個人的に気になり文献3報を読んだ。
個人的見解は次の通り;
慢性骨髄性白血病の治療において,少なくとも2年間の服薬アドヒアランス維持、特に90%以上のアドヒアランス維持は重要である。なぜなら服薬アドヒアランスが高いことと分子遺伝的完全寛解(complete molecular response, CMR)とは相関関係にあり、CMRを2年間保った患者では、グリベック®️やスプリセル®️、タシグナ®️などのチロシンキナーゼ阻害薬(Bcr-abl阻害がメイン)を中止しても再発が少ない。つまり薬剤服用を完全に中止できる可能性があるのだ。
しかし現段階において、永続的な無治療寛解(treatment-free remission, TFR)を維持できる可能性が示唆されているのはグリベック®️だけのようである。今後の研究報告に期待したい。特にスプリセルはよ。
文献1:Discontinuation of Tyrosine Kinase Inhibitors in Chronic Myeloid Leukemia With Losing Major Molecular Response as a Definition for Molecular Relapse: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Chen KK et al.
Front Oncol. 2019 May 14;9:372.
doi: 10.3389/fonc.2019.00372. eCollection 2019.
PMID: 31139566
【背景】
安定した深い分子学的寛解状態(Deep Molecular Response, DMR)を有する患者の慢性骨髄性白血病(CML)治療における新しい目標は、チロシンキナーゼ阻害剤(Tyrosine Kinase Inhibitor, TKI)治療を中止した後、永続的な無治療寛解(treatment-free remission, TFR)を維持することである。
【方法】
TKI中止の有効性と安全性に焦点を当てた体系的レビューとメタ分析を実施した。またTFRの成功に寄与する要因も調査した。
【結果】
・文献検索により、1,601人の患者を含む10件の試験が組み入れられた。TKIを中止した患者の場合、主要な分子再発の推定加重平均発生率は中止3ヶ月後 16%(95%CI 11〜21)、6ヶ月後 34%(95%CI:29-38)、12ヶ月後39%(95%CI:35〜43)、24ヶ月後 41%(95%CI:36〜47)だった。
・これらのうち、分子損失の39、82、および95%は、最初の3、6、および12か月以内に発生した。
・安全性分析では、TFRのない患者では、98%(95%CI:96〜100)がTKI再治療に反応性を示した。
・初期のTFRフェーズ中に出現したTKI離脱症候群を除き、新たな安全性の問題は特定されず、加重平均発生率は27%(95%CI 19〜35)でした。
・サブグループ分析では、インターフェロン療法に関連するTFRの改善(P = 0.007)、分子反応の深さ(P = 0.018)、DMRの持続時間(P <0.001)が示唆された。
【結論】
CMLの管理を最適化するアプローチ延長としてのTFRは、十分なTKI応答を有する患者の約59%で臨床的に実行可能である。
残りの分子再発患者41%では、TKIの中止は臨床転帰に負の影響を与えなかった。
研究間の高い不均一性を考えると、TFRを成功させるためのこれらの予測因子の役割は、さらに調査する必要がある。
文献2:Discontinuation of imatinib in patients with chronic myeloid leukaemia who have maintained complete molecular remission for at least 2 years: the prospective, multicentre Stop Imatinib (STIM) trial.
Mahon FX et al.
Lancet Oncol. 2010 Nov;11(11):1029-35.
doi: 10.1016/S1470-2045(10)70233-3. Epub 2010 Oct 19.
PMID: 20965785
本研究はClinicalTrials.gov, No. NCT00478985に登録されている。
【背景】
イマチニブ治療は、慢性骨髄性白血病(CML)患者の生存率を大幅に改善するが、長期的に治療を安全に中止できるかどうかについてはほとんど知られていない。イマチニブ投与中に分子遺伝的完全寛解(complete molecular response, CMR)を示す患者において、分子再発を起こさずにイマチニブを中止できるかどうかを評価することを目的とした。
【方法】
前向きの多施設ランダム化イマチニブ(the prospective, multicentre Stop Imatinib, STIM)試験では、18歳以上のCML患者およびCMR(> 5 logのBCR- ABLおよびABLレベルと定量的RT-PCRで検出できない転写産物)患者が組み入れられた。
免疫調節治療(インターフェロンαを除く)、他の悪性腫瘍の治療、または同種造血幹細胞移植を受けた患者は含まれなかった。
フランス参加機関の19施設に登録された患者が対象となった。
本中間分析では、少なくとも12ヶ月の追跡調査を行った患者のRT-PCRを使用して、再発率を評価した。
イマチニブは、分子再発した患者に再導入された。
【調査結果】
・2007年7月9日から2009年12月17日までの間に100人の患者が登録された。
・追跡期間の中央値は17ヶ月(範囲1〜30)で、69人の患者は少なくとも12ヶ月だった。
・これら69人の患者のうち42人(61%)が再発した(6ヶ月目に40人、7ヶ月目に1人、19ヶ月目に1人)。
・12ヶ月時点で、これら69人の患者の持続的なCMRの確率は41%(95%CI 29〜52)だった。
・再発したすべての患者はイマチニブの再導入に反応した。
・再発した42人の患者のうち16人がBCR-ABLレベルの減少を示し、26人がイマチニブ再チャレンジ後に持続したCMRを達成した。
【結果の解釈】
イマチニブは、少なくとも2年間のCMRを有する患者では安全に中止することができる。
本設定でのイマチニブの中止により、分子再発のない生存における有望な結果が得られ、少なくとも一部の患者では、CMLがチロシンキナーゼ阻害剤で治癒する可能性が高まる。
Adherence is the critical factor for achieving molecular responses in patients with chronic myeloid leukemia who achieve complete cytogenetic responses on imatinib.
Marin D et al.
J Clin Oncol. 2010 May 10;28(14):2381-8.
doi: 10.1200/JCO.2009.26.3087. Epub 2010 Apr 12.
PMID: 20385986
【目的】
慢性骨髄性白血病(CML)患者のイマチニブ療法で達成される分子反応のレベルにはかなりのばらつきがある。これらの違いは、さまざまな治療順守(服薬コンプライアンスあるいはアドヒアランス)から生じる可能性がある。
【方法】
完全な細胞遺伝学的反応を達成した中央値59.7ヶ月(範囲 25〜104カ月)でイマチニブ400 mg / dで治療された慢性期CMLの患者87人では、3ヶ月間マイクロエレクトロニックモニタリング端末を使用してアドヒアランスをモニターした。
服薬遵守は分子反応レベルと相関していた。結果に影響を与える可能性のある他の要因も分析した。
【結果】
・遵守率の中央値は98%(範囲24%〜104%)だった。
・患者23人(26.4%)の遵守率は90%以下だった。これらの患者のうち12人(14%)で、アドヒアランスは80%以下だった。
・BCR-ABL1転写産物の遵守率(<または= 90%または> 90%)と3-log減少の6年確率(主要分子応答[MMR]とも呼ばれます)との間(28.4% vs. 94.5%; P <0.001)および完全な分子応答(CMR; 0% vs. 43.8%; P = 0.002)との間に強い相関が認められた。
・多変量解析により、MMRの唯一の独立した予測因子として、アドヒアランス(相対リスク[RR] =11.7; P = 0.001)および分子ヒト有機カチオン輸送体-1(RR =1.79; P = 0.038)の発現が特定された。
・服薬遵守は、CMRの唯一の独立した予測因子だった。アドヒアランスが80%以下(P <0.001)の場合、分子応答は観察されなかった。
・イマチニブの投与量を増やした患者のアドヒアランスは不良だった(86.4%)。
・この後者の集団では、MMRを達成できないという唯一の独立した予測因子がアドヒアランスだった(RR =17.66; P = 0.006)。
【結論】
イマチニブで数年間治療されたCML患者では、適切な分子反応が得られない主な理由は、アドヒアランスが低いことである。
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