鼻プリープを伴う喘息患者におけるファビピプラントの有効性・安全性は?(DB-RCT; THUNDER試験; J Allergy Clin Immunol. 2022)

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鼻ポリープ(鼻茸)を有する喘息患者に対するプロスタグランジンD2受容体2(DP2)拮抗薬であるフェビピプラント使用は、鼻茸スコアを改善できるのか?

鼻ポリープ(鼻茸)を伴う慢性副鼻腔炎(Chronic rhinosinusitis with nasal polyps, CRSwNP)は、特に遅発性の喘息と関連しています。CRSwNPに対する現在の治療法にはステロイド点鼻薬などが用いられていますが、治療効果には限界があり、他の安全で効果的な治療法に対するアンメットニーズがあります。

プロスタグランジンD2受容体は、プロスタグランジン(PG)D2に結合して活性化するGタンパク質共役型受容体で、アレルギー性炎症における好酸球、好塩基球、Th2リンパ球の炎症性化学走性を媒介します。Hondaらはマウスの喘息モデル実験において、あらかじめPGD2を吸入することにより抗原感受性が高まり、少ない抗原量で刺激するとコントロール群と比較して、好酸球、リンパ球、マクロファージの浸潤が高まることなどが報告されています(PMID: 12925672)。このためPGD2受容体拮抗作用を有する薬剤によりアレルギー性炎症の症状緩和が期待できます。

そこで今回は、プロスタグランジンD2受容体2(DP2)拮抗薬であるフェビピプラントの有効性と安全性を検証したTHUNDER試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

98例の患者がフェビプラント150 mg(n=32)、フェビプラント450 mg(n=34)、またはプラセボ(n=32)にランダム割り付けられました。

投与16週目の鼻茸スコアの平均治療差
フェビプラント150mg
vs. プラセボ
0.05
(95%信頼区間 -0.59 〜 0.70
調整後P=0.979
フェビプラント450mg
vs. プラセボ
-0.25
(95%信頼区間 -0.88 〜 0.39
調整後P=0.656

投与16週目の鼻茸スコアのベースラインからの平均変化量(SE)は、フェビプラント150mgで0.20(0.224)、フェビプラント450mgで-0.10(0.216)、プラセボで0.14(0.233)でした。平均治療差は、フェビプラント150mgとプラセボの間で 0.05(95%信頼区間 -0.59 〜 0.70、調整後P=0.979)、フェビプラント450mgとプラセボの間で -0.25(95%信頼区間 -0.88 〜 0.39、調整後P=0.656)でした。副次評価項目についても、フェビプラントとプラセボの間に有意差は認められませんでした。

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鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎患者では、その後に喘息を合併する可能性が高いことから、鼻茸に対する治療が求められます。ステロイド点鼻で治療困難な場合は、手術も考慮されます。プロスタグランジンD2受容体はアレルギー性炎症に関与していることが報告されていることから、拮抗薬であるファビピプラントの開発が進行しています。

さて、本試験結果によれば、鼻プリープを伴う喘息患者におけるファビピプラントは、プラセボと比較して、ベースラインから投与16週目までの鼻茸スコアを改善しませんでした。

やや小規模な試験結果であることから、他の対象集団に対して新たに臨床試験が実施されるかもしれません。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 鼻プリープを伴う喘息患者におけるファビピプラントは、プラセボと比較して、ベースラインから投与16週目までの鼻茸スコアを改善しなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:鼻ポリープ(鼻茸)を伴う慢性副鼻腔炎(Chronic rhinosinusitis with nasal polyps, CRSwNP)は、特に遅発性の喘息と関連している。CRSwNPに対する現在の治療法には限界があり、他の安全で効果的な治療法に対するアンメットニーズがある。

目的:THUNDER試験の目的は、CRSwNPと喘息を併発した患者におけるプロスタグランジンD2受容体2(DP2)拮抗薬フェビピプラントの有効性と安全性を、鼻茸スコア(主要エンドポイント)、鼻づまりスコア、Sinoasal Outcome Test 22スコア、ペンシルバニア大学臭気識別試験スコアの改善度で測定することであった。

方法:THUNDER試験は、第3b相、ランダム化、多施設、二重盲検、プラセボ対照、並行群間、16週間の試験で、フェビピプラント150mgまたは450mgの1日1回投与とプラセボを比較したものである。全例にモメタゾンフランカルボン酸エステル200μgの鼻腔内投与が行われた。

結果:98例の患者がフェビプラント150 mg(n=32)、フェビプラント450 mg(n=34)、またはプラセボ(n=32)にランダム割り付けられた。投与16週目の鼻茸スコアのベースラインからの変化量の平均値(SE)は、フェビプラント150mgで0.20(0.224)、フェビプラント450mgで-0.10(0.216)、プラセボで0.14(0.233)であった。平均治療差は、フェビプラント150mgとプラセボの間で 0.05(95%信頼区間 -0.59 〜 0.70、調整後P=0.979)、フェビプラント450mgとプラセボの間で -0.25(95%信頼区間 -0.88 〜 0.39、調整後P=0.656)であった。副次評価項目については、フェビプラントとプラセボの間に有意差は認められなかった。

結論:THUNDER試験では、CRSwNPおよび喘息患者の治療におけるフェビピプラントの役割を示す証拠は得られなかった。今後の試験により、他のDP2拮抗薬、特にアスピリンにより増悪した呼吸器疾患患者における役割が確立されるかもしれない。

キーワード DP(2)受容体、鼻ポリープ症、喘息、慢性鼻副鼻腔炎、鼻ポリープを伴う慢性鼻副鼻腔炎、フェビピプラント、鼻ポリープ。

引用文献

Phase 3b randomized controlled trial of fevipiprant in patients with nasal polyposis with asthma (THUNDER)
Philippe Gevaert et al. PMID: 35094848 DOI: 10.1016/j.jaci.2021.12.759
J Allergy Clin Immunol. 2022 Jan 27;S0091-6749(21)02599-9. doi: 10.1016/j.jaci.2021.12.759. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35094848/

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