好酸球性食道炎の小児患者に対するデュピルマブの効果は?
デュピルマブはインターロイキン-4およびインターロイキン-13経路を遮断するヒトモノクローナル抗体であり、成人および青年の好酸球性食道炎を含む、2型炎症を特徴とする5種類のアトピー性疾患に有効性を示しています。しかし、12歳未満の小児に対する検証は充分ではありません。
そこで今回は、プロトンポンプ阻害薬が無効であった1~11歳の活動性好酸球性食道炎患者を対象に、デュピルマブの有効性。安全性を検証した第3相ランダム化比較試験(EoE KIDS試験)の結果をご紹介します。
試験参加者は、16週間の高用量デュピルマブ皮下投与レジメンまたは低用量デュピルマブ皮下投与レジメン、あるいはプラセボ群(2群)に2:2:1:1の割合でランダムに割り付けられました(パートA)。パートAが終了した時点で、各デュピルマブ群の適格患者は同じレジメンを継続し、プラセボ群の患者はより高用量のデュピルマブまたはより低い用量のデュピルマブに36週間割り付けられた(パートB)。それぞれの曝露レベルにおいて、デュピルマブはベースラインの体重に応じて段階的に投与された。
主要エンドポイントは16週目の組織学的寛解(食道上皮内好酸球数のピーク、高倍率視野あたり6以下)であった。主要な副次的エンドポイントは階層的に検証された。
試験結果から明らかになったことは?
(パートA) | 高用量群 | 低用量群 | プラセボ群 |
組織学的寛解 | 37例中25例(68%) | 31例中18例(58%) | 34例中1例(3%) |
プラセボ群との差 | 差 65%ポイント (95%CI、48~81) P<0.001 | 差 55%ポイント (95%CI 37~73) P<0.001 | – |
パートAでは、組織学的寛解は高用量群37例中25例(68%)、低用量群31例中18例(58%)、プラセボ群34例中1例(3%)に認められました(高用量レジメンとプラセボとの差 65%ポイント、95%信頼区間 CI、48~81;P<0.001;低用量レジメンとプラセボとの差 55%ポイント、95%CI 37~73;P<0.001)。
デュピルマブ高用量レジメンは、プラセボと比較して、組織学的、内視鏡的、およびトランスクリプトーム解析において有意な改善をもたらしました。すべての患者におけるベースラインから52週目までの組織学的、内視鏡的、およびトランスクリプトーム指標の改善は、パートAでデュピルマブを投与された患者におけるベースラインから16週目までの改善と概ね同様でした。
パートAでは、新型コロナウイルス感染症、吐き気、注射部位の痛み、および頭痛の発生率は、デュピルマブ(いずれの用量でも)を投与された患者では、プラセボを投与された患者よりも少なくとも10ポイント高いことが示されました。
重篤な有害事象は、パートAではデュピルマブ投与群3例、パートBでは全体で6例で報告されました。
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デュピルマブはインターロイキン-4およびインターロイキン-13経路を遮断するヒトモノクローナル抗体であり、2型炎症に分類されるアレルギー疾患に対して効果が期待できます。しかし、好酸球性食道炎を有する小児に対する検証は不充分です。
さて、ランダム化比較試験の結果、デュピルマブはプラセボと比較して、小児の好酸球性食道炎患者において有意に高い割合で組織学的寛解をもたらしました。低用量、高用量でもプラセボと比較して、有意な組織学的寛解が認められたことは、青年や成人の結果と同様です。
ただし、対象患者はプロトンポンプ阻害薬が無効であったことから、より重症度の高い患者です。デュピルマブがファースライン治療ではないことは念頭におきましょう。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、デュピルマブはプラセボと比較して、小児の好酸球性食道炎患者において有意に高い割合で組織学的寛解をもたらした。
根拠となった試験の抄録
背景:デュピルマブはインターロイキン-4およびインターロイキン-13経路を遮断するヒトモノクローナル抗体であり、成人および青年の好酸球性食道炎を含む、2型炎症を特徴とする5種類のアトピー性疾患に有効性を示している。
方法:この第3相試験では、プロトンポンプ阻害薬が無効であった1~11歳の活動性好酸球性食道炎患者を、16週間の高用量デュピルマブ皮下投与レジメンまたは低用量デュピルマブ皮下投与レジメン、あるいはプラセボ群(2群)に2:2:1:1の割合でランダムに割り付けた(パートA)。パートAが終了した時点で、各デュピルマブ群の適格患者は同じレジメンを継続し、プラセボ群の患者はより高用量のデュピルマブまたはより低用量のデュピルマブに36週間割り付けられた(パートB)。それぞれの曝露レベルにおいて、デュピルマブはベースラインの体重に応じて段階的に投与された。
主要エンドポイントは16週目の組織学的寛解(食道上皮内好酸球数のピーク、高倍率視野あたり6以下)であった。主要な副次的エンドポイントは階層的に検証された。
結果:パートAでは、組織学的寛解は高用量群37例中25例(68%)、低用量群31例中18例(58%)、プラセボ群34例中1例(3%)に認められた(高用量レジメンとプラセボとの差 65%ポイント、95%信頼区間 CI、48~81;P<0.001;低用量レジメンとプラセボとの差 55%ポイント、95%CI 37~73;P<0.001)。デュピルマブ高用量レジメンは、プラセボと比較して、組織学的、内視鏡的、およびトランスクリプトーム解析*において有意な改善をもたらした。すべての患者におけるベースラインから52週目までの組織学的、内視鏡的、およびトランスクリプトーム指標の改善は、パートAでデュピルマブを投与された患者におけるベースラインから16週目までの改善と概ね同様であった。パートAでは、新型コロナウイルス感染症、吐き気、注射部位の痛み、および頭痛の発生率は、デュピルマブ(いずれの用量でも)を投与された患者では、プラセボを投与された患者よりも少なくとも10ポイント高かった。重篤な有害事象は、パートAではデュピルマブ投与群3例、パートBでは全体で6例で報告された。
*細胞、組織中に蓄積するRNA全体をトランスクリプトームと呼び、それを網羅的に解析する。
結論:デュピルマブはプラセボと比較して、小児の好酸球性食道炎患者において有意に高い割合で組織学的寛解をもたらした。また、デュピルマブの高投与量レジメンはプラセボと比較して主要な副次的エンドポイントの改善にもつながった。
資金提供:サノフィ社およびリジェネロン社。
試験登録番号:ClinicalTrials.gov番号 NCT04394351
引用文献
Dupilumab for Eosinophilic Esophagitis in Patients 1 to 11 Years of Age
Mirna Chehade et al. PMID: 38924731 DOI: 10.1056/NEJMoa2312282
N Engl J Med. 2024 Jun 27;390(24):2239-2251. doi: 10.1056/NEJMoa2312282.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38924731/
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