A Randomized Trial of Long-Term Oxygen for COPD With Moderate Desaturation
Long-Term Oxygen Treatment Trial Research Group et al.
N Engl J Med. 2016.
PMID: 27783918
PMCID: PMC5216457
Funded by the National Heart, Lung, and Blood Institute and the Centers for Medicare and Medicaid Services
ClinicalTrials.gov number, NCT00692198 .
背景
安定した慢性閉塞性肺疾患(COPD)および安静時または運動誘発性の中等度脱飽和度を有する患者において、補助酸素による長期治療は効果が不明である。
方法
我々は当初、中等度の安静時脱飽和度(パルスオキシメトリ[Spo2]で測定したオキシヘモグロビン飽和度 89~93%)を有する安定型慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、補助酸素を長期投与した場合、補助酸素を投与しない場合に比べて死亡までの期間が長くなるかどうかを検証するためにこの試験を設計した。
7ヵ月後、患者34例をランダムに割り付けた後、本試験は、中等度の運動誘発性脱飽和度(6分間の歩行試験で、Spo2が5分以上80%以上、10秒以上90%未満)を有する安定したCOPD患者も含めるように再設計され、何らかの原因で最初に入院するまでの時間を新しい複合主要アウトカムに組み込んだ。
患者は1対1の割合でランダムに長期補充酸素投与群(補充酸素群)と長期補充酸素なし群(補充酸素なし群)に割り付けられた。
補充酸素群では、安静時脱飽和度の高い患者には24時間酸素が、運動時のみ脱飽和度の高い患者には運動時および睡眠時の酸素が処方された。
試験群の割り付けはマスキングされていなかった。
結果
・42施設の合計738例の患者が1~6年間追跡された。
・時間-事象間解析では、死亡または初回入院までの時間において、酸素補充群と酸素補充なし群との間に有意差は認められなかった。
★ハザード比 =0.94、95%信頼区間[CI] 0.79~1.12;P=0.52
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・すべての入院の発生率(率比 =1.01、95%CI 0.91~1.13)、COPD増悪(率比 =1.08;95%CI、0.98~1.19)、およびCOPD関連入院(率比 =0.99、95%CI、0.83~1.17)においても、群間に一貫した差は認められなかった。
・生活の質、肺機能、6分での歩行距離の測定において、グループ間での一貫した差は認められなかった。
結論
安定したCOPD患者で、安静時または運動誘発性の中等度脱飽和度を有する患者において、長期補充酸素の処方は、長期補充酸素を投与しない場合に比べて死亡までの時間や最初の入院までの時間が長くなることはなく、その他の測定されたアウトカムに関しても持続的な有益性をもたらすことはなかった。
コメント
酸素飽和度が低下したCOPD患者において、しばしば酸素投与が行われています。しかし、患者と話していると「酸素吸入していると、なんとなく良いような気がする。う〜ん、楽なのかもしれないな」と言う方が多い印象です(あくまでも個人的な印象です)。酸素飽和度が低下したCOPD患者に対して、酸素投与は本当に効果があるのでしょうか?そんな疑問に答えを出せるかもしれない論文をご紹介します。
さて、本試験結果により、COPD患者の死亡または初回入院までの時間において、酸素補充群と酸素補充なし群との間に有意差は認められませんでした。また、すべての入院発生率、COPD関連入院、生活の質、肺機能、6分での歩行距離の測定において、グループ間での一貫した差は認められませんでした。
ただし、本試験の限界としては、小規模、オープンラベル、アウトカムの変更による検出力不足の可能性、ハードとソフトアウトカムの複合、が考えられます。
内的妥当性はそこまで高くないため、結果を割り引いて捉えておいた方が良いと思います。また複合アウトカム(死亡または初回入院までの時間)のハザード比は0.94、95%信頼区間は0.79~1.12ですので、恩恵を受けられる患者もいるかもしれません。ここの部分はなかなか理解が難しいかもしれませんが、「有意差がない イコール 効果がない」ではないからです。
個人的には、酸素吸入が誰に必要かを考えさせられる研究結果であると捉えています。
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