二重抗血小板療法(DAPT)は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた患者では依然としてゴールドスタンダードです。しかし、DAPTの至適期間については依然として明らかとなっていません。
そこで今回は、薬剤溶出ステント(DES)を用いたPCI後に1ヵ月DAPTを行い、その後アスピリンまたはP2Y12受容体阻害薬を投与した場合の臨床的安全性について評価を行ったシステマティックレビューおよびメタ解析の結果をご紹介します。
対象文献はPubMed、MEDLINE、Embase、Scopus、Google Scholar、Cochrane Central Registry、ClinicalTrials.govのデータベースで検索されました。
DESによるPCIを受けた患者29,831例が対象となり、1ヵ月DAPTと1ヵ月超DAPTを比較した5件のランダム化比較試験が同定なりました。
本解析の主要エンドポイントは大出血であり、同等プライマリーエンドポイント(co-primary end point)はステント血栓症でした。副次的エンドポイントは全死亡、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、主要な有害心血管・脳血管イベントなどでした。
試験結果から明らかになったことは?
(1ヵ月間のDAPT vs. 1ヵ月以上のDAPT) | オッズ比 OR (95%CI) |
大出血 | OR 0.66 (0.45~0.97) p=0.03、I2=71% |
ステント血栓症 | OR 1.08 (0.81~1.44) p=0.60、I2=0.0% |
全死亡 | OR 0.89 (0.77〜1.04) p=0.14、I2=0.0% |
心血管死 | OR 0.84 (0.59〜1. 19) p=0.32、I2=0.0% |
心筋梗塞 | OR 1.04 (0.89〜1.21) p=0.62、I2=0.0% |
脳卒中 | OR 0.82 (0.64〜1.05) p=0.11、I2=6% |
心血管系または脳血管系の主要有害事象 | OR 0.86 (0.76〜0.97) p=0.02、I2=25% |
1ヵ月以上のDAPTと比較して、1ヵ月DAPTは大出血の発生率が低いことが示されました(オッズ比[OR]0.66、95%信頼区間[CI]0.45~0.97、p=0.03、I2=71%)が、ステント血栓症は両群で同程度でした(OR 1.08、95%CI 0.81~1.44、p=0.60、I2=0.0%)。
全死亡(OR 0.89、95%CI 0.77〜1.04、p=0.14、I2=0.0%)、心血管死(OR 0.84、95%CI 0.59〜1. 19、p=0.32、I2=0.0%)、心筋梗塞(OR 1.04、95%CI 0.89〜1.21、p=0.62、I2=0.0%)、脳卒中(OR 0.82、95%CI 0.64〜1.05、p=0.11、I2=6%)は同等でした。
心血管系または脳血管系の主要有害事象のリスクは、1ヵ月以上のDAPTと比較して1ヵ月のDAPTの方が低いことが示されました(OR 0.86、95%CI 0.76〜0.97、p=0.02、I2=25%)。
コメント
冠動脈疾患によりPCIを受けた患者においては、DAPTが行われますが、その至適期間については依然として議論が続いています。
さて、5件のランダム化比較試験の結果、薬剤溶出ステント(DES)によるPCIを受けた患者では、1ヵ月DAPT後にアスピリンまたはP2Y12受容体阻害薬を投与することにより、長期DAPTと比較して血栓性リスクを増加させることなく、大出血を減少させることが示されました。
組み入れられた試験数が少なく、アウトカムによっては異質性が高いものもあります。引き続き検証が求めれられるところです。とはいえ、出血しやすいなどの背景を有する患者においては、予後予測を踏まえてDAPT期間を短縮することも選択肢の一つとなりえそうです。
続報に期待。
✅まとめ✅ 5件のランダム化比較試験の結果、薬剤溶出ステント(DES)によるPCIを受けた患者では、1ヵ月DAPT後にアスピリンまたはP2Y12受容体阻害薬を投与することにより、長期DAPTと比較して血栓性リスクを増加させることなく、大出血を減少させることが示された。
根拠となった試験の抄録
背景:二重抗血小板療法(DAPT)は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた患者では依然としてゴールドスタンダードである。このメタ解析の目的は、薬剤溶出ステント(DES)を用いたPCI後に1ヵ月DAPTを行い、その後アスピリンまたはP2Y12受容体阻害薬を投与した場合の臨床的安全性を評価することである。
方法:PubMed、MEDLINE、Embase、Scopus、Google Scholar、Cochrane Central Registry、ClinicalTrials.govのデータベースを検索し、DESによるPCIを受けた患者29,831例を対象とし、1ヵ月DAPTと1ヵ月超DAPTを比較した5件のランダム化比較試験を同定した。
主要エンドポイントは大出血で、同等プライマリーエンドポイント(co-primary end point)はステント血栓症であった。副次的エンドポイントは全死亡、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、主要な有害心血管・脳血管イベントなどであった。
結果:1ヵ月以上のDAPTと比較して、1ヵ月DAPTは大出血の発生率が低かった(オッズ比[OR]0.66、95%信頼区間[CI]0.45~0.97、p=0.03、I2=71%)が、ステント血栓症は両群で同程度であった(OR 1.08、95%CI 0.81~1.44、p=0.60、I2=0.0%)。全死亡(OR 0.89、95%CI 0.77〜1.04、p=0.14、I2=0.0%)、心血管死(OR 0.84、95%CI 0.59〜1. 19、p=0.32、I2=0.0%)、心筋梗塞(OR 1.04、95%CI 0.89〜1.21、p=0.62、I2=0.0%)、脳卒中(OR 0.82、95%CI 0.64〜1.05、p = 0.11、I2=6%)であった。心血管系または脳血管系の主要有害事象のリスクは、1ヵ月以上のDAPTと比較して1ヵ月のDAPTの方が低かった(OR 0.86、95%CI 0.76〜0.97、p=0.02、I2=25%)。
結論:薬剤溶出ステント(DES)によるPCIを受けた患者では、1ヵ月DAPT後にアスピリンまたはP2Y12受容体阻害薬を投与することにより、長期DAPTと比較して血栓性リスクを増加させることなく、大出血を減少させることができた。
キーワード:急性冠症候群;二重抗血小板療法;経皮的冠動脈インターベンション;安定冠動脈疾患
引用文献
One-Month Dual Antiplatelet Therapy Reduces Major Bleeding Compared With Longer-Term Treatment Without Excess Stent Thrombosis: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Clinical Trials
Gani Bajraktari et al. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39029722/
Am J Cardiol. 2024 Jul 17:227:91-97. doi: 10.1016/j.amjcard.2024.07.010. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39029722/
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