オミクロンBA.1/BA.2流行期におけるワクチン接種の効果は?
高所得国を含む多くの国が、抗原的に異なる進化を遂げたオミクロン変異体(B.1.1.529)による流行波の制御に苦慮していました。オミクロン流行期におけるワクチン接種の直接的・間接的効果を評価することは、ウイルス対策政策を評価する上で不可欠です。
そこで今回は、BA.1およびBA.2による第6波が2022年1月から5月にかけて東京で発生した際のワクチン接種プログラムの集団への影響を評価したモデル解析研究の結果をご紹介します。
一次予防接種と二次予防接種の接種率、および接種歴別に層別化した確定症例が分析されました。ワクチン接種によって直接および間接的に予防されたCOVID-19症例数が推定されました。
直接的影響の推定には、ワクチン未接種者とワクチン接種者のリスクを比較する統計モデルが用いられました。直接効果と間接効果の合計として与えられる総効果を定量化するために、更新過程を採用した伝播モデルが考案されました。
試験結果から明らかになったことは?
症例報告率を25%と仮定すると、初回接種とブースター接種を含む集団予防接種プログラムにより、64万人のCOVID-19症例が直接的に回避されました(95%信頼区間 62.4〜65.5)。
さらに、これらのプログラムによって直接・間接的に8.5百万人の感染が予防されました(95%信頼区間 8.4〜8.6)。
仮定のシナリオによると、ブースター接種率が2回目の接種率と同等であった場合、または10~49歳における接種率が10%高かった場合には、観察された感染数と比較して、それぞれ19%または7%の相対的な感染数の減少が期待できました。3回目の接種率が低く、4回目の接種率と同程度であった場合、総感染数は観察された感染数と比較して52%増加した可能性があります。
コメント
ワクチン接種の効果について、これまでの研究報告の結果を踏まえると疑いようの余地はありません。しかし、日本における研究結果については限られています。
さて、モデル解析研究の結果、オミクロンBA.1およびBA.2による第6波における東京でのSARS-CoV-2感染者数は、ワクチン接種により、ワクチン接種なしと比較して65%減少すると推定されました。
あくまでもモデル解析の結果であることから、リアルワールドにおける効果については割引いて捉えておいた方が良いと考えられます。また、ワクチンの感染予防効果は集団における接種率に大きく影響を受けることから、接種率を向上させる取り組み(施策)が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ オミクロンBA.1およびBA.2による第6波における東京でのSARS-CoV-2感染者数は、ワクチン接種により、ワクチン接種なしと比較して65%減少したと推定された。
根拠となった試験の抄録
背景:高所得国を含む多くの国が、抗原的に異なる進化を遂げたオミクロン変異体(B.1.1.529)による流行波の制御に苦慮していた。オミクロン波におけるワクチン接種の直接的・間接的効果を評価することは、ウイルス対策政策を評価する上で不可欠である。本研究では、BA.1およびBA.2による第6波が2022年1月から5月にかけて東京で発生した際のワクチン接種プログラムの集団への影響を評価した。
方法:一次予防接種と二次予防接種の接種率、および接種歴別に層別化した確定症例を分析した。ワクチン接種によって直接および間接的に予防されたCOVID-19症例数を推定した。直接的影響の推定には、ワクチン未接種者とワクチン接種者のリスクを比較する統計モデルを用いた。直接効果と間接効果の合計として与えられる総効果を定量化するために、更新過程を採用した伝播モデルを考案した。
結果:症例報告率を25%と仮定すると、初回接種とブースター接種を含む集団予防接種プログラムにより、64万人のCOVID-19症例が直接的に回避された(95%信頼区間 624〜655)。さらに、これらのプログラムによって直接・間接的に8.5百万人の感染が予防された(95%信頼区間 8.4〜8.6)。仮定のシナリオによると、ブースター接種率が2回目の接種率と同等であった場合、または10~49歳における接種率が10%高かった場合には、観察された感染数と比較して、それぞれ19%または7%の相対的な感染数の減少が期待できた。3回目の接種率が低く、4回目の接種率と同程度であった場合、総感染数は観察された感染数と比較して52%増加したであろう。
結論:BA.1およびBA.2による第6波における東京でのSARS-CoV-2感染者数は、反事実(ワクチン接種なし)と比較して65%減少したと推定された。
キーワード:COVID-19、直接効果、予防接種、間接効果、集団レベルの影響
引用文献
Assessing the COVID-19 vaccination program during the Omicron variant (B.1.1.529) epidemic in early 2022, Tokyo
Taishi Kayano et al. PMID: 37907865 PMCID: PMC10619277 DOI: 10.1186/s12879-023-08748-1
BMC Infect Dis. 2023 Oct 31;23(1):748. doi: 10.1186/s12879-023-08748-1.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37907865/
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