「楽観的であること」よりも「悲観しすぎないこと」が健康に関係する?

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― 性格特性と身体的健康の関連を再検討した大規模メタ解析(Am Psychol. 2021)

楽観的であろうとするのは根本的な解決とならない?

「前向きに考える人は健康になりやすい」
このような言説は、医療・心理学の分野だけでなく、一般向けの健康情報でも広く語られてきました。こうした背景には、特性的楽観主義(dispositional optimism)と身体的健康との関連を示す多くの研究があります。

今回取り上げる論文は、これまで一体として扱われてきた

  • 楽観性(optimism)
  • 悲観性(pessimism)

別々の構成概念として再解析し、

「健康とより強く関連するのは “楽観的であること” なのか、それとも “悲観的でないこと” なのか」

を検討した、大規模な再解析研究です。


試験結果から明らかになったことは?

◆研究の背景と問題意識

従来、特性的楽観主義は

  • 楽観性 ⇄ 悲観性
    という1つの連続体(双極構造)として扱われることが一般的でした。

しかし心理学的には、

  • 楽観性が高い
  • 悲観性が低い

ことは必ずしも同じ状態ではない可能性が指摘されています。
そこで本研究では、既存研究の個票データを再解析し、

  • 「楽観性そのもの」
  • 「悲観性の欠如」

のどちらが、身体的健康とより強く関連するかを検証しました。


◆研究デザインの概要

  • 研究タイプ:既報研究の個票データを用いた再解析(コンソーシアム型メタ解析)
  • 対象データ
    • 61の独立したサンプル
    • 総対象者数:221,133人
  • 評価指標
    • 特性的楽観性・悲観性
    • 身体的健康アウトカム(複数指標を統合した指標)
  • 解析方法
    • 楽観性と悲観性を統合した従来指標
    • 楽観性のみ
    • 悲観性(の欠如)のみ
      それぞれについてメタ解析を実施

◆試験結果

解析対象身体的健康との関連(相関係数 r)統計学的有意性
楽観性+悲観性(従来の総合指標)r = 0.026p < 0.001
悲観性の欠如r = 0.029p < 0.001
楽観性の存在r = 0.011p = 0.018

さらに、

  • 悲観性の効果量は、楽観性の効果量より有意に大きい
    • Z = −2.403
    • p < 0.02

と報告されています。


研究から示唆されるポイント

本研究の結果から、以下の点が示唆されます。

  • 身体的健康との関連は
    「楽観的であること」よりも「悲観的でないこと」の方が強い
  • 「前向きに考えよう」と促す介入よりも、
    過度な悲観・否定的思考を減らすことの方が、健康との関連性が高い可能性
  • 楽観性と悲観性は、独立した心理特性として評価すべきである可能性

これは、心理介入や行動変容支援を考えるうえで、重要な視点転換を示しています。


試験の限界

本研究は非常に大規模ですが、以下のような限界があります。

  1. 観察研究データの再解析である点
    • 因果関係(悲観性が健康を悪化させるのか、健康状態が悲観性を高めるのか)は判断できない
  2. 身体的健康アウトカムが統合指標である点
    • 疾患別(心血管疾患、がん、死亡など)の影響差は十分に評価されていない
  3. 心理特性の測定方法が研究ごとに異なる点
    • 楽観性・悲観性の尺度や質問項目にばらつきがある
  4. 臨床介入研究ではない点
    • 「悲観性を減らせば健康が改善する」と直接示した試験ではない
  5. 社会・文化的背景の影響
    • 多くの研究が欧米圏で行われており、文化差の影響は十分に検討されていない

試験結果からの考察

この研究は、次のような臨床的示唆を与えます。

  • 患者指導において「前向きに考えましょう」と一方的に促すよりも、不安・悲観的認知を丁寧に拾い上げ、軽減する支援が重要かもしれない
  • 服薬アドヒアランスや生活指導においても、悲観的認知(どうせ良くならない、無駄だ)への配慮が重要
  • 心理特性を単純な“ポジティブ・ネガティブ”で二分しない視点が必要

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◆まとめ

  • 身体的健康とより強く関連していたのは
    「楽観的であること」よりも「悲観的でないこと」
  • 楽観性と悲観性は、独立した心理特性として評価される可能性がある
  • 今後は、
    • 悲観性を標的とした介入
    • 疾患別アウトカムとの関連
    • 介入研究による因果検証
      が求められる

「前向きになれない自分」を責めるより、過度な悲観に陥らない支援こそが、健康に寄与するのかもしれません。

再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ メタ解析の結果、悲観主義の欠如は楽観主義の存在よりも、肯定的な健康アウトカムとの関連が強かった。

根拠となった試験の抄録

これまでの研究では、気質的楽観主義と身体的健康が関連づけられている。伝統的に、気質的楽観主義は、一方の端が楽観主義、もう一方の端が悲観主義によって支えられている二極構造として扱われている。しかし、楽観主義と悲観主義は正反対ではなく、むしろ2つの独立した、しかし関連する側面を反映している可能性がある。この記事では、気質的楽観主義に関する以前に発表された研究のデータの再分析を報告する。再分析は、楽観主義の存在と悲観主義の欠如のどちらが、身体的健康の良好さをより強く予測するかを評価するように設計された。気質的楽観主義と身体的健康を関連付ける研究について、関連文献が選別された。関連研究の著者は、以前に発表されたデータセットを楽観主義と悲観主義を区別可能な要素に分離して再分析することを目的としたコンソーシアムに参加するよう依頼された。最終的に、61の個別サンプル(N=221,133)からデータを受け取りました。楽観主義と悲観主義を総合指標に統合したデータのメタ分析(一般的な手順)では、身体的健康アウトカムの集計指標との有意な正の相関が明らかになった(r=0.026、p<0.001)。また、悲観主義の欠如(r=0.029、p<0.001)と楽観主義の存在(r=0.011、p<0.018)を個別にメタ分析した結果も同様であった。悲観主義の効果サイズは楽観主義の効果サイズよりも有意に大きかった(Z=-2.403、p<0.02)。したがって、悲観主義の欠如は楽観主義の存在よりも、肯定的な健康アウトカムとの関連が強かった。この知見の今後の研究と臨床介入への示唆について議論する。

引用文献

Optimism versus pessimism as predictors of physical health: A comprehensive reanalysis of dispositional optimism research
Michael F Scheier et al.
Am Psychol. 2021 Apr;76(3):529-548. doi: 10.1037/amp0000666. Epub 2020 Sep 24.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32969677/

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