心房細動に対するジゴキシンは有害?
心不全を伴う心房細動に対してジゴキシンが使用されますが、死亡リスクが増加する報告もあることから、さらなる検証が求められています。
そこで今回は、心不全(HF)の有無にかかわらず、心房細動(AF)患者におけるジゴキシン使用に伴う死亡リスクに関するエビデンスの確からしさを評価するために実施された系統的なアンブレラレビュー・メタ解析の結果をご紹介します。
本試験では、創刊から2021年10月19日までのMEDLINE、Embase、Web of Scienceの各データベースが系統的に検索されました。AFおよび/またはHFを有する成人患者の死亡率に対するジゴキシンの効果を調査した観察研究のシステマティックレビューおよびメタ解析が含められました。
主要アウトカムは全死亡、副次アウトカムは心血管系死亡でした。
エビデンスの確実性はGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)ツールで、システマティックレビュー/メタ解析の質はAMSTAR2(A MeaSurement Tool to Assess systematic Reviews 2)ツールで評価されました。
試験結果から明らかになったことは?
12件のメタ解析を含む研究11件が含まれ、総患者数は4,586,515例でした。AMSTAR2による研究の質の解析では、1つの研究で高く、5つの研究で中程度、2つの研究で低く、3つの研究で致命的に低いことが示されました。
ハザード比 HR (95%CI) | |
全死亡率 | HR]1.19(1.14~1.25) エビデンスの確実性は中程度 |
心血管死亡率 | HR 1.19(1.06~1.33) エビデンスの確実性は中程度 |
ジゴキシンは、全死亡率の増加(ハザード比[HR]1.19、95%信頼区間[95%CI]1.14~1.25、エビデンスの確実性は中程度)、心血管死亡率の増加(HR 1.19、95%CI 1.06~1.33、エビデンスの確実性は中程度)と関連していました。
ハザード比 HR (95%CI) | |
心房細動患者(心不全なし) | HR 1.23(1.19~1.28) |
心不全を伴う心房細動患者 | HR 1.14(1.12~1.16) |
サブグループ解析では、ジゴキシンは、心房細動のみの患者(HR 1.23、95%CI 1.19~1.28)、HFを伴う心房細動患者(HR 1.14、95%CI 1.12~1.16)の両方において全死亡と関連していることが明らかとなりました。
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ジギタリス製剤の歴史は長く、例えば、ジゴシン錠は1957年10月16日に販売されています。実臨床での使用実績から多くのエビデンスが蓄積していますが、時代背景や患者背景の変化により、リスクベネフィットのバランスが変化しています。そのため、エビデンスの更新が求められています。
さて、本試験結果によれば、ジゴキシンの使用は、心不全(HF)の有無にかかわらず、心房細動(AF)患者の全死亡および心血管死亡の中程度のリスク上昇と関連することが示されました。
本試験の結果は、過去の報告と同様です。加えて、診療ガイドラインの第一選択薬からジギタリス製剤は外れています。
以上のことから心不全を伴う心房細動患者(レートコントロール)において、β遮断薬が使用できないときにはジゴキシンが積極的適用となりますが、それ以外では使用する機会は少ないようです。
☑まとめ☑ ジゴキシンの使用は、HFの有無にかかわらず、AF患者の全死亡および心血管死亡の中程度のリスク上昇と関連することが示された。
根拠となった試験の抄録
目的:心不全(HF)の有無にかかわらず、心房細動(AF)患者におけるジゴキシン使用に伴う死亡リスクに関するエビデンスの確からしさを評価するために、メタ解析による系統的なアンブレラレビューを実施する。
方法:創刊から2021年10月19日までのMEDLINE、Embase、Web of Scienceの各データベースを系統的に検索した。AFおよび/またはHFを有する成人患者の死亡率に対するジゴキシンの効果を調査した観察研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を含めた。
主要アウトカムは全死亡、副次アウトカムは心血管系死亡とした。エビデンスの確実性はGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)ツールで、システマティックレビュー/メタ解析の質はAMSTAR2(A MeaSurement Tool to Assess systematic Reviews 2)ツールで評価された。
結果:12件のメタ解析を含む11件の研究が含まれ、総患者数は4,586,515例であった。AMSTAR2による解析では、1つの研究で質が高く、5つの研究で中程度、2つの研究で低く、3つの研究で致命的に低いことが示された。ジゴキシンは、全死亡率(ハザード比[HR]1.19、95%信頼区間[95%CI]1.14~1.25、エビデンスの確実性は中程度)、心血管死亡率(HR 1.19、95%CI 1.06~1.33、エビデンスの確実性は中程度)のリスク増加と関連していた。サブグループ解析では、ジゴキシンは、心房細動のみの患者(HR 1.23、95%CI 1.19~1.28)、心房細動とHFの患者(HR 1.14、95%CI 1.12~1.16)の両方で全死亡と関連していることがわかった。
結論:このアンブレラレビューのデータから、ジゴキシンの使用は、HFの有無にかかわらず、AF患者の全死亡および心血管死亡の中程度のリスク上昇と関連することが示された。
試験登録:PROSPERO(CRD42022325321)
キーワード:全死亡率、心房細動、心血管死亡率、ジゴキシン、心不全
引用文献
Effect of digoxin on all-cause and cardiovascular mortality in patients with atrial fibrillation with and without heart failure: an umbrella review of systematic reviews and 12 meta-analyses
Gianluca Gazzaniga et al. PMID: 36872367 DOI: 10.1007/s00228-023-03470-y
Eur J Clin Pharmacol. 2023 Mar 6. doi: 10.1007/s00228-023-03470-y. Online ahead of print.
— 読み進める link.springer.com/article/10.1007/s00228-023-03470-y
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