Risk and Risk Factors Associated With Recurrent Venous Thromboembolism Following Surgery in Patients With History of Venous Thromboembolism
Banne Nemeth et al.
JAMA Netw Open. 2019 May 3;2(5):e193690. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2019.3690.
PMID: 31074822
PMCID: PMC6512304
DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2019.3690
キーポイント
臨床疑問
再発静脈血栓塞栓症(VTE)の既往歴のある患者における手術後のVTEリスクはどのようなものか?
所見
この縦断的追跡調査コホート研究では、VTEの既往歴のある患者3,741例が再発の有無を評価され、15.5%が手術を受けた。
VTEの累積再発率は、1ヵ月目で2.1%、3ヵ月目で3.3%、6ヵ月目で4.6%であった。
手術の種類(例えば、がん関連の手術)に加えて、男性および第V因子ライデン変異が再発リスクの高さと関連していた。
試験実施の意義
手術を受けたVTE既往歴のある患者は再発リスクが高い可能性があり、これらの患者に対する現在の血栓予防戦略に疑問を呈する所見である。
抄録
重要性
VTE既往歴のある患者における手術後の再発静脈血栓塞栓症(VTE)リスクの大きさはあまり知られていない。
目的
VTEの既往歴のある手術を受けた患者におけるVTEの再発リスクを推定し、再発に関連する因子を同定すること。
試験デザイン、設定、および参加者
この集団ベースの追跡調査コホート研究には、MEGA(Multiple Environment and Genetic Assessment)研究に参加したVTE患者が含まれている。
当初のデータは1999年3月から2010年4月まで収集された。データ解析は1999年6月に開始され、2010年4月に終了した。
曝露
初発VTE後に手術を受けた患者。
主要アウトカムと測定法
Kaplan-Meier解析を用いて、再発VTEの累積発生率を推定した。
時間依存性共変量(手術)を用いたCox回帰を用いて、手術を受けなかった場合と比較して、手術後のVTE再発のハザード比(HR)を算出した。
結果
・全体として、VTE既往歴のある患者3,741例(平均年齢[SD] 48.4[12.8]歳、女性2,020例[54.0])が解析対象となり、18,899人・年、追跡期間中央値(四分位間範囲)は5.7年(3.0~7.2年)であった。
・3,741例のうち、580例(15.5%)が手術を受け、601例(16.1%)が血栓性イベントを再発した。
・すべての手術タイプにおける1ヵ月間の累積再発VTE発生率は2.1%(95%CI 1.2%~3.6%)であり、3ヵ月目には3.3%(95%CI 2.1%~5.1%)、6ヵ月目には4.6%(95%CI 3.1%~6.6%)に増加した。
・6ヵ月後のVTE再発リスクは、手術の種類によって2.3%~9.3%の範囲であった。手術の種類に加えて、第V因子ライデン変異(HR =3.4、95%CI 1.6〜7.4)および男性(HR =2.7、95%CI 1.3〜5.8)がVTE再発リスクの増加と関連していた。
結論と関連性
手術は、VTE既往歴のある患者におけるVTEの再発リスクの増加と関連していた。リスクは手術後6ヵ月まで高いままであった。
本研究は、手術の種類、性別、第V因子ライデン変異の有無に基づいて高リスク者を特定できる可能性を示唆している。
これらの所見は、これらの患者の再発を予防するために、現在の血栓予防法を見直す必要性を強調している。
コメント
再発静脈血栓塞栓症(VTE)の既往歴のある患者では、その再発リスクについては、あまり報告がありません。今回の研究は、大規模な症例対照研究であるMEGA studyの追跡コホートです。
さて、本試験結果によれば、VTE既往を有する患者3,741例のコホートにおける血栓性イベントの再発率は16.1%でした。再発リスクは術後6ヵ月まで認められたようです。さらに、手術内容、性別、第V因子ライデン変異が、リスク増加因子でした。
そもそもFV Leiden変異とは?
1993年Dahlbäckらが、原因不明の血栓症患者の血漿検体に、過剰の活性化プロテインC(activated protein C, APC)を加えても、活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time, APTT)の軽度延長しかみられない現象を発見し、APCの反応性に抵抗性を示す表現型として、APCレジスタンス(APC Resistance, APCR)という疾患概念を提唱しました。
またBertinaらは、APCRの原因が第V因子のAPCによる主要な開裂部位のArg506がGlnに置換した凝固第V因子異常分子の凝固第V因子ライデン変異であることを解明しました。凝固第V因子ライデンは凝固活性をもつが、APCによる活性型凝固第V因子(FVa)の不活性化が阻害されるため、トロンビン産生が抑制されず血栓症を発症すると考えられています。
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このFV Leiden変異は白人で多いようです。一方、日本では、小児の症例報告があるものの、変異は一般的ではないようです。遺伝子変異が関与するのであれば、日本人を対象としたリスク因子の同定が必要となります。
今後の研究結果に期待。
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