50歳以上の乳癌患者に対する適切なマンモグラフィ実施頻度は?(RCT; Mammo-50試験; Lancet. 2025)

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マンモグラフィは年1回でも問題ない?

乳癌診断後の女性に対するマンモグラフィサーベイランスの頻度は世界的に異なります。しかし、どのくらいの頻度が適しているのかについては充分いn検証されていません。

そこで今回は、50歳以上の女性において、年1回未満のマンモグラフィが乳癌特異的生存率において非劣性であるかどうかを評価することを目的に実施されたランダム化比較試験の結果をご紹介します。

Mammo-50試験は、浸潤性乳がんまたは非浸潤性乳がんの初回診断時で、治癒手術後3年経過して再発のない50歳以上の女性を対象に、マンモグラフィを年1回とそれ以下の頻度(温存手術後は2年ごと乳房切除術後は3年ごと)で行う多施設共同ランダム化第3相試験です。

試験は英国の国民保健サービス病院114施設で実施されました。試験参加者は、根治術後3年目にマンモグラフィを年1回または頻度を減らす群にランダムに割り付けられ(1:1)、6年間追跡されました。

本試験の主要アウトカムは、乳癌特異的生存期間と費用対効果でした(費用対効果の解析は別の論文で報告)。乳癌特異的生存率はintention-to-treat集団で評価されました。

副次的アウトカムは、無再発間隔、全生存期間、および病院システムへの再紹介でした。

5,000人の女性により、乳癌特異的生存率について3%の絶対的非劣性マージンを検出する90%の検出力が得られ、片側有意差は2.5%でした。

本試験はISRCTNレジストリISRCTN48534559に登録されました;募集は終了しましたが、より長期間の追跡調査が継続中です。

試験結果から明らかになったことは?

2014年4月22日~2018年9月28日の間に、5,235人の女性を年1回のマンモグラフィ(n=2,618)または頻度の少ないマンモグラフィ(n=2,617)にランダムに割り付けました。3,858人(73.6%)が60歳以上の女性で、4,202人(80.3%)が温存手術を受け、4,576人(87.4%)が浸潤性疾患、1,159人(22.1%)がリンパ節転移陽性、4,330人(82.7%)がエストロゲン受容体陽性腫瘍でした。

追跡期間中央値5.7年(IQR 5.0~6.0;根治術後 8.7年)で、343人の女性が死亡し、うち116人が乳癌で死亡しました(年1回マンモグラフィ群:61人、頻度の少ないマンモグラフィ群:55人)。

年1回マンモグラフィ群
(95%CI)
低頻度マンモグラフィ群
(95%CI)
ハザード比 HR
(95%CI)
乳癌特異的5年生存率 98.1%
(97.5~98.6)
98.3%
(97.8~98.8)
HR 0.92
0.64~1.32
非劣性p<0.0001
5年無再発94.1%
(93.1~94.9)
94.5%
(93.5~95.3)
5年後の全生存率94.7%
93.8~95.5
94.5%
93.5~95.3
緊急入院または病院システムへの症状的再紹介175件中108件
(61.7%)
170件中116件
(68.2%)

乳癌特異的5年生存率は、年1回マンモグラフィ群 98.1%(95%信頼区間 97.5~98.6)、頻度の少ないマンモグラフィ群 98.3%(97.8~98.8)であり(ハザード比 0.92、95%信頼区間 0.64~1.32)、事前に規定した3%のマージンにおいて頻度の少ないマンモグラフィの非劣性が示されました(非劣性p<0.0001)。

5年無再発は、年1回マンモグラフィ群で94.1%(95%CI 93.1~94.9)、頻度の少ないマンモグラフィ群で94.5%(93.5~95.3)でした。5年後の全生存率は、それぞれ94.7%(95%CI 93.8~95.5)および94.5%(93.5~95.3)でした。

乳癌イベント345件中224件(64.9%)が緊急入院または病院システムへの症状的再紹介から発見され、その内訳は、年1回マンモグラフィ群175件中108件(61.7%)、頻度の少ないマンモグラフィ群170件中116件(68.2%)でした。

コメント

乳がん患者において、治療後に定期的なマンモグラフィ検査が求められますが、実施頻度については充分に検証されていません。

さて、ランダム化比較試験の結果、50歳以上で診断後3年の患者では、乳癌特異的生存率、無再発間隔、および全生存率において、年1回のマンモグラフィと比較して頻度の少ないマンモグラフィは非劣性であることが示されました。

本試験では、温存手術後は2年ごと乳房切除術後は3年ごとにマンモグラフィ検査を受けています。患者背景によっては年1回未満の検査頻度でも患者予後に影響しないのかもしれません。

英国以外の国や地域においても同様の結果が示されるのか、再現性の確認も含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、50歳以上で診断後3年の患者では、乳癌特異的生存率、無再発間隔、および全生存率において、年1回のマンモグラフィと比較して頻度の少ないマンモグラフィは非劣性であった。

根拠となった試験の抄録

背景:乳癌診断後の女性に対するマンモグラフィサーベイランスの頻度は世界的に異なる。本研究の目的は、50歳以上の女性において、年1回未満のマンモグラフィが乳癌特異的生存率において非劣性であるかどうかを評価することである。

方法:Mammo-50は、浸潤性乳がんまたは非浸潤性乳がんの初回診断時で、治癒手術後3年経過して再発のない50歳以上の女性を対象に、マンモグラフィを年1回とそれ以下の頻度(温存手術後は2年ごと、乳房切除術後は3年ごと)で行う多施設共同ランダム化第3相試験である。試験は英国の114の国民保健サービス病院で実施された。試験参加者は、根治術後3年目にマンモグラフィを年1回または頻度を減らす群にランダムに割り付けられ(1:1)、6年間追跡された。
主要アウトカムは、乳癌特異的生存期間と費用対効果であった。費用対効果の解析は別の報告で行う。乳癌特異的生存率はintention-to-treat集団で評価された。
副次的アウトカムは、無再発間隔、全生存期間、および病院システムへの再紹介であった。
5,000人の女性により、乳癌特異的生存率について3%の絶対的非劣性マージンを検出する90%の検出力が得られ、片側有意差は2.5%であった。本試験はISRCTNレジストリISRCTN48534559に登録された;募集は終了したが、より長期間の追跡調査が継続中である。

研究結果:2014年4月22日~2018年9月28日の間に、5,235人の女性を年1回のマンモグラフィ(n=2,618)または頻度の少ないマンモグラフィ(n=2,617)にランダムに割り付けた。3,858人(73.6%)が60歳以上の女性で、4,202人(80.3%)が温存手術を受け、4,576人(87.4%)が浸潤性疾患、1,159人(22.1%)がリンパ節転移陽性、4,330人(82.7%)がエストロゲン受容体陽性腫瘍であった。追跡期間中央値5.7年(IQR 5.0~6.0;根治術後 8.7年)で、343人の女性が死亡し、うち116人が乳癌で死亡した(年1回マンモグラフィ群:61人、頻度の少ないマンモグラフィ群:55人)。5年乳癌特異的生存率は、年1回マンモグラフィ群 98.1%(95%信頼区間 97.5~98.6)、頻度の少ないマンモグラフィ群 98.3%(97.8~98.8)であり(ハザード比 0.92、95%信頼区間 0.64~1.32)、事前に規定した3%のマージンにおいて頻度の少ないマンモグラフィの非劣性が示された(非劣性p<0.0001)。5年無再発間隔は、年1回マンモグラフィ群で94.1%(95%CI 93.1~94.9)、頻度の少ないマンモグラフィ群で94.5%(93.5~95.3)であった。5年後の全生存率は、それぞれ94.7%(95%CI 93.8~95.5)および94.5%(93.5~95.3)であった。乳癌イベント345件中224件(64.9%)が緊急入院または病院システムへの症状的再紹介から発見され、その内訳は、年1回マンモグラフィ群175件中108件(61.7%)、頻度の少ないマンモグラフィ群170件中116件(68.2%)であった。

解釈:50歳以上で診断後3年の患者では、乳癌特異的生存率、無再発間隔、および全生存率において、年1回のマンモグラフィと比較して頻度の少ないマンモグラフィは非劣性であり、この集団では考慮すべきである。

資金提供:National Institute for Health Research Health Technology Assessmentプログラム

引用文献

Annual versus less frequent mammographic surveillance in people with breast cancer aged 50 years and older in the UK (Mammo-50): a multicentre, randomised, phase 3, non-inferiority trial
Janet A Dunn et al. PMID: 39892911 DOI: 10.1016/S0140-6736(24)02715-6
Lancet. 2025 Feb 1;405(10476):396-407. doi: 10.1016/S0140-6736(24)02715-6.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39892911/

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