慢性腎臓病患者における尿素値と心血管疾患との関連性はどのくらい?(前向きコホート研究; CKD-REIN試験; Nephrol Dial Transplant. 2022)

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CKD患者における尿素値と心血管疾患との関連性はどのくらいなのか?

血清尿素値の上昇は、中等度から進行性のCKDによくみられる。いくつかの研究により、尿素は特に心血管疾患に関する直接的および間接的な尿毒症毒素であることが示されています。しかし、充分に検証されていません。

そこで今回は、CKD患者における腎代替療法(RRT)前の血清尿素値が有害な心血管イベントおよび死亡と関連するかどうかを目的に実施された前向きコホート研究の結果をご紹介します。

本試験(CKD-REIN)は、腎臓内科で維持透析を受けていないCKD外来患者を対象とした前向きコホートであり、解析対象となった2,507例の患者はベースラインの血清尿素値によって3群に分けられました(T1<10.5、T2:10.5~15.1、T3≧15.1mmol/L*)。*T1<1.78、T2:1.78~2.56、T3≧2.56mg/dL

本試験の評価項目はRRT前の最初のアテローム性または非アテローム性心血管系(CV)イベントおよび全死因死亡であり、ハザード比(HR)を推定するためにCox比例ハザードモデルが使用されました(ベースラインの併存疾患、検査データ、および薬物療法で調整された)。

試験結果から明らかになったことは?

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9869852/より引用

対象患者2,507例(年齢中央値] 69[IQR 61~77];平均 eGFR 33.5(SD 11.6)mL/min/1.73 m²)中、54%が心血管疾患の既往を有していました。

心血管リスク因子(eGFRを含む)について複数の調整を行った後、T3患者はT1患者よりもアテローム性および非アテローム性心血管イベントのリスクが高かいことが示されました(451イベント、HR 1.93[95%CI 1.39~2.69])。

RRT前の死亡(407イベント)の調整済みHRは、T2患者とT3患者でそれぞれ1.31[0.97~1.76]と1.73[1.22~2.45]でした。

コメント

CKD患者における尿素値と心血管疾患との関連性については結論が得られていません。

さて、本試験結果によれば、維持透析を受けていないCKD外来患者において、尿素は、eGFRを含むCVリスク因子を超える心血管予後の予測因子であることが示唆されました。本試験では尿素値が正常範囲内の患者を対象としていますので、異常値を示す患者における尿素の影響は不明です。また、正常値高値の患者集団における尿素低下戦略により、心血管や死亡リスクが低下するのかについても不明です。

以前の臨床試験で、CKD患者における尿酸値低下戦略は予後に影響しないことが報告されています。一方、尿素値については結論が得られておらず、今後の検証結果が待たれます。

続報に期待。

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☑まとめ☑ 尿素は、eGFRを含むCVリスク因子を超える心血管予後の予測因子であることが示唆された。

根拠となった試験の抄録

背景:血清尿素値の上昇は、中等度から進行期のCKDによくみられる。いくつかの研究により、尿素は特に心血管疾患に関する直接的および間接的な尿毒症毒素であることが示されている。我々は、CKD患者における腎代替療法(RRT)前の血清尿素値が有害な心血管イベントおよび死亡と関連するかどうかを明らかにすることを目指した。

方法:CKD-REINは、腎臓内科で維持透析を受けていないCKD外来患者の前向きコホートである。解析対象となった2,507例の患者をベースラインの血清尿素値によって3群に分けた(T1<10.5、T2:10.5~15.1、T3≧15.1mmol/L)。RRT前の最初のアテローム性または非アテローム性心血管系(CV)イベントおよび全死因死亡のハザード比(HR)を推定するためにCox比例ハザードモデルを使用した。モデルは、ベースラインの併存疾患、検査データ、および薬物療法で調整した。

所見:対象患者2,507例(年齢中央値] 69[IQR 61~77];平均 eGFR 33.5(SD 11.6)mL/min/1.73 m²)中、54%が心血管疾患の既往を有していた。心血管危険因子(eGFRを含む)について複数の調整を行った後、T3患者はT1患者よりもアテローム性および非アテローム性心血管イベントのリスクが高かった(451イベント、HR 1.93[95%CI 1.39~2.69])。RRT前の死亡(407イベント)の調整済みHRは、T2患者とT3患者でそれぞれ1.31[0.97~1.76]と1.73[1.22~2.45]であった。

解釈:尿素は、eGFRを含むCV危険因子を超える心血管予後の予測因子であることが示唆された。

キーワード:心血管系疾患、慢性腎臓病、尿素、尿毒症毒素

引用文献

Urea levels and cardiovascular disease in patients with chronic kidney disease
Solène M Laville et al. PMID: 35544273 PMCID: PMC9869852 DOI: 10.1093/ndt/gfac045
Nephrol Dial Transplant. 2022 Feb 26;38(1):184-192. doi: 10.1093/ndt/gfac045. Online ahead of print.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35544273/

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