台湾の2型糖尿病患者におけるスルホニルウレア薬の長期使用と低血糖の自覚障害(横断研究; Ann Fam Med. 2024)

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低血糖の自覚障害は使用薬剤により異なるのか?

低血糖は、重篤な不整脈、血管障害、一時的な局所障害、認知機能障害、死亡など多くの合併症を引き起こす可能性があります。また、低血糖は自動車事故や転倒など、様々な有害事象の比較的高いリスクとも関連しています。

低血糖を自覚することでブドウ糖の摂取などの適切な対応が取れますが、無自覚(低血糖自覚障害:impaired awareness of hypoglycemia, IAH)の場合、重篤な転帰となる可能性があります。

低血糖リスクは使用薬剤により異なり、なかでもインスリン注射やスルホニルウレア系薬の使用による低血糖リスクが高いことが報告されています。しかし、2型糖尿病患者におけるIAHの有病率について充分に検証されていません。

そこで今回は、台湾において、インスリン治療またはスルホニルウレア治療の2型糖尿病患者を対象に、薬剤使用期間と低血糖自覚障害(IAH)有病率の関係を調査した横断研究の結果をご紹介します。

台湾台南市の薬局、診療所、健康局に登録された合計898名の患者(インスリン使用者41.0%、スルホニル尿素使用者65.1%、平均年齢59.9[SD 12.3]歳、女性50.7%)が対象となりました。IAHの有無は中国語版のGold質問票(Gold-TW)とClarke質問票(Clarke-TW)で判定されました。

社会人口統計、病歴、治療歴、糖尿病関連医療、健康状態についても収集され、多変量ロジスティック回帰モデルにより薬剤使用期間とIAHの関係が評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

中国語版のGold質問票(Gold-TW)によるIHA有病率Clarke質問票(Clarke-TW)によるIHA有病率
インスリン使用者41.0%28.2%
スルホニル尿素使用者65.3%51.3%

全体のIAH有病率はインスリン使用者で41.0%(Gold-TW)、28.2%(Clarke-TW)、スルホニル尿素使用者で65.3%(Gold-TW)、51.3%(Clarke-TW)でした。

有病率はスルホニル尿素の使用期間とともに増加しましたが、インスリンの使用期間とともに減少しました。

5年以上のスルホニル尿素使用中国語版のGold質問票(Gold-TW)によるIHA有病率Clarke質問票(Clarke-TW)によるIHA有病率
IAHのオッズ3.50倍(95%CI 2.39~5.133.06倍(95%CI 2.11~4.44

潜在的な交絡因子をコントロールした結果、5年以上のスルホニル尿素使用は、Gold-TWおよびClarke-TW基準に基づくIAHのオッズのそれぞれ3.50倍(95%CI 2.39~5.13)および3.06倍(95%CI 2.11~4.44)の増加と有意に関連していました。

一方、定期的な血糖検査と網膜検査は、インスリン使用者、スルホニル尿素使用者ともにオッズ低下と関連していました。

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低血糖が繰り返し引き起こされることで、低血糖に対して無自覚になる可能性があります。低血糖の自覚障害により、重篤な転帰を引き起こす可能性があることから、モニタリングと適切な対応が求められます。

さて、台湾の横断研究の結果、低血糖自覚障害(IAH)の有病率はスルホニルウレア薬を長期に使用している患者で高いことが示されました。この合併症のオッズは定期的に糖尿病関連の医療を受けている患者で減少しました。

横断研究の結果であることから、再現性の確認、未調整の交絡因子の残存、より長期的な検証など、更なる検証が求められます。

続報に期待。

a blood glucose meter and a pill on the grass

✅まとめ✅ 台湾の横断研究の結果、低血糖自覚障害(IAH)の有病率はスルホニルウレア薬を長期に使用している患者で高いことが示された。この合併症のオッズは定期的に糖尿病関連の医療を受けている患者で減少した。

根拠となった試験の抄録

目的:台湾のインスリン治療またはスルホニルウレア治療の2型糖尿病患者を対象に、薬剤使用期間と低血糖自覚障害(impaired awareness of hypoglycemia, IAH)有病率の関係を調査した。

方法:台湾台南市の薬局、診療所、健康局に登録された合計898名の患者(インスリン使用者41.0%、スルホニル尿素使用者65.1%、平均年齢59.9[SD 12.3]歳、女性50.7%)を対象とした。IAHの有無は中国語版のGold質問票(Gold-TW)とClarke質問票(Clarke-TW)で判定した。社会人口統計、病歴、治療歴、糖尿病関連医療、健康状態を収集した。多変量ロジスティック回帰モデルを用いて、薬剤使用期間とIAHの関係を評価した。

結果:全体のIAH有病率はインスリン使用者で41.0%(Gold-TW)、28.2%(Clarke-TW)、スルホニル尿素使用者で65.3%(Gold-TW)、51.3%(Clarke-TW)であった。有病率はスルホニル尿素の使用期間とともに増加したが、インスリンの使用期間とともに減少した。潜在的な交絡因子をコントロールした結果、5年以上のスルホニル尿素使用は、Gold-TWおよびClarke-TW基準に基づくIAHのオッズのそれぞれ3.50倍(95%CI 2.39~5.13)および3.06倍(95%CI 2.11~4.44)の増加と有意に関連していた。一方、定期的な血糖検査と網膜検査は、インスリン使用者、スルホニル尿素使用者ともにオッズ低下と関連していた。

結論:低血糖自覚障害(IAH)の有病率はスルホニルウレア薬を長期に使用している患者で高かったが、この合併症のオッズは定期的に糖尿病関連の医療を受けている患者で減少した。本研究は,スルホニル尿素の長期使用と不規則な経過観察がIAHのリスクを増加させることを示唆している。観察された関連を確認するためには、さらなる前向き研究が必要である。

キーワード:糖尿病合併症;血糖コントロール;低血糖;血糖降下薬;インスリン;プライマリケア;リスク因子;スルホニル尿素;2型糖尿病。

引用文献

Long-Term Sulfonylurea Use and Impaired Awareness of Hypoglycemia Among Patients With Type 2 Diabetes in Taiwan
Hsiang-Ju Cheng et al. PMID: 38914437 PMCID: PMC11268696 DOI: 10.1370/afm.3129
Ann Fam Med. 2024 Jul 22;22(4):309-316. doi: 10.1370/afm.3129.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38914437/

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