RNA干渉治療薬ジルベシランによる降圧効果はどのくらいですか?(RCT; N Engl J Med. 2023)

a doctor measuring his patient s blood pressure using a sphygmomanometer 02_循環器系
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iRNA(RNA干渉)治療薬であるジルベシランの効果はどのくらいか?

アンギオテンシノーゲンはアンギオテンシンペプチドの唯一の前駆体であり、高血圧の発症において重要な役割を担っています。

ジルベシラン(Zilebesiran)は、作用時間が長く、肝アンジオテンシノーゲン合成を阻害するRNA干渉治療薬としての開発が進んでいます。

今回ご紹介するのは、高血圧患者を2:1の割合でランダムに割り付け、ジルベシラン(10、25、50、100、200、400、800mg)とプラセボのいずれかを単回皮下投与し、24週間追跡した(パートA)第1相試験です。また、パートBでは低食塩または高食塩条件下でのジルベシラン800mg用量の血圧に対する効果を、パートEではイルベサルタンと併用した場合の効果が評価されました。

本試験のエンドポイントは安全性、薬物動態学的および薬力学的特性、24時間外来血圧測定による収縮期および拡張期血圧のベースラインからの変化でした。

試験結果から明らかになったことは?

登録された107例の患者のうち、5例で軽度かつ一過性の注射部位反応がみられました。低血圧、高カリウム血症、腎機能の悪化による医療介入の報告はありませんでした。

ジルベシランを投与された患者は、投与量と相関する血清アンジオテンシノーゲン値の低下を認めました(8週目におけるr=-0.56、95%信頼区間 -0.69 ~ -0.39)。

ジルベシランの単回投与(≧200mg)は、8週目までに収縮期血圧(>10mmHg)および拡張期血圧(>5mmHg)の低下と関連していました。これらの変化は日周期を通して一貫しており、24週目においても持続していました。

パートBとEの結果は、それぞれ高塩分食による血圧改善効果の減弱とイルベサルタンとの併用による効果の増強と一致していました。

コメント

高血圧治療の目的は、生涯にわたり健康な人と変わりない生活を送ることにあります。具体的には、持続的な高血圧状態に伴う脳卒中や心筋梗塞の発症リスクを低減させることにあります。安定した降圧を実現するために降圧薬による治療が行われていますが、服薬アドヒアランスや降圧効果の個人差等の影響により、24時間にわたる降圧には課題が残されています。

RNA干渉(siRNA : small interfering RNA)とは、21~23bpの短鎖二本鎖RNAまたは長鎖二本鎖RNA(double-strand RNA;dsRNA)が、その標的遺伝子の転写産物(mRNA)の相同部分を切断することにより、遺伝子の発現を抑制する現象です。

開発中のジルベシラン(Zilebesiran)は、作用時間が長く、肝アンジオテンシノーゲン合成を阻害するRNA干渉治療薬です。1回の投与で数週間にわたる効果が期待できますが、実臨床での検証は充分ではありません。

さて、第1相ランダム化比較試験の結果、200mg以上のジルベシラン単回皮下投与は、プラセボと比較して血清アンジオテンシノーゲン値および24時間外来血圧の用量依存的低下を示しました。この効果は24週間まで持続しました。登録患者107例のうち、5例で軽度かつ一過性の注射部位反応がみられましたが、低血圧、高カリウム血症、腎機能の悪化による医療介入の報告はありませんでした。

プラセボと比較して有効性が示され、大きな安全性の懸念はないようです。さらなる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 血清アンジオテンシノーゲン値および24時間外来血圧の用量依存的低下は、200mg以上のジルベシラン単回皮下投与後、24週間まで持続した。

根拠となった試験の抄録

背景:アンギオテンシノーゲンはアンギオテンシンペプチドの唯一の前駆体であり、高血圧の発症において重要な役割を担っている。ジルベシラン(Zilebesiran)は、作用時間が長く、肝アンジオテンシノーゲン合成を阻害するRNA干渉治療薬である。

方法:この第1相試験では、高血圧患者を2:1の割合でランダムに割り付け、ジルベシラン(10、25、50、100、200、400、800mg)とプラセボのいずれかを単回皮下投与し、24週間追跡した(パートA)。パートBでは低食塩または高食塩条件下でのジルベシラン800mg用量の血圧に対する効果を、パートEではイルベサルタンと併用した場合の効果を評価した。エンドポイントは安全性、薬物動態学的および薬力学的特性、24時間外来血圧測定による収縮期および拡張期血圧のベースラインからの変化であった。

結果:登録された107例の患者のうち、5例に軽度の一過性の注射部位反応がみられた。低血圧、高カリウム血症、腎機能の悪化による医療介入の報告はなかった。パートAでは、ジルベシランを投与された患者は、投与量と相関する血清アンジオテンシノーゲン値の低下を認めた(8週目におけるr=-0.56、95%信頼区間 -0.69 ~ -0.39)。ジルベシランの単回投与(≧200mg)は、8週目までに収縮期血圧(>10mmHg)および拡張期血圧(>5mmHg)の低下と関連していた。これらの変化は日周期を通して一貫しており、24週目においても持続していた。パートBとEの結果は、それぞれ高塩分食による血圧改善効果の減弱とイルベサルタンとの併用による効果の増強と一致していた。

結論:血清アンジオテンシノーゲン値および24時間外来血圧の用量依存的低下は、200mg以上のジルベシランの単回皮下投与後、24週間まで持続した。軽度の注射部位反応が認められた。

資金提供:Alnylam Pharmaceuticals

ClinicalTrials.gov番号:NCT03934307
EudraCT番号:2019-000129-39

引用文献

Zilebesiran, an RNA Interference Therapeutic Agent for Hypertension
Akshay S Desai et al. PMID: 37467498 DOI: 10.1056/NEJMoa2208391
N Engl J Med. 2023 Jul 20;389(3):228-238. doi: 10.1056/NEJMoa2208391.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37467498/

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