― reciprocity style(互恵性スタイル)が満足度とモチベーションに与える影響
― reciprocity style(互恵性スタイル)が満足度とモチベーションに与える影響
近年、職場の満足度やモチベーションを左右する要因として、リーダーシップやコミュニケーションだけでなく、「互恵性スタイル(reciprocity style)」という概念が注目されています。
互恵性スタイル(Reciprocity Style)とは、社会心理学において、人間が他者と関わる際にギブ・アンド・テイク(与える・受け取る)をどのように行うかという、行動の傾向やスタイルのことです。
本研究では、公務員を対象に、同僚や上司の互恵性スタイルが職場の満足度・動機づけに与える影響を実験的に検証しています。
試験結果から明らかになったことは?
◆研究の背景
互恵性スタイルとは、他者への支援行動の傾向を示す概念で、主に以下の3タイプに分類されます。
- Giver(ギバー):自分のコストより他者利益が大きい場合に積極的に支援する人
- Matcher(マッチャ―):受けた分だけ返す人
- Taker(テイカー):自分の利益が上回る場合のみ支援する人
これまでの研究では、こうした行動特性が職場の人間関係やパフォーマンスに影響する可能性が示唆されていましたが、同僚や上司の互恵性スタイルが周囲にどのような心理的影響を与えるかについては十分に検証されていませんでした。
◆研究デザイン
本研究は、4つのオンライン実験(合計16,461名の公務員)から構成されています。
参加者は仮想シナリオを読み、上司または同僚の互恵性スタイルが異なる場合に、
- 職務満足度
- モチベーション
がどのように変わると予測されるかを回答しました。
本研究は、観察研究ではなく実験研究(ランダム化された条件提示)であり、因果関係の推定を目的としています。
◆試験結果
| 研究 | 検討内容 | 主な結果 |
|---|---|---|
| Study 1 | 上司の互恵性スタイルと満足度 | Giver型上司が最も高い満足度を予測 |
| Study 2 | 上司 vs 同僚の互恵性スタイルと動機づけ | Giverの存在は動機づけを高めるが、同僚Giverの影響が上司Giverより大きい |
| Study 3 | チームへの新規加入者のタイプ | Giver加入は動機づけ向上、Taker加入は低下 |
| Study 4 | 総合的検証 | 互恵性スタイルはリーダーシップやコミュニケーションとは独立した影響因子 |
研究全体として、
- Giver型の存在が最も満足度・モチベーションを高める
- Taker型の存在は動機づけを低下させる
- 同僚の影響は上司以上に大きい可能性
が示されました。
臨床研究・組織研究としての解釈
本研究は医療研究ではありませんが、医療職のチーム医療にも応用可能な示唆を含んでいます。
特に重要なのは、
- 組織文化はリーダーだけで決まるわけではない
- 同僚の行動様式がチームの心理状態を強く左右する
- 協力行動は「個人の善意」ではなく組織設計の対象になり得る
という点です。
これは医療現場においても、
- 多職種連携
- チームコミュニケーション
- 若手教育
などに直接関係する知見と考えられます。
試験の限界
本研究にはいくつかの重要な制約があります。
- 仮想シナリオ研究である点
実際の職場行動ではなく、想定回答に基づく心理評価である。 - 自己報告の予測評価である点
実際の満足度やパフォーマンスを測定したわけではない。 - オンライン実験特有の外的妥当性の問題
現実の組織環境と同じ条件とは限らない。 - 公務員対象であり一般企業・医療職への直接適用は限定的
したがって、本研究は
- 実際の職場成果を示した研究ではなく
- 心理的期待値を示した研究
として解釈する必要があります。
実務への示唆
本研究は、組織マネジメントにおいて
- リーダーシップ
- コミュニケーション
だけでなく、
「互恵性スタイル」そのものを組織設計の要素として考える必要がある
ことを示唆しています。
つまり、
- Giver型行動を評価する制度設計
- 協力的行動を促す文化づくり
- Taker型行動の放置を避ける組織設計
が、人材マネジメント上の重要課題となる可能性があります。
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◆まとめ
本研究から得られる結論は次の通りです。
- Giver型の上司・同僚は満足度と動機づけを高める
- 同僚の影響は上司以上に強い可能性
- 互恵性スタイルは独立した組織要因となり得る
ただし、本研究は実験的心理研究であり、実際の職場成果を示したものではありません。
今後は、実際の組織パフォーマンスを評価する研究が必要とされています。
続報に期待。

✅まとめ✅ 公務員を対象とした実験的心理研究の結果、互恵性スタイルのうちGiver(ギバー)型は他者の満足度・動機づけを高めることが明らかとなった。
根拠となった試験の抄録
16,461人の公務員を対象とした4つのオンライン実験において、職場における互恵性スタイルが同僚の期待される職務満足度とモチベーションに及ぼす因果効果を検証した。その結果、個人的コストを上回る利益がある場合に他者を支援する「与える」という行為は、部下の期待満足度を最大化する上司の互恵性スタイルであることがわかった(研究1)。さらに、上司や同僚が「与える」という行為をしている場合、公務員のモチベーションは最も高くなることが予想される。興味深いことに、「与える」という行為をする同僚のモチベーションへのポジティブな影響は、「与える」という行為をする上司のそれよりも比較的大きいことがわかった(研究2)。さらに、現在のチームメンバーの期待モチベーションは、ギバーがチームに加わるという見通しによって高まるのに対し、「テイカー」(利益が個人的コストを上回る場合のみ支援する人)の加入は、テイカーが去る場合に比べて同僚のモチベーションを低下させる(研究3)。
引用文献
Give, take, or match? Styles of reciprocity, job satisfaction, and work motivation
Nicola Belle, Paola Cantarelli. PUBLIC ADMINISTRATION REVIEW 2023
First published: 29 September 2023
ー 続きを読む https://doi.org/10.1111/puar.13731Digital Object Identifier (DOI)

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