HIV感染者の心血管疾患予防にピタバスタチンは有効ですか?(RCT; N Engl J Med. 2023)

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HIV患者の心血管疾患リスクはピタバスタチンで低減できるのか?

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者では、非感染者と比較して心血管疾患のリスクが増加することが報告されています。したがって、この集団における一次予防戦略に関するデータが必要です。

そこで今回は、HIV感染者におけるピタバスタチン投与が心血管疾患リスクを低減できるか検証したランダム化比較試験の結果をご紹介します。

この第3相試験では、抗レトロウイルス療法を受けている心血管疾患のリスクが低~中等度のHIV感染者7,769例を、ピタバスタチンカルシウム(4mg)を毎日投与する群とプラセボを毎日投与する群にランダムに割り付けられました。

本試験の主要転帰は主要有害心血管イベント(MACE)の発生とし、心血管死、心筋梗塞、不安定狭心症による入院、脳卒中、一過性脳虚血発作、末梢動脈虚血、血行再建術、原因不明の死亡の複合とされました。

試験結果から明らかになったことは?

参加者の年齢中央値は50歳(四分位範囲 45~55)、CD4は中央値 621個/mm3(四分位範囲 448~827)、HIV RNA値はデータが得られた5,997例中5,250例(87.5%)で定量値以下でした。追跡期間中央値5.1年(四分位範囲 4.3~5.9)の後、有効性のため試験は早期に中止されました。

ピタバスタチン群
(/1,000人・年)
プラセボ群
(/1,000人・年)
ハザード比
(95%CI)
MACE発生率4.81例7.32例ハザード比 0.65
0.48~0.90
P=0.002

主要な心血管有害事象の発生率は、ピタバスタチン群で1,000人・年あたり4.81例、プラセボ群で1,000人・年あたり7.32例でした(ハザード比 0.65、95%信頼区間[CI] 0.48~0.90、P=0.002)。

筋肉関連症状はピタバスタチン群で91例(2.3%)、プラセボ群で53例(1.4%)に、糖尿病はそれぞれ206例(5.3%)、155例(4.0%)に発現しました。

コメント

HIV患者では、健常者と比較して心血管疾患(脳卒中や虚血性心疾患)のリスク増加が報告されています。この原因は依然として不明ではありますが、疾患そのものあるいは抗ウイルス薬などの関与が示唆されています。また、HIV患者では血清HDLコレステロール低値や中性脂肪高値が高頻度に認められることから、脂質異常症の長期的な影響が心血管リスクを増加させている可能性があります。したがって、脂質異常症の治療薬であるスタチン系薬の投与が、HIV患者の心血管リスクを低減できる可能性があります。

さて、ランダム化比較試験の結果、HIV感染者でピタバスタチンを投与された参加者はプラセボを投与された参加者よりも、追跡期間中央値5.1年において主要有害心血管イベント(MACE)のリスクが低いことが示されました。本試験のMACEの定義は「心血管死、心筋梗塞、不安定狭心症による入院、脳卒中、一過性脳虚血発作、末梢動脈虚血、血行再建術、原因不明の死亡」です。構成要素のうち、どのアウトカムの発生率低下が影響しているのか気にかかるところです。

本試験の対象は、抗レトロウイルス療法を受けている心血管疾患のリスクが低~中等度のHIV患者であることから、これらの背景を有する患者においては、ピタバスタチンの投与を考慮した方が良さそうです。

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✅まとめ✅ HIV感染者でピタバスタチンを投与された参加者はプラセボを投与された参加者よりも、追跡期間中央値5.1年において主要有害心血管イベントのリスクが低かった。

根拠となった試験の抄録

背景:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者では心血管疾患のリスクが増加するため、この集団における一次予防戦略に関するデータが必要である。

方法:この第3相試験では、抗レトロウイルス療法を受けている心血管疾患のリスクが低~中等度のHIV感染者7,769例を、ピタバスタチンカルシウム(4mg)を毎日投与する群とプラセボを毎日投与する群にランダムに割り付けた
主要転帰は主要有害心血管イベントの発生とし、心血管死、心筋梗塞、不安定狭心症による入院、脳卒中、一過性脳虚血発作、末梢動脈虚血、血行再建術、原因不明の死亡の複合とした。

結果:参加者の年齢中央値は50歳(四分位範囲 45~55)、CD4は中央値 621個/mm3(四分位範囲 448~827)、HIV RNA値はデータが得られた5,997例中5,250例(87.5%)で定量値以下であった。追跡期間中央値5.1年(四分位範囲 4.3~5.9)の後、有効性のため試験は早期に中止された。主要な心血管有害事象の発生率は、ピタバスタチン群で1,000人・年あたり4.81例、プラセボ群で1,000人・年あたり7.32例であった(ハザード比 0.65、95%信頼区間[CI] 0.48~0.90、P=0.002)。筋肉関連症状はピタバスタチン群で91例(2.3%)、プラセボ群で53例(1.4%)に発現した。糖尿病はそれぞれ206例(5.3%)、155例(4.0%)に発現した。

結論:HIV感染者でピタバスタチンを投与された参加者はプラセボを投与された参加者よりも、追跡期間中央値5.1年において主要な有害心血管イベントのリスクが低かった。

資金提供:米国国立衛生研究所 他

ClinicalTrials.gov番号:NCT02344290

引用文献

Pitavastatin to Prevent Cardiovascular Disease in HIV Infection
Steven K Grinspoon et al. PMID: 37486775 DOI: 10.1056/NEJMoa2304146
N Engl J Med. 2023 Jul 23. doi: 10.1056/NEJMoa2304146. Online ahead of print.
— 読み進める www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2304146

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