【T2DM患者のCABG術前管理】エンパグリフロジンは術後急性腎障害を減らす?(PROBE法; POST-CABGDM試験; Diabetes Care. 2025)

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糖尿病患者の心臓手術リスクをどう下げるか?

2型糖尿病(T2DM)患者は、冠動脈バイパス手術(CABG)後に急性腎障害(AKI)を発症するリスクが高いことが知られています。AKIは術後転帰を悪化させ、予後に重大な影響を与えるため、リスク低減策の確立が課題となっています。

今回紹介する研究は、SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンを、CABG手術予定のT2DM患者に術前に使用した場合のAKI予防効果を検討したランダム化比較試験(RCT)です。

試験結果から明らかになったことは?

試験概要

項目内容
試験デザイン単施設、実用的、ランダム化、オープンラベル(結果判定は盲検化)
対象患者計145名(T2DM患者、予定CABG手術)
介入群エンパグリフロジン25mg/日+標準治療(術前72時間で中止)
比較群標準治療のみ
主要評価項目術後7日以内の急性腎障害(AKI)発生率
副次評価項目術後30日以内の心房細動、新規タイプ5心筋梗塞(MI)発症率
安全性評価ケトアシドーシス、尿路感染症、院内肺炎、創部感染症

主な結果

評価項目エンパグリフロジン群標準治療群相対リスク(RR)P値
術後AKI発生率22.5%39.1%0.57
(95%CI 0.34–0.96)
0.03
心房細動発生率15.4%13.5%1.15
(95%CI 0.52–2.53)
0.73
タイプ5 MI発生率1.4%4.1%0.35
(95%CI 0.04–3.26)
0.62
安全性イベント(合併症)有意差なし
(抄録に数値の記載なし)
有意差なし
(抄録に数値の記載なし)
死亡数0件3件

コメント

この単施設RCTでは、エンパグリフロジンの術前投与がCABG後AKIリスクを有意に低減することを示しました(リスク比 0.57、p=0.03)。副次的アウトカム(心房細動、タイプ5 MI)や安全性イベント(ケトアシドーシス、感染症)では有意差は認められず、安全性にも大きな懸念はなかったことが明らかとなりました。

特筆すべきは、死亡例が全て標準治療群に発生していた点であり、エンパグリフロジン群では死亡が一例もなかったことも間接的な安全性の裏付けとなります。

本試験は単施設・小規模であるため、今後は多施設・大規模RCTでの再検証が求められるものの、CABGを受けるT2DM患者における周術期管理の新たな可能性を提示した重要な知見といえます。

再現性の確認も含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 非盲検ランダム化比較試験の結果、CABGを受けるT2DM患者におけるエンパグリフロジン使用は、術後AKIリスクを減少させたが、安全性への悪影響は認められなかった。これらの結果は、より大規模な臨床試験での確認が必要である。

根拠となった論文の抄録

目的:2型糖尿病(T2DM)患者における、冠動脈バイパス術(CABG)施行時のエンパグリフロジン使用の有効性と安全性を評価すること。

研究デザインと方法:ブラジルで実施された、実用的、単施設、ランダム化、オープンラベル試験(結果判定は盲検化)。CABG予定のT2DM患者145名を、エンパグリフロジン25mg/日+標準治療群(71名、術前72時間で中止)と、標準治療単独群(74名)にランダム割り付け。
主要アウトカムは、手術後7日以内の急性腎障害(AKI)発生。副次アウトカムは、術後30日以内の心房細動とタイプ5心筋梗塞(MI)。安全性アウトカムは、ケトアシドーシス、尿路感染症、院内肺炎、創部感染症(30日以内)とした。

結果:術後AKI発生率は、エンパグリフロジン群で22.5%、対照群で39.1%だった(RR 0.57、95%CI 0.34–0.96、P=0.03)。心房細動発生率(15.4% vs. 13.5%、P=0.73)とタイプ5 MI発生率(1.4% vs. 4.1%、P=0.62)には有意差なし。安全性イベントにも群間差はみられなかった。死亡は3件であり、すべて対照群で発生した。

結論:CABGを受けるT2DM患者におけるエンパグリフロジン使用は、術後AKIリスクを減少させたが、安全性への悪影響は認められなかった。これらの結果は、より大規模な臨床試験での確認が必要である。

引用文献

Effect of Empagliflozin on Postoperative Acute Kidney Injury in Patients With Type 2 Diabetes Undergoing Coronary Artery Bypass Grafting
Felipe Nunes et al. PMID: 40233024 DOI: 10.2337/dc23-1686
Diabetes Care. 2025 Apr 4. doi: 10.2337/dc23-1686. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40233024/

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