないかと考えます。
今回の3冊を読むことで、朧げにでも、それらの “偏見” を自己目的的に捉えてみてはどうでしょうか。
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