歩数は「どのように歩くか」で変わる?|1日の歩き方と死亡・心血管リスクの関連(コホート研究; Ann Intern Med. 2025)

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歩数と歩き方が予後に影響する?

「1日8,000歩を目標にしましょう」といった健康指導は広く知られています。
しかし、同じ歩数でも「歩き方」や「歩行のまとまり方(バウト)」によって健康効果が異なる可能性があることが、近年の研究で注目されています。

今回紹介する論文は、英国バイオバンク(UK Biobank)の大規模データを用いて、
「1日の歩数が8,000歩未満の人」において、歩行のまとまり方(短時間 vs 長時間)が死亡率・心血管疾患(CVD)リスクに与える影響を検討した前向きコホート研究です。


試験結果から明らかになったことは?

◆研究の背景

これまでの多くの研究は「1日の総歩数」と健康指標との関連を分析してきました。
一方で、歩数をどのように積み上げているか(例:こま切れに歩く vs. まとまって歩く)は十分に検討されていません。

近年、活動量計データの普及により、歩行を「バウト(bout)」という単位――つまり「連続して歩いている時間」で解析する研究が増えています。
今回の研究では、1回の歩行時間が長いほど健康効果が高いかを明らかにすることを目的としました。


◆研究概要

項目内容
研究デザイン前向きコホート研究(UK Biobank)
対象者33,560名(平均年齢 62.0歳、SD 7.7歳)
・1日8,000歩以下の身体活動レベル
・心血管疾患およびがん既往なし
観察期間平均 7.9年(266,283人年)
歩行分類「最も多く歩いた時間帯の長さ」に基づき4群に分類:
① <5分
② 5〜<10分
③ 10〜<15分
④ ≥15分
活動レベル<5,000歩=座位的(sedentary)
5,000〜7,999歩=低活動(low-active)
評価項目主評価:全死亡(all-cause mortality)
副評価:心血管疾患(CVD)発症
解析方法逆確率重み付け(IPW)により共変量を調整

◆試験結果

バウト長全死亡率(9.5年時点, %)CVD発症率(9.5年時点, %)
<5分4.36 (95%CI 3.52–5.19)13.03 (11.92–14.14)
5〜<10分1.83 (1.29–2.36)11.09 (9.88–12.29)
10〜<15分0.84 (0.13–1.53)7.71 (5.67–9.70)
≥15分0.80 (0.00–1.89)4.39 (1.89–6.83)

歩行バウトが長いほど、死亡率・CVD発症率は低下。
特に15分以上連続して歩く習慣をもつ人では、短時間の歩行しかしていない人に比べて、死亡率が約5分の1、CVD発症率も約1/3にまで減少しました。


◆結果の解釈

本研究の結果は、単なる「総歩数」ではなく、歩行の質(まとまり)が健康アウトカムに影響することを示しています。

  • 短い断続的な歩行(<5分):歩数を稼いでも有意なリスク低減は小さい。
  • 10分以上の連続歩行:呼吸循環の負荷が一定時間続くことで、血圧・血糖・脂質代謝に好影響を与える可能性。
  • 15分以上のバウト:死亡率・CVD発症ともに最も低く、持続的運動の効果が顕著。

これらの傾向は「まとまった運動が生理学的に有効である」という従来の知見と整合的です。


◆試験の限界

  • 観察研究であり、因果関係は確定できない。
  • 身体活動は1回のみ測定されており、経時的な変化は反映されていない。
  • 逆因果(健康状態が悪いため短時間しか歩けない)の可能性を完全には除外できない。
  • 活動量計の着用方法やデータ欠損により、一部の歩行データが過小評価されている可能性あり。

◆今後の展望

  • ランダム化介入試験(RCT)による検証が必要。
  • 1日の歩数×歩行バウトの最適組み合わせを明らかにする研究が求められる。
  • 高齢者や慢性疾患患者における安全で持続可能な運動パターンの確立も課題。

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◆まとめ

本研究は「1日8,000歩未満でも、歩き方次第で健康効果が変わる」ことを明らかにしました。

  • 歩数が少なくても、10〜15分以上のまとまった歩行を取り入れることで、死亡・CVDリスクを低減できる可能性。
  • 生活の中で意識的に「連続したウォーキング時間」を増やすことが重要。

「とにかく歩く」だけでなく、“どう歩くか”を意識することが、次の健康戦略につながるといえます。

あくまでも相関関係が示されたにすぎませんが、歩数だけではなく、歩行の仕方が重要である可能性が示唆されました。

他の国や地域でも同様の結果が示されるのか、更なる検証が求められます。

続報に期待。

woman walking on pathway under the sun

✅まとめ✅ 英国のコホート研究の結果、毎日の歩数の大半を長時間にわたって積み重ねた、最適に活動していない成人は、毎日の歩数の大半を短時間にわたって積み重ねた成人よりも死亡率とCVDリスクが低かった。

根拠となった試験の抄録

背景: 身体活動の推奨事項では毎日の歩数が考慮されることが増えていますが、歩数の蓄積パターン(短い歩数と長い歩数の継続)が、活動量が最適でない集団における死亡率および心血管疾患 (CVD) との関連に影響を与えるかどうかは不明です。

目的: 1日の歩数が8,000歩以下の人を対象に、歩数累積パターンと全死亡率およびCVD発症率との関連性を調べる。

試験デザイン: 前向きコホート研究。

試験設定: 英国バイオバンク (2013~2015年)。

試験参加者: 1日8000歩以下で、ベースラインでCVDまたは癌の罹患がなかった33,560人(平均年齢62.0歳[SD7.7])。

介入: 参加者は、歩数が最も多かった活動時間に応じて、5分未満、5分以上10分未満、10分以上15分未満、15分以上の活動時間に分類されました。運動量が少ない参加者は1日5,000歩未満、活動量が少ない参加者は1日5,000歩以上7,999歩でした。

測定項目: 全死亡率およびCVD発症率。発作持続期間群間の共変量のバランスをとるために、逆確率重み付け法が用いられた。

結果: 平均7.9年間(266,283人年)の追跡調査期間中、735人の死亡と3,119件のCVDイベントが発生した。9.5年時点での累積全死因死亡率は、発作時間の長さとともに減少した。発作時間が5分未満の場合、4.36%(95%信頼区間 3.52%~5.19%)、5分以上10分未満の場合、1.83%(95%信頼区間 1.29%~2.36%)、10分以上15分未満の場合、0.84%(95%信頼区間 0.13%~1.53%)、15分以上の場合、0.80%(95%信頼区間 0.00%~1.89%)であった。 9.5 年時点での累積 CVD 発生率は同様のパターンを示し、5 分未満の発作では 13.03% (CI 11.92% ~ 14.14%)、5 分以上 10 分未満では 11.09% (CI 9.88% ~ 12.29%)、10 分以上 15 分未満では 7.71% (CI 5.67% ~ 9.70%)、15 分以上では 4.39% (CI 1.89% ~ 6.83%) でした。

試験の制限: 残存交絡および逆因果関係の可能性がある観察設計、活動の1回限りの測定。

結論: 毎日の歩数の大半を長時間にわたって積み重ねた、最適に活動していない成人は、毎日の歩数の大半を短時間にわたって積み重ねた成人よりも死亡率とCVDリスクが低かった。

主な資金提供元: National Heart Foundation および National Health and Medical Research Council

引用文献

Step Accumulation Patterns and Risk for Cardiovascular Events and Mortality Among Suboptimally Active Adults
Borja Del Pozo Cruz et al. PMID: 41144973 DOI: 10.7326/ANNALS-25-01547
Ann Intern Med. 2025 Oct 28. doi: 10.7326/ANNALS-25-01547. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41144973/

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