心筋梗塞後の長期アスピリン服用と心血管イベントの発生リスクとの関連性は?(データベース研究; Eur Heart J Qual Care Clin Outcomes. 2024)

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アスピリンは服用し続けた方が良いのか?

心筋梗塞(MI)後のアスピリンは必須と考えられています。しかし、その長期的有効性については疑問視されています。

そこで今回は、心筋梗塞後の長期的なアスピリンの有効性を検討したデータベース研究の結果をご紹介します。

2004年から2017年にMIを発症した40歳以上の患者のうち、MI後1年目にアスピリンを服用していた患者をデンマークの全国登録から組み入れました。心筋梗塞後2年、4年、6年、8年の時点で、アスピリン服薬の継続を評価しました。

各時点から2年後のMI、脳卒中、死亡の絶対リスクと相対リスクは、年齢、性別、合併症で標準化した平均治療効果モデルによる多変量ロジスティック回帰分析を用いて算出されました。サブグループ解析では性別、年齢>65歳、65歳未満で層別化されました。

試験結果から明らかになったことは?

組み入れられた40,116人のうち、複合エンドポイントのリスクはすべての時点において、服用順守率の低い患者(non-adherent)で有意に高いことが示されました。

絶対リスクが最も高くなったのは、服用順守率の高い患者(adherent:[8.34%、95%信頼区間(CI) 8.05~8.64%])と低い患者(non-adherent:[10.72%、95%CI 9.78~11.66%])の両方で心筋梗塞後2~4年でした。

非アドヒアランスに関連する相対リスクは、index-MI後4年以降から減少しました:4~6年では1.41(95%CI 1.27~1.55)、8~10年では1.21(95%CI 1.06~1.36)でした(傾向のP=0.056)。

女性および65歳以上におけるアスピリン非服用はリスク増加とは関連していませんでした。各時点での交互作用P:年齢 <0.001、<0.001、0.002、0.51; 性別 0.25、0.02、0.02、0.82。

※なお、服薬アドヒアランスは服薬日数割合(PDC)として計算されました。PDCとは、特定の期間中に患者に薬剤が供給された日数の割合と定義されています。従って、PDC≦80%の患者は非服薬アドヒアランス(non-adherent)とみなされ、PDC>80%の患者は服薬アドヒアランス良好(adherent)とみなされました。アドヒアランスの状態は、各時点で過去2年間の処方箋記入に基づいて計算されています。

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アスピリンはリスクベネフィットの観点から、そしてコストの観点からも優れていることから実臨床で多くの心筋梗塞患者に使用されています。一方、多くの新薬が標準治療薬として併用使用されている背景から、アスピリンの長期的な有効性についての検証が求められています。

さて、デンマークのデータベース研究の結果、長期アスピリンのノンアドヒアランスは心筋梗塞、脳卒中、死亡のリスク上昇と関連していましたが、女性や65歳以上では関連しませんでした。リスクは心筋梗塞後4年目から統計学的にほぼ有意に減少しました。

本試験結果からのみでは結論付けられませんが、少なくとも3年間はアスピリンの服薬アドヒアランスを80%超に維持した方が良いのかもしれません。心筋梗塞後の心血管イベントの発生リスクは、白人と比較してアジア人の方が低いことが報告されています。日本人を含めたアジア人での検証結果が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ デンマークのデータベース研究の結果、長期アスピリンのノンアドヒアランスは心筋梗塞、脳卒中、死亡のリスク上昇と関連したが、女性や65歳以上では関連しなかった。リスクは心筋梗塞後4年目から統計学的にほぼ有意に減少した。

根拠となった試験の抄録

目的:心筋梗塞(MI)後のアスピリンは必須と考えられている。しかし、その長期的有効性については疑問視されている。本研究では心筋梗塞後の長期的なアスピリンの有効性を検討した。

方法:2004年から2017年にMIを発症した40歳以上の患者のうち、MI後1年目にアスピリンを服用していた患者をデンマークの全国登録から組み入れた。心筋梗塞後2年、4年、6年、8年の時点で、アスピリン服薬の継続を評価した。
各時点から2年後のMI、脳卒中、死亡の絶対リスクと相対リスクは、年齢、性別、合併症で標準化した平均治療効果モデルによる多変量ロジスティック回帰分析を用いて算出した。サブグループ解析は性別、年齢>65歳、65歳未満で層別化した。

結果:組み入れられた40,116人のうち、複合エンドポイントのリスクはすべての時点において服用順守率の低い患者で有意に高かった。絶対リスクは心筋梗塞後2~4年において、アドヒアランスの高い患者[8.34%、95%信頼区間(CI) 8.05~8.64%]と低い患者[10.72%、95%CI 9.78~11.66%]の両方で最も高かった。非アドヒアランスに関連する相対リスクは、index-MI後4年以降から減少した: 4~6年では1.41(95%CI 1.27~1.55)、8~10年では1.21(95%CI 1.06~1.36)であった(傾向のP=0.056)。女性および65歳以上におけるアスピリン非服用はリスク増加とは関連していなかった。各時点での交互作用P:年齢 <0.001、<0.001、0.002、0.51; 性別 0.25、0.02、0.02、0.82。

結論:長期アスピリンのノンアドヒアランスは心筋梗塞、脳卒中、死亡のリスク上昇と関連したが、女性や65歳以上では関連しなかった。リスクは心筋梗塞後4年目から統計学的にほぼ有意に減少した。

キーワード:アドヒアランス;アスピリン;心筋梗塞;予防医学;リスク;治療中止

引用文献

Long-term aspirin adherence following myocardial infarction and risk of cardiovascular events
Anna Meta Dyrvig Kristensen et al. PMID: 38305132 DOI: 10.1093/ehjqcco/qcae009
Eur Heart J Qual Care Clin Outcomes. 2024 Nov 5;10(7):612-622. doi: 10.1093/ehjqcco/qcae009.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38305132/

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