Randomized trials of invasive cardiovascular interventions that include a placebo control: a systematic review and meta-analysis
Lucas Lauder et al.
Eur Heart J. 2020 Jul 14;41(27):2556-2569. doi: 10.1093/eurheartj/ehaa495.
PMID: 32666097
PMCID: PMC7360382 (available on 2021-07-14)
DOI: 10.1093/eurheartj/ehaa495
Keywords: Heart failure; Percutaneous coronary intervention; Renal denervation; Sham-controlled trials.
目的
プラセボ対照と比較した侵襲的心血管インターベンションの有益性の差は、これまで体系的に分析されていない。
方法
MEDLINEおよびWeb of Scienceを2020年3月29日まで検索した。事前に定義された主要アウトカムを調査した侵襲的心血管系インターベンション(カテーテルを用いたインターベンションやペースメーカー様デバイスを含む)のランダム化プラセボ対照試験が含まれた。
連続および二分法アウトカムについて、それぞれ標準化平均差(SMD)とオッズ比を算出した。治療効果の推定値が試験の方法論的特徴と関連しているかどうかを評価するためにメタ回帰分析を行った。
結果
・患者4,102例を含む30試験を分析した。
・全体的なバイアスリスクは試験の43%のみで低いと判断された。試験10件(33%)では、事前に定義されたそれぞれの主要アウトカムに対して、プラセボ対照に対する侵襲的介入の統計学的に有意な優越性が示された。
・連続的な定義済みの主要アウトカムを調査した試験16件のほぼ半数では、実薬とプラセボ間のSMDは、プラセボに対する実薬の治療効果が小さい(n = 4)〜中等度(n = 3)であることを示していた。対照的に、試験1件では、プラセボの治療効果が小さいことが示された。
・残りの試験では、プラセボを上回る積極的治療の治療効果は認められなかった。共同介入を安定的かつ対称的に使用することがプロトコールで義務付けられている試験では、共同介入を頻繁にまたは不均衡に変更した試験と比較して、積極的治療と侵襲的なプラセボの優越性が有意に大きかった(相互作用のP=0.027)。
結論
プラセボ対照と比較した侵襲的心血管系インターベンションの追加治療効果は、ほとんどの試験で小さかった。
コメント
循環器内科では、科学技術の進歩により、心血管疾患による死亡者数が大幅に減少していることが報告されています。しかし、侵襲的な心血管インターベンションの有効性と安全性を検討した試験では、プラセボ対照試験はわずか数件しか実施されていないようです(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29786535/)。
プラセボ薬とは対照的に、プラセボ手術(placebo procedure, sham operationとも表現)は侵襲的であり、有害事象の即時リスクや患者に潜在的な利益をもたらさずに潜在的な害をもたらす手術を行うことへの倫理的な懸念など、より複雑性が高いと考えられています。
近年、医療機器の安全性と有効性の問題がクローズアップされているため、米国食品医薬品局(FDA)は、倫理的にも実行可能な場合には、プラセボ対照試験のデザインを求めているようです。
さて、本試験結果によれば、対象となった試験30件のうち10件(33%)において、プラセボ対照に対する侵襲的インターベンションの優越性が示されました。
ただし、いずれの試験においても、介入による治療効果が小さい可能性が示唆されています。とはいえ、侵襲的な心血管インターベンションが必要となる患者集団がいることは疑う余地もありません。今後は、どのような患者集団で治療効果が害を上回るのか、どの程度の害があるのか、治療をした場合としなかった場合に得られる追加利益の程度はどのくらいなのか、について数値で示し、患者と相談して満足度の高い選択をできるようにすることが課題なのではないでしょうか。
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