がんと急性低リスク肺塞栓症患者におけるリバーロキサバンの18ヵ月投与と6ヵ月投与の比較(Open-RCT; ONCO PE試験; Circulation. 2024)

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リバーロキサバンの最適な投与期間は?

癌と急性低リスク肺塞栓症(PE)患者に対する抗凝固療法の最適期間は臨床的に重要ですが、エビデンスは不足しています。

抗凝固療法の延長は血栓性イベントの予防に有益である可能性がありものの、出血のリスクを増加させる可能性もあることから、慎重なリスクベネフィット評価が求められます。

そこで今回は、肺塞栓症重症度指数簡易版スコア1の急性低リスクPEを有するがん患者を対象に、リバーロキサバンを18ヵ月投与する群と6ヵ月投与する群に1:1の割合でランダムに割り付け、リバーロキサバンのリスクベネフィット評価を実施した多施設共同非盲検判定者盲検ランダム化比較試験(国内32施設で実施、ONCO PE試験)の結果をご紹介します。

本研究の主要エンドポイントは18ヵ月後の静脈血栓塞栓症(VTE)の再発でした。主要副次的エンドポイントは、国際血栓止血学会の基準による18ヵ月後の大出血でした。主要仮説は、主要エンドポイントに関して18ヵ月治療が6ヵ月治療より優れているというものでした。

試験結果から明らかになったことは?

2021年2月から2023年3月までに179例の患者がランダム化され、同意を撤回した1例の患者を除外した後、178例がintention-to-treat集団に組み入れられました:18ヵ月リバーロキサバン群89例、6ヵ月リバーロキサバン群89例。平均年齢は65.7歳で、患者の47%が男性であり、12%がベースライン時にPEの症状を有していました。

18ヵ月リバーロキサバン群6ヵ月リバーロキサバン群オッズ比(95%CI)
主要エンドポイント(VTE再発)89例中5例(5.6%)89例中17例(19.1%)オッズ比 0.25
0.09~0.72
P=0.01
大出血89例中7例(7.8%)89例中5例(5.6%)オッズ比 1.43
0.44~4.70
P=0.55

主要エンドポイントであるVTEの再発は、18ヵ月リバーロキサバン群では89例中5例(5.6%)に、6ヵ月リバーロキサバン群では89例中17例(19.1%)に認められました(オッズ比 0.25、95%CI 0.09~0.72];P=0.01)。

22例の再発VTEのうち、症候性再発VTEを呈した患者は5例でした;再発PEは11例に認められ、その内訳は主肺PEが2例、肺葉PEが4例であった;再発深部静脈血栓症は11例に認められ、その内訳は近位深部静脈血栓症が3例でした。

主要な副次的エンドポイントである大出血は、18ヵ月リバーロキサバン群では89例中7例(7.8%)に、6ヵ月リバーロキサバン群では89例中5例(5.6%)に発生しました(オッズ比 1.43、95%CI 0.44~4.70P=0.55)。

コメント

がん及び急性低リスク肺塞栓症(PE)患者における抗凝固療法の最適期間について充分に検証されていません。

さて、非盲検ランダム化比較試験の結果、肺塞栓症重症度指数(Pulmonary Embolism Severity Index)簡易版スコア1の急性低リスク肺塞栓症を有するがん患者において、静脈血栓塞栓症イベントの再発に関しては、18ヵ月のリバーロキサバン治療が6ヵ月のリバーロキサバン治療よりも優れていました。一方、大出血についてはリスク増加傾向ではあるものの、群間差はありませんでした。どのような患者で、よりリスクが増加するのか更なる検証が求められます。

とはいえ、現時点においては、より長期間のリバーロキサバン投与が求められるようです。そもそも塞栓リスクを有していることから、リスクの高低にかかわらず18か月間の投与が適しているようです。

再現性の確認も含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 非盲検ランダム化比較試験の結果、肺塞栓症重症度指数(Pulmonary Embolism Severity Index)簡易版スコア1の急性低リスク肺塞栓症を有するがん患者において、静脈血栓塞栓症イベントの再発に関しては、18ヵ月のリバーロキサバン治療が6ヵ月のリバーロキサバン治療よりも優れていた。

根拠となった試験の抄録

背景:癌と急性低リスク肺塞栓症(PE)患者に対する抗凝固療法の最適期間は臨床的に重要であるが、エビデンスは不足している。抗凝固療法の延長は血栓性イベントの予防に有益である可能性があるが、出血のリスクを増加させる可能性もある。

方法:国内32施設で実施された多施設共同非盲検判定者盲検ランダム化比較試験において、肺塞栓症重症度指数簡易版スコア1の急性低リスクPEを有するがん患者を、リバーロキサバンを18ヵ月投与する群と6ヵ月投与する群に1:1の割合で無作為に割り付けた。
本研究の主要エンドポイントは18ヵ月後の静脈血栓塞栓症(VTE)の再発であった。主要副次的エンドポイントは、国際血栓止血学会の基準による18ヵ月後の大出血であった。主要仮説は、主要エンドポイントに関して18ヵ月治療が6ヵ月治療より優れているというものであった。

結果:2021年2月から2023年3月までに179例の患者がランダム化され、同意を撤回した1例の患者を除外した後、178例がintention-to-treat集団に組み入れられた:18ヵ月リバーロキサバン群89例、6ヵ月リバーロキサバン群89例。平均年齢は65.7歳で、患者の47%が男性であり、12%がベースライン時にPEの症状を有していた。主要エンドポイントであるVTEの再発は、18ヵ月リバーロキサバン群では89例中5例(5.6%)に、6ヵ月リバーロキサバン群では89例中17例(19.1%)に認められた(オッズ比 0.25、95%CI 0.09~0.72];P=0.01)。22例の再発VTEのうち、症候性再発VTEを呈した患者は5例であった;再発PEは11例に認められ、その内訳は主肺PEが2例、肺葉PEが4例であった;再発深部静脈血栓症は11例に認められ、その内訳は近位深部静脈血栓症が3例であった。主要な副次的エンドポイントである大出血は、18ヵ月リバーロキサバン群では89例中7例(7.8%)に、6ヵ月リバーロキサバン群では89例中5例(5.6%)に発生した(オッズ比 1.43、95%CI 0.44~4.70P=0.55)。

結論:肺塞栓症重症度指数(Pulmonary Embolism Severity Index)簡易版スコア1の急性低リスクPEを有するがん患者において、VTEイベントの再発に関しては、18ヵ月のリバーロキサバン治療が6ヵ月のリバーロキサバン治療よりも優れていた。

引用文献

Rivaroxaban for 18 Months Versus 6 Months in Patients With Cancer and Acute Low-Risk Pulmonary Embolism: An Open-Label, Multicenter, Randomized Clinical Trial (ONCO PE Trial)
Yugo Yamashita et al. PMID: 39556015 DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.124.072758
Circulation. 2024 Nov 18. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.124.072758. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39556015/

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