フレイル(虚弱)と死亡リスクとの関連性は?
虚弱を有する高齢患者は有害事象のリスクが高いことが報告されています。
Clinical Frailty Scale(CFS)は9段階の虚弱度評価尺度であり、有害転帰のリスクが高い虚弱な救急外来(ED)患者の同定に有望であることが示されています。しかし、CFSを基準とした患者間比較は充分に行われていません。
そこで今回は、救急外来で通常のスタッフが評価を行った場合のCFSスコアと30日死亡率との関連を検討することを目的に実施された前向きコホート研究の結果をご紹介します。
本研究は、2021年5月から11月にかけて、スウェーデンの3つのEDにおいて実施された前向き多施設観察研究です。ED部門のスタッフにより、CFSを用いた虚弱の評価が日常的に行われています。本研究では、65歳以上の全患者が対象となりました。
評価項目として、7日、30日、90日後の死亡率、入院率、EDおよび入院期間(LOS)について、虚弱(CFS≧5)患者と健常患者で比較されました。交絡因子の調整にはロジスティック回帰が用いられました。
試験結果から明らかになったことは?
研究期間中にEDを受診した65歳以上のCFS診断患者 1,840例を解析し、うち 606例(32.9%)が虚弱患者でした。
死亡率 | 虚弱(CFS≧5)患者 | 虚弱を有さない通常患者 |
7日後 | 2.6% | 0.2% |
30日後 | 7.9% | 0.9% |
90日後 | 15.5% | 2.4% |
7日後(2.6% vs. 0.2%)、30日後(7.9% vs. 0.9%)、90日後(15.5% vs. 2.4%)の死亡率は、虚弱患者で高いことが示されました。
死亡率の調整後OR (95%CI) 虚弱患者 vs. より頑健な患者 | |
7日死亡率 | 9.9(2.1~46.5) |
30日死亡率 | 6.0(3.0~12.2) |
90日死亡率 | 5.7(3.6~9.1) |
より頑健な患者と比較した虚弱患者の死亡率の調整後ORは、7日死亡率9.9(95%CI 2.1~46.5)、30日死亡率6.0(95%CI 3.0~12.2)、90日死亡率5.7(95%CI 3.6~9.1)でした。
虚弱(CFS≧5)患者 | 虚弱を有さない患者 | 群間差 (95%CI) | |
入院率 | 58% | 36% | 差22%(17〜26) |
救急外来の滞在期間 | 5時間08分 | 4時間36分 | 差31分(14〜50) |
入院期間 | 4.8日 | 2.7日 | 差2.2日(1.2〜3.0) |
虚弱患者では入院率が高く(58% vs. 36%;群間差22%、95%CI 17%〜26%)、ED LOSが長く、(5時間08分 vs. 4時間36分;差31分、95%CI 14〜50)、院内LOSが長いことが示されました(4.8日 vs. 2.7日;差2.2日、95%CI 1.2〜3.0)。
コメント
虚弱(フレイル)患者における死亡リスク評価において、Clinical Frailty Scale(CFS)が予測因子として有用であるかの検証が求められています。
さて、スウェーデンで実施された前向きコホート研究の結果、フレイルを有する患者は、頑健な患者と比較して、死亡率と入院率が有意に高く、救急搬送期間と入院期間も長いことが示されました。
本研究では、CFSのカットオフを5以上に設定しています。この基準によるフレイル患者の死亡予測モデルとしての確立について、更なる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅スウェーデンで実施された前向きコホート研究の結果、フレイルを有する患者は、頑健な患者と比較して、死亡率と入院率が有意に高く、救急搬送期間と入院期間も長いことが示された。
根拠となった試験の抄録
背景:虚弱を有する高齢患者は有害事象のリスクが高い。Clinical Frailty Scale(CFS)は9段階の虚弱度評価尺度であり、有害転帰のリスクが高い虚弱な救急外来(ED)患者の同定に有望であることが示されている。本研究の目的は、救急外来で通常のスタッフが評価を行った場合のCFSスコアと30日死亡率との関連を検討することである。
方法:本研究は、2021年5月から11月にかけて、スウェーデンの3つのEDにおいて実施された前向き多施設観察研究であり、EDスタッフによるCFSによる虚弱の評価が日常的に行われている。65歳以上の全患者を対象とした。7日、30日、90日後の死亡率、入院率、EDおよび入院期間(LOS)を、虚弱(CFS≧5)患者と健常患者で比較した。交絡因子の調整にはロジスティック回帰を用いた。
結果:研究期間中にEDを受診した65歳以上のCFS診断患者 1,840例を解析し、うち 606例(32.9%)が虚弱患者であった。7日後(2.6% vs. 0.2%)、30日後(7.9% vs. 0.9%)、90日後(15.5% vs. 2.4%)の死亡率は、虚弱患者で高かった。より頑健な患者と比較した虚弱患者の死亡率の調整後ORは、7日死亡率9.9(95%CI 2.1~46.5)、30日死亡率6.0(95%CI 3.0~12.2)、90日死亡率5.7(95%CI 3.6~9.1)であった。虚弱患者では入院率が高く、58% vs. 36%、その差22%(95%CI 17%〜26%)、ED LOSが長く、5時間08分 vs. 4時間36分、その差31分(95%CI 14〜50)、院内LOSが長く、4.8日 vs. 2.7日、その差2.2日(95%CI 1.2〜3.0)であった。
結論:虚弱を有する患者は、頑健な患者と比較して、死亡率と入院率が有意に高く、救急搬送期間と入院期間も長かった。この結果は、臨床フレイルスケールが高齢ED受診患者の短期死亡率をリスク層別化できることを確認するものである。
試験登録番号:NCT04877028
キーワード:臨床評価、救急部、虚弱、老年医学、トリアージ
引用文献
Frailty is associated with 30-day mortality: a multicentre study of Swedish emergency departments
Samia Munir Ehrlington et al. PMID: 39053972 DOI: 10.1136/emermed-2023-213444
Emerg Med J. 2024 Jul 24:emermed-2023-213444. doi: 10.1136/emermed-2023-213444. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39053972/
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