フィブラート系薬による心血管イベントのリスク低下作用はどのくらいか?
心血管系リスクに対するフィブラート治療の効果は一貫していません。
そこで今回は、主要有害心血管転帰(MACE)減少に対するフィブラートの効果を評価するために実施されたメタ解析の結果をご紹介します。
本試験では、PubMed、Embase、Cochrane libraryの各データベースから、フィブラート療法をプラセボと比較し、心血管転帰と脂質プロファイルの変化を報告したランダム化比較試験が2023年2月まで検索されました。
本試験の主要アウトカムは、MACE(心血管死、急性心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合)に最も近い各試験の臨床転帰でした。また、フィブラート治療後の脂質値の変化とMACEリスクとの関係を検討するために、事前に規定したメタ回帰分析も行われました。
試験結果から明らかになったことは?
最終解析には12件の試験が選択され、フィブラート群では患者 25,781例、MACE 2,741例、対照群では患者 27,450例、MACE 3,754例でした。
RR(95%CI) フィブラート系薬 vs. プラセボ | |
MACE | RR 0.87(0.81〜0.94) |
LDL-C値の変化(1mmol/L減少するごとに) | RR 0.71(0.49〜0.94) p=0.01 |
トリグリセリド値の変化 | RR 0.96(0.53〜1.40) p=0.86 |
全体として、フィブラート療法はMACEリスクの低下と関連していました(RR 0.87、95%信頼区間[CI] 0.81〜0.94)。
メタ回帰分析では、フィブラート治療後に低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)が1mmol/L減少するごとにMACEが減少しました(RR 0.71、95%CI 0.49〜0.94、p=0.01)が、トリグリセリド値の変化は有意な関連を示しませんでした(RR 0.96、95%CI 0.53〜1.40、p=0.86)。
心血管死または急性心筋梗塞の複合アウトカムを用いた感度分析でも同様の結果が得られました。
コメント
フィブラート系薬には多くの作用があり、作用機序は明確ではありませんが、一般的な作用機序として、核内受容体peroxisome proliferator-activated receptor α(PPARα)の活性化が考えられています。PPARα活性化によるリポたん白質リパーゼ(LPL)発現量の増加、血漿トリグリセリド値の低下がフィブラート系薬の主作用と考えられています。しかし、トリグリセリド値の低下が患者予後にどの程度影響するのかについては明らかになっていません。
さて、ランダム化比較試験のメタ解析の結果によれば、フィブラートによる治療はMACEリスクの低下と関連していました。ただし、フィブラート治療によるMACEリスクの減少は、トリグリセリド値の減少よりもLDL-Cの減少に起因するようでした。
トリグリセリド(中性脂肪)は、膵炎リスクの増加と関連していることが報告されていますが、値は1,000〜1,200mg/dL以上とされています。一方、心血管イベントとの関連性については明確ではありません。
これまでの報告も踏まえると、患者予後に対してより影響するのはLDL-C値(より正確には低下の程度)であり、中性脂肪の影響はかなり低いと考えられます。もちろん、患者背景により影響度が異なることから、どのような患者背景であれば、中性脂肪が転帰により影響するのか検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ フィブラートによる治療はMACEリスクの低下と関連した。フィブラート治療によるMACEリスクの減少は、トリグリセリド値の減少よりもむしろLDL-Cの減少に起因するようであった。
根拠となった試験の抄録
目的:心血管系リスクに対するフィブラート治療の効果は一貫していない。このメタ解析の目的は、主要有害心血管転帰(MACE)減少に対するフィブラートの効果を評価することである。
方法:PubMed、Embase、Cochrane libraryの各データベースから、フィブラート療法をプラセボと比較し、心血管転帰と脂質プロファイルの変化を報告したランダム化比較試験を2023年2月まで検索した。
主要アウトカムは、MACE(心血管死、急性心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合)に最も近い各試験の臨床転帰とした。また、フィブラート治療後の脂質値の変化とMACEリスクとの関係を検討するために、事前に規定したメタ回帰分析も行った。
結果:最終解析には12件の試験が選択され、フィブラート群では患者 25,781例、MACE 2,741例、対照群では患者 27,450例、MACE 3,754例であった。全体として、フィブラート療法はMACEリスクの低下と関連していた(RR 0.87、95%信頼区間[CI] 0.81〜0.94)。メタ回帰分析では、フィブラート治療後に低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)が1mmol/L減少するごとにMACEが減少した(RR 0.71、95%CI 0.49〜0.94、p=0.01)が、トリグリセリド値の変化は有意な関連を示さなかった(RR 0.96、95%CI 0.53〜1.40、p=0.86)。心血管死または急性心筋梗塞の複合アウトカムを用いた感度分析でも同様の結果が得られた。
結論:フィブラートによる治療はMACEリスクの低下と関連した。フィブラート治療によるMACEリスクの減少は、トリグリセリド値の減少よりもむしろLDL-Cの減少に起因するようであった。
キーワード:アポリポ蛋白、心血管リスク、フィブラート、低比重リポ蛋白コレステロール、トリグリセリド
引用文献
The Effect of Fibrates on Lowering Low-Density Lipoprotein Cholesterol and Cardiovascular Risk Reduction: A Systemic Review and Meta-analysis
Kyung An Kim et al. PMID: 37855457 DOI: 10.1093/eurjpc/zwad331
Eur J Prev Cardiol. 2023 Oct 19:zwad331. doi: 10.1093/eurjpc/zwad331. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37855457/
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