Systematic review with network meta-analysis: comparative effectiveness and safety of strategies for preventing NSAID-associated gastrointestinal toxicity
J Q Yuan et al.
Aliment Pharmacol Ther. 2016 Jun;43(12):1262-75. doi: 10.1111/apt.13642. Epub 2016 Apr 28.
PMID: 27121479
DOI: 10.1111/apt.13642
背景
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)に関連した胃腸毒性を予防するために多くの戦略が用いられているが、その比較有効性は不明のままである。
目的
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)に起因する消化管毒性を予防するための臨床戦略の比較有効性を評価する。
方法
MEDLINE, EMBASE, Coch. MEDLINE、EMBASEおよびコクランライブラリー(開始から2015年5月まで)で、非選択的NSAIDs、選択的シクロオキシゲナーゼ(COX)-2阻害薬、または非選択的NSAIDs/COX-2阻害薬と胃腸保護薬(プロトンポンプ阻害薬(PPI)、ヒスタミン-2受容体拮抗薬、ミソプロストール)を服用している患者における胃腸有害事象のリスクを比較したランダム化比較試験を検索した。
ペアワイズメタアナリシスおよびベイズネットワークメタアナリシスを実施した。
結果
・解析は、参加者125,053例を含む82試験に基づいて行われた。
・ネットワークメタアナリシスにおいて、以下の戦略は非選択的NSAIDsと比較して臨床消化管イベントのリスクが有意に低いことと関連していた。
リスク比(RR)、95%信頼区間(CI)
選択的COX-2阻害薬+PPI :潰瘍合併症 0.07、0.02~0.18
選択的COX-2阻害薬 :潰瘍合併症 0.25、0.15~0.38
症候性潰瘍 0.12、0.04~0.30
非選択的NSAIDs+PPI :潰瘍合併症 0.28、0.18~0.41
症候性潰瘍 0.11、0.04〜0.23
非選択的NSAIDs+ミソプロストール:潰瘍合併症 0.47、0.24〜0.81
症候性潰瘍 0.41、0.13〜1.00
・すべての有効性評価項目について、選択的COX-2阻害薬+PPIは、絶対イベント確率が最も低く、最も高いランクと関連しており、次いで選択的COX-2阻害薬、3番目に非選択的NSAIDs+PPIとなっていた。
結論
選択的COX-2阻害薬+PPIの併用は、最高の消化管保護を提供し、次いで選択的COX-2阻害薬、3番目に非選択的NSAIDs+PPIが続く。
コメント
消炎・鎮痛剤であるNSAIDは、しばしば消化管出血や消化性潰瘍などの消化管毒性を引き起こします。
シクロオキシゲナーゼ(Cyclooxygenase, COX)はアラキドン酸をプロスタノイドに代謝する酵素です。プロスタノイドにはプロスタグランジンやトロンボキサンなどのアラキドン酸代謝物が含まれています。COXには3つのアイソザイムがあり、それぞれCOX-1、COX-2、及びCOX-3と呼ばれています。
COX-2はサイトカインや増殖因子などの刺激により発現が誘導されることが知られています。COX-2選択的阻害薬は、恒常的に消化管に発現しているCOX-1を阻害する作用が弱いため、消化管粘膜への影響が少ないと考えられます。
さて、本試験結果によれば、選択的COX-2阻害薬+PPIは、非選択的NSAIDsと比較して臨床消化管イベントのリスクが有意に低いことと関連していました。次いで選択的COX-2阻害薬、3番目に非選択的NSAIDs+PPIによるリスク低下が示されました。
作用機序からすれば当然の結果ですが、重要な結果であると考えます。個人的には、選択的COX-2阻害薬+PPIを使用する患者背景が推測しづらかったです。どのような患者に使用するのか、他の文献にも当たってみようと思います。
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